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- 「100字エッセー」第7期参加者のみなさん
随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催中のエッセー講座。今回参加者は100文字以内のエッセーを5つ書く「5本ノック」に取り組みました。1人1作ずつ、ご紹介します。100字エッセーの文章世界を山本さんが語る講評も、ぜひご覧ください。
100字エッセー
※敬称略、50音順です。
浅井京子
野路でおしゃべりしながら摘み取ったふきのとうを、天ぷらとふき味噌煮に。
いただいたふきは、たわしで筋を取り除き、きゃらぶきにした。
ふきの匂いが苦手という人がいるが、私には春を感じる幸せな香りである。
雨宮和代
深呼吸して見上げると「お月様は今どこにいるかな?」
夜空から母の声が降ってきた。
まあるくて、見つめるだにまぶしいその姿。
四十九日と節分が重なるなんて、やっぱり切り替えの良い人だ。
石川久子
中学3年生の孫、遠くの水産高校へ早くからあこがれていた。
受験し合格。何を学ぼうとしているのか分からないけど、全寮制の高校に行く。
行ってらっしゃい、だめだったら帰ってきてもいいんだよ、口には出さず心で思う。
磯野昌子
松山千春の「長い夜」を車で聴く。ボリュームをあげ、スピードが出る。
信号で止まると白バイが横に。
「27キロオーバーです」免許証を見せると白バイの兄さんがひと言。
「高齢でびっくりしました」と。
臼井嘉子
夫が仕事に行く日に作るお握りを2個。
焼き鮭、たらこ、昆布、梅干し、山椒ちりめん、おかかなど日替わり。
1個のおにぎりに2種類の具を入れることもある。
炊き立てご飯を三角に握って、半切りの海苔でつつむ。
海瀬和美
加工用のいちごが手に入る。
土日のオープン時刻にいかないと、買うことができないことを昨年知った。
奮闘の末2箱ゲット。
「とちおとめ」と「やよいひめ」別々の鍋でジャムを作る。
大木祐子
「初ものだね」スイカを見て旦那が言った。
幼い頃夏といえばスイカが楽しみの一つだった。
ある日母が、いつもの3倍くらいに切ったスイカを出してくれた。
「ワー」と私達。
スイカくらいで……と、微笑む母。
大竹昌子
昨年自分も前期高齢者の仲間入りを果たす。
それでは、とばかりにシルバーやシニア割引を遠慮なく使う。
これまで与えられた務めを果たしてきたが、「老後は楽しく」をモットーにカルチャーも観劇も買物も友達ランチも解禁。
甲斐てい子
夫のパジャマにアイロンをかけた、ていねいに。
大事にされている、と感じてほしくてね。
イギリス映画「日の名残り」を見た。執事が新聞にアイロンをかけていた。
ていねいに、しかし気負いなく。ひたむきなアイロンかけ。
木下富美子
徒(かち)で行く勝鬨橋(かちどきばし)の小春かな:子どものころ「魔法のじゅうたん」という番組があった。
黒柳徹子がアブラカタブラというと子供達をのせた絨毯が勝鬨橋をはね上げ空を飛び学校の屋上まで飛んでいくという趣向。
乗りたかった。
車屋王和
神保町の王泉堂で書道用の小筆を数本と紙を買う。
帰りには、千鳥ヶ淵のすぐそばにある小さなカフェ「ルミエール」に立ち寄り、スコーンセットをたべる。
落ち着いた雰囲気。無口なマスターの淹れる珈琲は格別美味しい。
小坂美千代
ぼく遼介。満2歳。
朝起きたらママがいなくて、何日かしたら赤ちゃんを抱っこして帰って来た。
赤ちゃんは弟というらしい。
弟はたくさんママに抱っこされている。弟はいつまでうちにいるんだろう。
ぼくは壊れそうだ。
佐々木はとみ
現代用語辞典を片手に新聞とにらめっこしていた父。
読者投稿をちょくちょく出していた。載ると図書券が送ってくる。
そんな父に最近似てきた。川柳、標語など投稿している。
ハルメク6月号の読者投稿に載りました!
