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公開日:2022年12月06日
通信制 青木奈緖さんのエッセー講座第5期第1回
「家族」をテーマにしたエッセーの書き方を、エッセイストの青木奈緖さんに教わるハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から青木さんが選んだエッセーをご紹介します。ふじいみつこさんの作品「ちひろ」と青木さんの講評です。
保育園に迎えに行ったら、ちひろは急に無口になって私の後をついてきた。
軽く手をつないでいるけれど、心許ないつなぎ方だ。
他児のお迎えのママや祖母が、盛んに子どもたちに相づちを打っている。
「ふーん、そうなの」「へぇーよかったわね」
きれいな標準語だ。
私となるとそうはいかない。
「へぇーほんまかぁ」「よかったなぁ」と、こうなる。
一緒に並んで歩いていた人たちが駐車場に消えた途端、私もボソッと話してみる。
「猫じゃらしがいっぱいやね」
「前にはもっといっぱいあったんだよ、誰かがきれいにしてくれたんだよ」
ちひろは少し元気になって答える。
真っ直ぐに行かずに、ちひろは路地を曲がった。
「こっちだと車が来ないんだよ」
「いゃぁええ道やなぁ」
安心して手を放し、ちひろはどんどん前に進んでいく。
ちひろのママは、お産で入院中だ。
検診に行ったらそのまま入院、予定より早い出産になると息子からの電話で私は慌てて新幹線に飛び乗った。
家の中もちひろの心も、赤ん坊の受け入れ準備ができていない。
そして、祖母の私にもちひろはまだ心を開かない。
2歳の頃、保育園にお迎えに行ったら、ちひろは喜んで走って飛びついてきた。
あの時ちひろの目には私しか映っていなかった。
今は違う。ちひろの世界は広がった。
周りの友達や大人の顔色を窺い、言葉の意味を確かめる。
祖母のなんとなく違うイントネーションに気付いている。
標準語ならテレビでいくらでも聞いている。息子だって嫁さんと話す時は標準語で私と話す時は関西弁だ。
私もそれくらいはできるつもりだ。
短い散歩を終えて家につくとちひろは真っ先に手を洗いに行き、おもちゃの置いてある和室に入った。
そこに敷かれた赤ん坊の布団を見て、はっとして立ち止まった。
「ちひろくんが赤ちゃんの時のお布団だよ、ちひろくんには小さいから赤ちゃんにあげようね」
なるだけ標準語らしく話した。
しばらく首をかしげていたが、私に見えないように赤ん坊の布団にころがって「やっぱり小さいや」と起き上がった。
そして、お気に入りのポケモンのタオルを持ってきて、赤ん坊の布団の上にそっと掛けた。
息子が帰ってくるまで、2人でテレビを見た。
ハンターから逃げる追いかけっこのようなゲーム、ちひろのお気に入りだ。
「わぁーそれー逃げろ。捕まるでー」私はいつの間にか夢中になって関西弁を連発した。
ちひろも部屋の中を走り回って、2人で騒いだ。
よく聞くと「ほんまやほんまや」「どうするねん」ちひろが関西弁を話していた。
ちひろの視野はこれから、もっと広がっていくだろう。
その度に葛藤したり、折り合いをつけたり、苦しんだり喜んだりするだろう。
世界が広がるたびに、その小さな心に沢山の思いを受け入れなくてはいけない。
私の関西弁を受け入れてくれたように。
大人になった時、祖母の関西弁を懐かしく温かく思い出してくれるだろうか。
その日の遅くにちひろに弟が生まれた。
お祖母様の視点からお孫さんを描いた、ほのぼのとした作品です。
孫自慢に陥ることなく、また「かわいい」と直接書かずに、小さい男の子のあどけなさがいきいきと描写されています。次の赤ちゃんを迎える期待、緊張、晴れやかな雰囲気も伝わってきます。
「ちひろ」というお名前は男の子にも女の子にも使われるので、例えば冒頭の文と次の文の間に「*歳の男の子である」など入れると読者に親切でしょう。
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回家族の思い出をエッセーに書き、講師で随筆家の青木奈緖さんから添削やアドバイスを受けます。書いていて疑問に思ったことやお便りを作品と一緒に送り、選ばれると、青木さんが動画で回答してくれるという仕掛け。講座の受講期間は半年間。
現在第5期の講座を開講しています(募集は終了しました)。次回第6期の参加者の募集は、2022年1月を予定しています。詳しくは雑誌「ハルメク」2023年2月号の誌上とハルメク365WEBサイトのページをご覧ください。
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