通信制 山本ふみこさんのエッセー講座第4期第4回

エッセー作品「鎌倉の旅 ①鶴岡八幡宮」竹盛妙子さん

公開日:2022.08.02

更新日:2022.08.02

随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から山本さんが選んだエッセーをご紹介します。 今月の作品のテーマは「憂鬱」です。竹盛妙子さんの作品「鎌倉の旅 ①鶴岡八幡宮」と山本さんの講評です。

「鎌倉の旅 ①鶴岡八幡宮」
エッセー作品「鎌倉の旅 ①鶴岡八幡宮」竹盛妙子さん

鎌倉の旅 ①鶴ケ岡八幡宮

6月は紫陽花の季節、鎌倉はその花が良く似合う街です。
その中でも成就院の長い石段の参道を埋めつくすあじさいの道は、ふり返ると背景に海が見えてきます。
岩煙草(いわたばこ)も湿った岩にしがみつくように咲き、また苔に覆われた木々の下には著莪(しゃが、胡蝶花)の白い花の群落があちこちに見られ、私の好きな風景です。

この30年、鎌倉には季節を変えて、11回旅をしました。
鎌倉幕府をうち建てた源頼朝に私は興味があるからです。
一般に冷徹な人間として嫌われることが多いのですが、政治家としては、力があったと思います。

鎌倉を訪れたら、まず八幡宮に参拝します。
頼朝はこの八幡宮を京都の内裏になぞらえ、京都ではなく、鎌倉が政治の中心になったことを全国にアピールしました。
鎌倉駅から徒歩10分、若宮大路を進むと、大路の参道を一段高くした桜並木が続きます。
桜の頃は見事なトンネルとなり、桜吹雪に出合った時は思わず声をあげました。
「段葛(だんかずら)」は、妻政子の安産を祈って頼朝が造築したものとのこと。

赤い鳥居をくぐります。
広大な境内は85000㎡あり、舞殿、国宝館、宝物館などが見えてきます。
太鼓橋を渡ると、右側に源氏池、左に平家池があります。
7~8月には池一面に紅白の蓮が咲き、早朝より大勢のカメラマンが池の周りをとりかこみ、競いあっています。
桜の季節は、散った花びらで池一面がピンクに染まるのです。なんと美しいこと。
北条政子は、作庭の時源氏池には島を三つ(三=産)配し、源氏の隆盛を願い、一方平家池には島を四つ(四=死)にして平家の滅亡を祈願したということでした。

「舞殿」にまつわる話があります。
白拍子の静(しずか)は捕らえられて、頼朝と政子の座す舞殿で、舞を奉納する様命じられます。
「吉野山、峰の白雪ふみ分けて、入りにし人の跡ぞ恋しき」
と義経を慕いながら舞う静に、頼朝は激怒しましたが、政子はその心情を察し取りなしたといいます。
この舞殿のそばを通る時、そのありさまが目に浮かぶようです。

まだいっぱい書きたいことがありますが、ここで。

 

山本ふみこさんからひとこと

所々の、美しい表現に心動かされながら読みました。「岩煙草(いわたばこ)も湿った岩にしがみつくように咲き……」このくだりなど、うっとりします。

「どうしても鎌倉への旅のはなしが書きたかった」と、竹盛妙子さんはメッセージをくださいました。この感覚、とてもいいですね。

皆さんも、書きたいことがありましたら、課題をはなれて、どうぞそれをお書きくださいまし。 

 

通信制 山本ふみこさんのエッセー講座とは

全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回出されるテーマについて書き、講師で随筆家の山本ふみこさんから添削やアドバイスを受けられます。講座の受講期間は半年間。

2022年8月からは第5期の講座を開講します(募集は終了しました)。次回第6期の参加者の募集は、2022年12月を予定しています。詳しくは雑誌「ハルメク」2023年1月号の誌上とハルメク365WEBサイトのページをご覧ください。


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ハルメク旅と講座

ハルメクならではのオリジナルイベントを企画・運営している部署、文化事業課。スタッフが日々面白いイベント作りのために奔走しています。人気イベント「あなたと歌うコンサート」や「たてもの散歩」など、年に約200本のイベントを開催。皆さんと会ってお話できるのを楽しみにしています♪

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