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- エッセー作品「古い本」甲斐てい子さん
随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクのエッセー講座。教室コース 第7期の参加者の作品から、山本さんが選んだエッセーをご紹介します。第2回の作品のテーマは「修理」です。甲斐てい子さんの作品「古い本」と山本さんの講評です。
古い本
忘れられない古い本がある。
昭和30年頃にはうちにあったようだ。表紙はザラつく手ざわりのエンジ色の布製で、背表紙が同じエンジ色のコール天で補修されていた。本の左下は、角が焼け焦げて丸くなっていた。記憶の始めからこの本はこの姿だった。
文字ばかりの本で、その中の「ははこぐさ」というはなしが大好きだった。
母と娘が湖をはさんで離れ離れになり、互いに恋しがって、落とした涙が草になった、という悲しいはなしで、植物の「ハハコグサ」の由来とされる、という説もある。
2、3才の頃読んでもらっていたのをいつか自分で読むようになっていた。
当時の仙台のわが家の暖房はこたつと火鉢が主で、部屋の中でも冬は手が冷たかった。
本をみるときにいいだろう、と、父が指先が出るように作られた、こどもの読書用の手袋を買ってきた。
「お、か、あ、さ……」
と、1文字1文字、手袋の先からのぞく冷たいひとさし指でたどりながら読んでいても「ちゃんと意味がわかるんだね、涙をポタポタ落としていた」 そう母からきいたのはずいぶん大きくなってからだ。
おとなになるまで、この本は古い本棚にあったのでコール天の背はよく憶えているが、本のタイトルも他のはなしも全く憶えていない。
が、焼け焦げていても、背にコール天を貼り付けて大事にしてくれたのだ。
読むたびに泣いても、泣くままにしてくれていた。
小さなピンクの指先のあいた手袋を買った父がほほえましい。
「ははこぐさ」に涙した3才のわたしはその20倍の余生きて今に至るが、変わらず涙もろく、指先は今も冷たい。
山本ふみこさんからひとこと
物語のようなエッセーが生まれました。
「お、か、あ、さ……」
と、1文字1文字、手袋の先からのぞく冷たいひとさし指でたどりながら読んでいても「ちゃんと意味がわかるんだね、涙をポタポタ落としていた」 そう母からきいたのはずいぶん大きくなってからだ。
「ははこぐさ」というお話について調べてみましたが、同じようにこのお話の情報を求めている人のあることがわかっただけで、それでおしまい。
みなさんの中で、知っているという方がありましたら、教えていただきたいと思います。
山本ふみこさんのエッセー講座(教室コース)とは
随筆家の山本ふみこさんにエッセーの書き方を教わる人気の講座です。
参加者は半年間、月に一度、東京の会場に集い、仲間と共に学びます。月1本のペースで書いたエッセーに、山本さんから添削やアドバイスを受けられます。
次回の参加者の募集は、2022年6月に雑誌「ハルメク」の誌上とハルメク旅と講座サイトで開始します。募集開始のご案内は、ハルメクWEBメールマガジンでもお送りします。ご登録は、こちらから
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