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- 【映画レビュー】実話『風をつかまえた少年』
50代以上の女性におすすめの最新映画情報を、映画ジャーナリスト・立田敦子さんが解説。今回の一本は、アフリカから届いた心を打つ現代の奇跡の物語『風をつかまえた少年』。自家製の風力発電で未来を切り開いた14歳の少年の実話です。
『風をつかまえた少年』
大干ばつによる飢饉(ききん)で、経済的に追い詰められ、学費を払えなくなったウィリアム少年は、中学校を退学になる。が、向学心のある彼は、図書館に潜り込んで好きな科学や物理学の本を読みあさった。やがて、風力によって発電すれば、電気だけでなく、水も供給できるようになると知り、廃品や自転車の部品などを使ってお手製の風車を作る。14歳の少年が作った手作りの風力発電機は果たして……。
驚くべきことに、この物語は前世紀の話ではない。つい十数年ほど前のことである。舞台はアフリカの最貧国の一つといわれているマラウイ。映画の冒頭に描かれる、ウィリアムが中学に入ったばかりの2000年代初めですら、各家庭に電気が普及していなかった。
電気も水も十分になく、子どもたちも十分な教育を受けられない。ウィリアムは、そうした過酷な状況の中から生まれた、真の英雄だ。変人といわれながらも、トライする勇気や粘り強さには、胸をつかれる。恵まれ過ぎて鈍感になっている心ををゆさぶり、目を覚まさせられる思いだ。
知識や教育の重要性を世界にあらためて知らしめたウィリアムのストーリーは、書籍になり、世界23か国で翻訳されベストセラーとなった。この本を読んで感動した英国の俳優キウェテル・イジョフォーは、自ら脚本を執筆し、メガホンをとった。『それでも夜は明ける』でアカデミー賞を受賞した名優は、ルーツのあるアフリカから届いたこの物語の映画化に約10年を費やし、父親役で出演も果たした。
ちなみに、ウィリアムは、その後、多くの人の援助により復学し、米国の名門大学を卒業。その後も、マラウイの農業や教育などのさまざまなプロジェクトに携わっているという。まさに、現代の奇跡的な物語である。
監督・脚本/キウェテル・イジョフォー
原作/『風をつかまえた少年』ウィリアム・カムクワンバ、ブライアン・ミーラー著(文藝春秋刊)
出演/キウェテル・イジョフォー、マックスウェル・シンバ、アイサ・マイガ
製作/2018年、イギリス・マラウイ
配給/ロングライド
8月2日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館 他、全国公開中
今月のもう一本『ジョアン・ジルベルトを探して』
「イパネマの娘」などで知られるボサノヴァの神様、ジョアン・ジルベルト。彼の熱烈なファンであるドイツ人ジャーナリストは、リオ・デ・ジャネイロを訪れるが会えずじまいで帰国する。その顛末を描いた本を執筆するも、刊行前に自ら命を絶った。
この映画は、その情熱に共感した映画監督がその遺志を受け継ぎ、謎に包まれたジルベルトを探す旅を追う。先頃、88歳で亡くなった“神様”の素顔が浮き彫りになる。
監督・脚本/ジョルジュ・ガショ
出演/ミウシャ、ジョアン・ドナート、ホベルト・メネスカル、マルコス・ヴァーリ
製作/2018年、スイス・ドイツ・フランス
配給/ミモザフィルムズ
8月24日(土)より、新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMA他、全国順次公開
文・立田敦子
たつた・あつこ 映画ジャーナリスト。雑誌や新聞、webサイトなどで執筆やインタビューを行う他、カンヌ、ヴェネチアなど国際映画祭の取材活動もフィールドワークとしている。共著『おしゃれも人生も映画から』(中央公論新社刊)が発売中。
※この記事は2019年9月号「ハルメク」の連載「トキメクシネマ」の掲載内容を再編集しています。
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