「さつまいもの天ぷら」横山利子さん
2024.09.302021年12月28日
通信制 山本ふみこさんのエッセー講座第3期第3回
エッセー作品「言葉でつたえる」きたのふみさん
随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から山本さんが選んだエッセーをご紹介します。今月の作品のテーマは「めったにない」です。きたのふみさんの作品「言葉でつたえる」と山本さんの講評です。
言葉でつたえる
次の場所へとうつる日がせまってきた。結婚して30年、6回目にして終の棲家となる(たぶん。そしてねがわくば)。
以前は引越しはたいへんながらもどちらかというと、ワクワクのほうがまさっていた。環境がかわるのがたのしみなのである。
ところが、いまの住まいにきたとき山積みのダンボールをまえにして、これらをまたすべて納めなくてはならないのだと思うと、少なからずうんざりとしたのだった。
そして今回。さいごの引越しということで、これまでの学びをふまえて準備をしているところだ。
箱づめは、どんどんすすめるのがイイとはかぎらない。そうそうに済ませたモノがとつぜん必要となったりするからだ。一度おわらせたものをさがしたり取り出す作業は、じみなダメージをあたえるものだ。
したがって、まずは新居へはもっていかない不要品のあらいだしに全力をつくしている。その後、いよいよ引越し当日が目前となってから、ギリギリまでつかうもの以外を箱にいれていく(テープどめはしないでおく)。
こんなふうに荷づくりのことばかりに気をまわしていられるのは、その他の雑事を夫がひきうけてくれているからだ。
わたしがやったならば、めんどうくさくてわけがわからずフキゲンになってしまいそうなアレコレをたんたんとこなしてゆく姿には……ホレなおすと言うのはてれくさいが(笑)、新鮮な気持ちにさせられている。
こういうのをちゃんと言葉でつたえていくと、少々の感覚のズレもちいさなこととして消化していく、のだろうな。
山本ふみこさんからひとこと
お忙しいお引越しとその後のお暮らしのなか、よく書いてくださいました。だんな様への思いが、自然にあふれていますね。拍手。
さて「きたのふみ」の言葉の選びとして、「ギリギリ」「フキゲン」「アレコレ」のカタカナ化があります。これもなかなか面白いではありませんか。
通信制 山本ふみこさんのエッセー講座とは
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回出されるテーマについて書き、講師で随筆家の山本ふみこさんから添削やアドバイスを受けられます。講座の受講期間は半年間。
現在第3期の講座開講中で、次回第4期の参加者を募集中です。申込締切は2022年1月7日(金)まで。詳しくは雑誌「ハルメク」1月号の誌上とハルメク旅と講座サイトをご覧ください。
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