島戸菅子
「ひとり老後」の指南!と題し、希望に満ちた内容の書物が、多く出ている。
魅力的でおもしろい内容だ。
然し、先ずは健康でなければ。
心身の健康の上に老後の充実は実現するのだと思うと、若い時代の心掛けこそ、大切である。
清水澤雅子
独り暮しを始めた2年前、夜になると一飛びに朝が来ないかと思った。
近頃はユーチューブにハマっている。
テレビに接続して、大きな画面で見て楽しい。
体操、料理、園芸等、夜の時間を忘れる。
世の老人に伝えたい。
説田文子
静かな我が家に息子たちが帰省してきた。
何をするでもなく寝転んで携帯を見ている。
人がいることで、高揚する自分を「かわいいなあ」と思う。
手間が増えるだけなのに。気の利いた会話があるわけでもないのに。
高木佳世子
桜が散りおわると、若葉が次々とめぶく。
葉っぱたちは小さく、枝ぶりもはっきりと見え、樹々の向うの景色もすけて見える。
ふと思う。「これは五月の風の通り道」。
暮らしの中の何かを刈りこんで、わたしも風を通そう……。
高山美年子
玉ねぎの収穫をする。こんなにも達成感があるなんて。
今夜はたっぷりいただきます。
山盛りのオニオンスライスは、辛みが無くて食べやすい。
さっと焼いた油揚げにもトッピング。
今日の私、血液サラサラだ。
竹内さやか
爺ちゃんの朝食。
97歳。入れ歯なし。
ハチミツたっぷりトースト、コーヒー大盛1杯と砂糖2杯を入れた牛乳、ぶ厚く切ったチーズ2切れ、ハム2枚、トマト1/2個、ブルガリアヨーグルト2日で1箱。
毎日毎日同じもの
夛田せい子
私の一番好きな和菓子は桜餅。
こだわりは塩漬けの桜の葉。これがビニールならいらない。
香りの高い桜の葉ごとがぶり。
口の中に広がる塩味とあんの甘味。
桜が終るといつのまにか姿を消すいさぎよさもよい。
中澤紀子
ベートーベンの「運命」も指揮者によって表現の仕方が違うと聞く。
「そうだ。箏の演奏も、指導も私自身の解釈でゆけばいいのだ」はたと気が付いた。
いや今この年代になって初めて主張できるような気がする。
中村優子
傘を畳むと鈍色の雲の隙間から幾筋もの光が地を照らしていた。
アスファルトからゆらゆらと湯気が昇り、全身の毛穴から汗が噴き出す。
来たか夏!背中に青空と入道雲。
飛行機がスタートラインを引いた。よーい、ドン!
八田りえ子
外耳炎になった。耳鼻科の先生がこう説明。
「耳垢は取らなくていい。耳そうじをしてよい人と向かない人がいる。
たとえばパチンコをして身をくずす人もいるし、大丈夫な人もいる」と。
妙に納得し、ちょっと笑う。
花村むつみ
店先に並んでいた鹿児島産のタケノコを家に連れ帰り、泥を落としたら、黄金色に輝きました。
小さなかぐや姫に出会ったような気持がして、大切に皮を開いていきます。
今日は、美味しいタケノコご飯を炊きましょう。
藤田圭子
母と兄と三人で囲む夕食の時、突然電話が鳴った。
広島に住む叔父からかかったものらしい。
食事を続けながらも片耳はダンボ状態。
突然母の声が詰まった。
祖父が亡くなった知らせだった。
私12歳の冬。
山川里美
献立がどうしても浮かばない。私の背後には「作りたくない」オーラが。
ふと手にした雑誌の料理ページ、新しいレシピに目が止まる。
手順を見ながらの調理に、奮い立つ。
そしていつもの夕食へ。味は如何なものか。
山田にら
メジャーリーグで大活躍中のオオタニサンは運を呼び込むためにゴミを拾うことを日常としている。
オオタニサンにあやかろうと電車内でゴミを拾っていたら、持っていたカバンを置き忘れた。
神さまはにわかには冷たい。
山本ふみこさんからひとこと
新鮮な「100字エッセー」が並んでいます。どうぞお楽しみください。この取り組みの可能性は、それぞれ噛み締めていただくとして。私からも、100字をお贈りします。
感情を刈り込み刈り込み100字エッセーを書いていると、文字のあいだを、ちろんちろんと何かが踊っている。小さな芽のようなもの。
すぐと隠れてしまう のだが、それこそは、ほしくてたまらなかったユーモアの芽? (100字)
山本ふみこさんのエッセー講座(教室コース)とは
筆家の山本ふみこさんにエッセーの書き方を教わる人気の講座です。
参加者は半年間、月に一度、東京の会場に集い、仲間と共に学びます。月1本のペースで書いたエッセーに、山本さんから添削やアドバイスを受けられます。
2022年8月からは第8期の講座を開講します(募集は終了しました)。次回第9期の参加者の募集は、2022年12月を予定しています。詳しくは雑誌「ハルメク」2023年1月号の誌上とハルメク旅と講座サイトをご覧ください。
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