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- 青木奈緖さんのエッセー講座6期第6回参加者の作品
「家族」をテーマにしたエッセーの書き方を、エッセイストの青木奈緖さんに教わるハルメクの通信制エッセー講座。今回でいよいよ最終回となります。大切な思い出を形に残すべく取り組む参加者たちの作品から、青木さんが選んだ3つのエッセーをご紹介します。
青木奈緖さんが選んだ3つのエッセー
「青木奈緖さんのエッセー講座」参加者による家族のエッセーです。クリックすると、作品と青木さんの講評をお読みいただけます。
「希望に向かって」加地由佳さん
いよいよ私も、もうすぐ後期高齢者の仲間入りをします……
「生は寄にして」中込佳子さん
父は明治45年(大正元年)生まれで……
「背中の語ること」早川智子さん
夫の亡兄の孫息子が2023年5月14日に結婚式を……
エッセーに関する質問・お悩みに動画で回答
エッセイストの青木奈緒さんを講師に、半年間でエッセーの書き方を学ぶ通信制エッセー講座。
このエッセー講座のテーマは「家族」。全国からご参加いただいた30名の皆さんが毎月1本、家族との大切な思い出をエッセーの形に残すべく取り組んでいます。
参加者ひとり一人がエッセーを書くうちに直面する悩みや疑問は、実は、書く人にとって共通する学びの宝庫です。ハルメクでは、月1回青木さんが参加者の質問に回答する動画を制作。現在の参加者が生き生きと学べるように、また、どなたでもご覧になって学びを生かせるように公開していきます。
第6期6回目となる今回は、丸3年続いた本講座の最終回。青木さんから皆さんへ「エッセーを書くうえで大切なこと」、改めてお伝えしたいことを伺いました。
エッセーを書く上で、大事にしてほしい3つのこと
青木さん: この講座もいよいよ今回で最終回。長いようで、あっという間だったような気がします。
最後なので、私から皆さんへエッセーについて改めてお伝えしたいことを大きく分けて3つにまとめてみました。
1:エッセーは日記ではない。読者がいる、という意識を大切に。
たとえ誰も読んでくれることがなくとも、エッセーとして書き起こす場合には「読者」が想定されています。
「読者がいる」ということはどういうことか。それは「読んでくれる人の時間をもらう」ということです。
だから、責任をもって読者をその作品の最初から最後まで導いてください。それができないと、読者は読むのが嫌になってしまいます。読者を作品の世界に導く、これはエッセーを書くうえでの大きな柱です。
では、読者を作品の世界へ導くにはどうしたらいいか。これまで私が何度も繰り返しお伝えしてきましたが、著者は伝えようとしていることの詳細をしっかり書くということが大事です。
なぜ、そうする必要があるのか? 筆者は分かっていると思い込んでいることでも、読者は全く何も分からずに作品を読むことになります。その認識の落差はとても大きいものです。ですから、著者は読者の立場に立ち、きちんと伝わっているか配慮して書かなくてはならないのです。
2:読者の状況はさまざま。よく考え、配慮し、丁寧に磨き上げた作品を書きましょう。
読者にはいろんな方がいらっしゃいます。どこでどんな状況でその方が作品を読んでくれるか、筆者には分かりません。
読者の中にはたった今、伴侶を亡くされた方がいるかもしれないし、お子さんを亡くされた方もいるかもしれません。昨日婚約したばかりという方や、何をやってもうまくいかず、隣りの芝生が青く見えてしまう状況にいる方もいるでしょう。
どんな状況でどんな方が読むかは分からない。ですがそのことを頭に入れて書くということが「世の中に作品を出す」ということです。
突き詰めてしまえば、怖くて書けなくなってしまうでしょう。エッセーで書きたい内容が自慢話になっているのではないか、と気にされる方もこれまで多くいらっしゃいました。
著者ができることは「自分が何を伝えたいか」「どんな感情や思いをそのときに抱いたか」をよく考え、丁寧に磨きあげることです。
「誰も傷つけない文章」を書くことはとても難しいこと。ですが、よく考え、丁寧に磨き上げた作品は人を傷つけることは少ないのではないか、と私は考えます。
もしかしたら、意図せず書いた作品を読んだ誰かが傷ついてしまうこともあるかもしれません。それは防ぎようがないことではありますが、「自分の書いた文章で人を傷つけることはしない」と心のどこかに留めていましょう。
3:自分の文体のスタイルは書き続けることで見つけていきましょう。
「自分の文体やスタイルを見つけたい」と思う方は少なくありません。けれど、過度に模索することはありません。書いている間に、だんだんと自分のスタイルはできていくと思うからです。
書いていくなかで、文体やスタイルは変わっていくものです。
私自身、昔と今で書いている文章が違ってきていることに気付くことがあります。
皆さんは書きながら、いろいろと試していることでしょう。けれど、あまり技巧には走らずに、まずは書くことを身近に感じて、とにかく書き続けてみてください。
気をつけるべきは、文章は分かりやすく書くこと。そして、その中に緊張感やアクセントを持たせてみるなど、流れを変えるような工夫をしてみると良いでしょう。
この講座でも、お名前を拝見しなくても作品を読んでどなたの作品か分かることがあります。同じ内容、同じ成り行きのエッセーだったとしてもAさんにはAさんの、BさんにはBさんの色が出るものです。それは隠そうとしても隠せないものです。
最後に、私はこの講座を始めるまで料理で例えるところの「さじ加減」で文章を書いてきました。「こんな感じかな、これくらいかな?」と言った具合に加減をみたり、自分自身との問答を繰り返してみたり。あくまで感覚的な作業でした。
けれど、この講座を担当させていただくようになり、皆さんの作品を拝見することで「書くこと」を感覚的なものから論理的なものとして考えるようになりました。どうしてこう書かなければならないのか、どうして私はこう書きたいと思うのか、など皆さんの作品に触れ、改めて向き合う機会をいただいたのだと思います。この講座を共に歩んでくださった皆さんに、御礼を申し上げます。
これからも「書くこと」を身近に、そして、ご自身のペースで書き続けていただけたらと思います。
3年間、本当にありがとうございました。
動画では、さらに詳しいお話や、青木さんの朗読もお楽しみいただけます。本講座のさいごを締めくくる朗読作品は、明るく穏やかな日常と展望をつづった「希望に向かって」(加地由佳さん作)です。
エッセイスト・青木奈緖さんのプロフィール
1963(昭和38)年、東京生まれ。文豪・幸田露伴を曽祖父に、作家・幸田文を祖母に、随筆家・青木玉を母に持ち、自身もエッセイストとして活躍。著書に『幸田家のきもの』(講談社刊)、『幸田家のことば』(小学館刊)他。
ハルメクの通信制エッセー講座とは?
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回家族の思い出をエッセーに書き、講師で随筆家の青木奈緖さんから添削やアドバイスを受けます。講座の受講期間は半年間(参加者の募集は終了しています)。
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