今月のおすすめエッセー「庭づくり」富山芳子さん
2024.12.312022年03月29日
山本ふみこさんのエッセー講座 第7期第1回
エッセー作品「モーニング讃歌」小坂美千代さん
随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクのエッセー講座。2月に始まった教室コース第7期の参加者の作品から、山本さんが選んだエッセーをご紹介します。テーマは「日曜日」。小坂美千代さんの作品「モーニング讃歌」と山本さんの講評です。
モーニング讃歌
数年前、自宅から車で10分ほどの住宅街に「コメダ珈琲」が開店した。
名古屋で発祥したコメダは知っていたし、都内で幾度か入った事があった。
コメダは、開店から11時までに入店するとモーニングがあり、飲み物を注文するとトーストやゆで卵がサービスされるのである。
厚切りのパンが籠にのり、ゆで卵が添えられているメニューを見て、どうしてか一度このモーニングを食べてみたいと思っていた。
しかし、このコメダにわざわざモーニングを食べに行く機会がなかった。
ランチならともかく、トーストとゆで卵ごときでは、友だちは誘えない。かといって、家族の朝食を作って送り出し、自分は家事を終えて車でモーニングを食べに行くのは……、いかがなものか?
ある日曜日、ふと夫に、「コメダ珈琲にモーニングを食べに行かない?」と誘ってみた。
夫にしてみれば、コーヒーにトーストと目玉焼きくらいは家にいても食べられるのだ。わざわざ休日に着がえて車で喫茶店に行くのは面倒であったらしいが、しぶしぶ誘いにのってくれた。
9時頃であったが、駐車場には車がたくさんだった。なんとか案内され、店の入り口でお気に入りの雑誌を持って席についた。
メニューを開くと、ドリンクやサンドイッチ、スイーツなどに心奪われそうになったが、思い直してモーニングを注文。
雑誌を読みながら念願のモーニングを楽しんだ。
店内には同じように、夫婦やひとりでゆったりと休日の朝を過ごす人達ばかりだった。こんな休日もあったのだ。
ずっと昔、名古屋に旅したとき松坂屋デパートにある「あつた蓬菜軒」という、うなぎ店で素敵なシニア女性がひとりで、ひつまぶしを食べていた。
その姿がとてもかっこよかったのを、ふっと思い出した。
山本ふみこさんからひとこと
身近な、誰にも手の届く事柄をこのようにとらえる感覚は、書き手の魅力に他なりません。
「メニューを開くと、ドリンクやサンドイッチ、スイーツなどに心奪われそうになったが、思い直してモーニングを注文」
これは、だんな様を誘ってとうとう「コメダ珈琲」に出掛けたときの、情景。なんていいんでしょう。
山本ふみこさんのエッセー講座(教室コース)とは
随筆家の山本ふみこさんにエッセーの書き方を教わる人気の講座です。
参加者は半年間、月に一度、東京の会場に集い、仲間と共に学びます。月1本のペースで書いたエッセーに、山本さんから添削やアドバイスを受けられます。
次回の参加者の募集は、2022年6月に雑誌「ハルメク」の誌上とハルメク旅と講座サイトで開始します。募集開始のご案内は、ハルメクWEBメールマガジンでもお送りします。ご登録は、こちらから