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- 【映画レビュー】現代の生きづらさを描く「怪物」
女性におすすめの最新映画情報を映画ジャーナリスト・立田敦子さんが解説。今回は、子どもたちをめぐる、とある事件をきっかけにいじめ、モラルハラスメントといった今日的なトピックスをはらみながら、現代社会における“生きづらさ”を浮き彫りにした作品。
「怪物」
「万引き家族」(2018年)でカンヌ国際映画祭のパルムドール賞(最高賞)を受賞し、名実ともに日本を代表する監督となった是枝裕和(これえ・ひろかず)。フランスで撮った「真実」(19年)、韓国で製作した「ベイビー・ブローカー」(22年)を経て、5年ぶりに日本映画に戻ってきた。
これまで、ほとんどの作品の脚本を自ら執筆してきた是枝だが、本作では「世界の中心で、愛をさけぶ」(04年)や「花束みたいな恋をした」(21年)など大ヒット映画やドラマで知られる坂元裕二(さかもと・ゆうじ)が脚本を担当している点も興味深い。
物語の舞台は、湖のある地方都市。シングルマザーの早織は、ひとり息子の湊が学校でいじめにあっているのではないかと疑いを抱く。担任からのモラハラや暴力を知った早織は、翌日学校へ乗り込み、校長に直訴するが、学校側の反応は鈍い。怒り心頭の早織の訴えにより、事態はさらに悪化する……。
母親の気持ち、学校側の事情、子どもたちの実態。それぞれの言い分が主観的に描かれ、観客はそれを追体験する。
子どもたちをめぐる、とある事件をきっかけにいじめ、モラルハラスメントといった今日的なトピックスをはらみながら、現代社会における“生きづらさ”を浮き彫りにする。多感な11歳の少年たちの揺らぐ心に寄り添う是枝演出は健在で、大人が立ち入れない子ども世界の扉を今回も軽やかに開いてみせる。
一方で、早織役の安藤サクラ(あんどう・さくら)、担任役の永山瑛太(ながやま・えいた)、校長役の田中裕子(たなか・ゆうこ)といった、実力派俳優陣による演技の確かさで、大人たちの存在にも真実味が生まれた。
果たして、“真実”は、“正義”はどこにあるのか?物語の果てに、さらにこの問いかけは深みを増すだろう。ちなみに、音楽は坂本龍一(さかもと・りゅういち)の楽曲で構成されており、先日の逝去により遺作となった。
「怪物」
シングルマザーの早織(安藤サクラ)は、11歳になる息子の湊(黒川想矢)が学校で担任の保利(永山瑛太)にモラハラや暴力を受けているのではと疑念を抱き、校長(田中裕子)に直接訴えるが……。
監督/是枝裕和 脚本/坂元裕二
音楽/坂本龍一
出演/安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太、高畑充希、角田晃広、中村獅童、田中裕子他
製作/東宝、フジテレビジョン、ギャガ、AOI Pro.、分福
配給/東宝、ギャガ
2023年6月2日(金)より全国公開
https://gaga.ne.jp/kaibutsu-movie/
今月のもう1本「ウィ、シェフ!」
喧嘩して高級レストランを辞めたカティは、ひょんなことから移民の少年たちのための自立支援施設で住み込みでシェフとして働き始める。料理の価値も楽しみも理解しない彼らに、最初は不満だらけだったが、施設長の発案で彼らに調理を教え始める。
成人になれば不法滞在者として母国へ送り返されてしまう彼らは、未来への足がかりとして調理技術を習得していく。実在のシェフをモデルにしたハートフル・コメディ。
監督/ルイ=ジュリアン・プティ
出演/オドレイ・ラミー、フランソワ・クリュゼ他
製作/2022年、フランス
配給/アルバトロス・フィルム
2023年5月5日(金)より新宿ピカデリー他、全国公開
https://ouichef-movie.com/
■文・立田敦子
たつた・あつこ 映画ジャーナリスト。雑誌や新聞などで執筆する他、カンヌ、ヴェネチアなど国際映画祭の取材活動もフィールドワークとしている。エンターテインメント・メディア『ファンズボイス』(fansvoice.jp)を運営。
※この記事は2023年6月号「ハルメク」の連載「トキメクシネマ」の掲載内容を再編集しています。
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