- ハルメク365トップ
- カルチャー
- エンタメ
- 映画レビュー|「52ヘルツのクジラたち」
女性におすすめの最新映画情報を映画ジャーナリスト・立田敦子さんが解説。今回は、2021年に本屋大賞を受賞した作品が原作の『52ヘルツのクジラたち』。周波数の違う声に耳を澄ますことの大切さを訴える本作は、痛ましさの中にも光を感じられる作品だ。
「52ヘルツのクジラたち」
![「52ヘルツのクジラたち」](https://halmek.co.jp/media/uploads/d84fd792096cf3ce317380239d5aa2271709093070.8911.jpg)
クジラの鳴き声はそのほとんどが10〜39ヘルツだが、稀に52ヘルツという高い周波数で鳴くクジラがいるのだという。
他のクジラにはその鳴き声が聞こえないため「世界で最も孤独なクジラ」という異名を持つ。韓国のグループBTも「Whalien(ウェイリアン)52」という曲でもその孤独を歌っているので、知る人ぞ知るトリビアなのだろう。
2021年に本屋大賞を受賞した町田そのこ(まちだ・そのこ)のベストセラー小説を原作とする「52ヘルツのクジラたち」の登場人物たちは、タイトル通り、孤独なクジラに似て、平静を装いながらも、心の中で誰にも届かない魂の叫び声を上げている。
主人公の貴瑚(きこ/杉咲 花<すぎさき・はな>)は、母親と養父から虐待を受けて育った。酷い仕打ちに心の中で泣き叫びながらも、愛すべき家族だからという理由で、その呪縛から抜け出せないでいた。
そんな彼女を救ってくれたのは、親友の同僚である“アンさん”こと安吾(あんご/志尊 淳<しそん・じゅん>)だった。やがて自立し、恋人(宮沢氷魚<みやざわひお>)もできた貴瑚だが、ある日、幸せな日々を一変させるような出来事が起こる。
毒親による児童虐待、トランスジェンダーといった今日的なテーマを内包するこの物語は、“声を上げられない”あるいは、SOSを発していても“声が届かない”人たちの苦しみをすくい上げる。と同時に、周波数の違う声に耳を澄ますことの大切さを問いかけてくる。
安吾との不幸な出来事の後、東京を離れ貴瑚は大分へ移り住み、そこで親からの虐待により言葉を失った少年に出会うが、彼の声なき声を聞き逃すことはしなかった。
魂の叫び声は、きっと誰かに届く。痛ましさの中にひと筋の希望も見える作品だ。
52ヘルツのクジラたち
東京から、海辺の町にある亡き祖母の家に越してきた貴瑚(杉咲 花)は、ある日母親から「ムシ」と蔑まれ、虐待を受けている少年に出会ったことで、同じように虐待を受け、搾取されてきた自らの人生を振り返る。
監督/成島 出
原作/町田そのこ『52ヘルツのクジラたち』(中央公論新社刊)
出演/杉咲 花、志尊 淳、宮沢氷魚、小野花梨、桑名桃李、余 貴美子、倍賞美津子他
製作/2024年、日本 配給/ギャガ
20243月1日(金)より、TOHOシネマズ 日比谷他、全国公開
https://gaga.ne.jp/52hz-movie/
今月のもう1本「落下の解剖学」
![今月のもう1本「落下の解剖学」](https://halmek.co.jp/media/uploads/3a34124d9d707867976362a0acfa57851709093101.9854.jpg)
フランスの山間の街、転落か自殺か他殺か。夫の不審死の容疑者となったドイツ人作家の妻を巡る法廷劇。
サスペンス調の展開ながら、暴かれていく夫婦の不和、事故で視覚障害を負った息子との関係など、結婚や家族、女性の自立、セクシャリティといった今日的なテーマの核心に踏み込む見ごたえのある大人のドラマ。
カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞した他、米国の映画賞でも受賞多数。
落下の解剖学
監督/ジュスティーヌ・トリエ
出演/ザンドラ・ヒュラー、スワン・アルロー、ミロ・マシャド・グラネール、アントワーヌ・レナルツ他
製作/2023年、フランス 配給/ギャガ
2024年2月23日(金・祝)よりTOHOシネマズ シャンテ他、全国順次公開
https://gaga.ne.jp/anatomy/
文・立田敦子
たつた・あつこ 映画ジャーナリスト。雑誌や新聞などで執筆する他、カンヌ、ヴェネチアなど国際映画祭の取材活動もフィールドワークとしている。エンターテインメント・メディア『ファンズボイス』(fansvoice.jp)を運営。
※この記事は2024年3月号「ハルメク」に掲載された内容を再編集しています。
![](https://halmek.co.jp/media/account/d8e381e5cb0b9ed8eca7d614d86af39f.jpg)
雑誌「ハルメク」
女性誌売り上げNo.1の生活実用情報誌。前向きに明るく生きるために、本当に価値ある情報をお届けします。健康、料理、おしゃれ、お金、著名人のインタビューなど幅広い情報が満載。人気連載の「きくち体操」「きものリフォーム」も。年間定期購読誌で、自宅に直接配送します。雑誌ハルメクサイトはこちら
-
いきなり来る強い尿意…
尿モレを心配し過ぎて水分摂取を控えるのは絶対NG!生活習慣を変えれば、尿モレ対策は出来ます! -
圧倒的においしい「水」
国際味覚審査機構(ITI)主催のiTQi優秀味覚賞で、最高ランク「三ツ星」受賞!モンドセレクション金賞!「真においしい水」の条件とは一体? -
クーポン進呈!尿モレ対策
ハルメク読者の約8割が「不安」な尿モレ。その対策に、注目の「夜~朝専用」吸水パッドをご紹介。特別クーポンも進呈! -
突然の出費はこれで解決!
住宅ローンや子の教育費などお金がかかる50~60代。一方で親は高齢となり、その金銭面の援助も不安。解決策を探ります。 -
「疲れ」感じにくい体に!
気温も湿度も高い夏は疲れやすい季節。夏バテになる4つの原因と猛暑を乗り切る「体づくり」の方法を解説! -
何歳からでも若返り!
老けた印象に見える「顔たるみ」は簡単なケアの継続で解消できます!年齢のせいと諦めず、2週間チャレンジしてみましょう!