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- エッセー作品「背中の語ること」早川智子さん
「家族」をテーマにしたエッセーの書き方を、エッセイストの青木奈緖さんに教わるハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から青木さんが選んだエッセーをご紹介します。早川智子さんの作品「背中の語ること」と青木さんの講評です。
背中の語ること
夫の亡兄の孫息子が2023年5月14日に結婚式をあげる事になって、私達大叔父夫婦も出席させてもらった。若者中心の人前結婚式で楽しく明るい式だった。
当日、当然居る筈の新郎の父、私達にとっての甥の姿がなかった。
式の最後の挨拶も甥の嫁が立派に務めていた。
新郎から渡された引出物の中に御礼の言葉が書かれたメモが入っていた。
私のメモには「父には出席して貰えませんでしたが…」とあった。
甥夫婦が別居しているとは聞いていたが、近くに住む夫の2人の姉達に聞いても確実な理由は分からない。
事業を始めた甥が女性問題を起こした時、甥の嫁が姑(私達にとっての兄嫁)に泣きながら相談していた事は聞いていたが、返ってきた返事は「男なら、事業が発展してきたら浮気の1つや2つ」だったという話も漏れ伝わって来た。
私達夫婦も夫の姉達も甥の嫁の味方である。
帰宅後、甥が結婚式に出席しなかった事は有り得ない事だと私の娘は言った。
式から2週間後の日曜日の朝、突然の兄嫁からの電話で、甥の死を告げられた。
仕事が終わった後、資材置場で亡くなっているのを翌日発見され、警察の調べで、心筋梗塞で亡くなったと言われたらしい。
何日か後に、夫は葬儀に出席するため、再び生家へ出かけて行った。
2ヶ月が過ぎて、四十九日忌の法要の知らせが届いた。
79歳の夫は体調が悪く、出席ができないというので、納骨される最後の別れには私と息子と娘が出席した。
寺は歩いて数分のところにある。私はゆっくりと歩いていた。
山門を入って、ふと前方を見る と、1人でぽつんと日傘を差して、ちょっと腰を曲げて歩く人が兄嫁だと分かった。
人前では気丈にしていたが、後姿は息子を失った深い悲しみを語っていた。兄嫁の胸中を思うと、掛ける言葉もなかった。
義兄弟として長い付き合いの私達は皆、後期高齢者となっている。
寿命の尽きる日迄、1日1日静かに大切に過ごしていきたいと願っている。
青木奈緖さんからひとこと
「家族のエッセー」では、家族構成や家族間の呼称をどのようにわかりやすく読者に伝えるかが常に課題となってきました。私はいつも「祖母の息子が私の父」という例を挙げてご説明してきましたが、誰から見たときの呼称なのか、視点が変われば呼称も変化するので、「何も知らずに読み始める読者」は戸惑うことが多いのです。
今作はとりわけ家族構成が難しい好例です。著者はこのテーマに3回取り組んで、わずか800字にこれだけわかりやすくまとめてくださいました。この内容は私にも書ける自信はありません。とてもプライベートな内容ですが、どこの家にも人生ドラマはつきものですし、冠婚葬祭を経て続いていくのが家族なのだと改めて思います。
ハルメクの通信制エッセー講座とは?
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回家族の思い出をエッセーに書き、講師で随筆家の青木奈緖さんから添削やアドバイスを受けます。講座の受講期間は半年間(参加者の募集は終了しています)。
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