「種種雑多な世界」水木うららさん
2024.11.302024年10月31日
通信制 山本ふみこさんのエッセー講座第9期第1回
「ダイエット」浅井京子さん
随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から山本さんが選んだエッセーをご紹介します。第9期1回目のテーマは「塩」。浅井京子さんの作品「ダイエット」と山本さんの講評です。
ダイエット
30年以上前のこと。にがりダイエットが流行ったことがあった。30代後半から毎年2㎏ずつ体重が増えだした私は、ダイエットに効果があると聞けばすぐ試していた。にがりはテレビで紹介されたためか、どのお店に行っても見当たらず、如何にダイエットに悩む人が多いかを知る。ある日自然食品のお店で見つけたと、同僚がにがりをくれた。
豆腐を作るときに使うにがりが、ダイエットに良いとは。にがりに含まれるマグネシウムが腸を刺激し便秘解消になるとか……朝晩、お水に数滴落として飲むだけでダイエット? 半信半疑ながら職場の女性たちはこぞってにがりを求めた。腸がきれいになるだけでも良いではないか、そんな思いもあった。
長崎の友人を訪ねた帰り、空港でにがりを見つけ思わず購入したこともあった。その後、にがりダイエットはいつの間にか忘れ去られ、私のダイエットも、バナナダイエット、ゆで卵ダイエット、野菜中心の食生活、夜は炭水化物を食べない等々、いろいろ試したがいつも期待は裏切られ続けた。
50代になり、友人の勧めで市のトレーニングルームに通いはじめた。運動器具やトレーニングルームの使い方などの説明を受け、利用証を作ると、トレーニングルームを使うことができる。また、その人の希望にあった運動メニューを専門知識のあるトレーナーが作ってくれるとのことだ。
「トレーニングの目的は?」
「80歳になっても山に登りたい。」を、トレーニングメニュー作成時の希望とした。
当時の私は、仕事を辞めたらタンザニアの最高峰、キリマンジャロに登りたいと考えていた。
メニューに従い、黙々とトレーニングを続けても体重は相変わらず右肩上がり、ダイエットにはならない。「筋肉は重いから体重が増えるけど、体は引き締まってくるから……」と同僚に慰められ、行ける土・日はトレーニングと、その後のエアロビクスで楽しく体を動かし汗を流した。
仕事を辞め60代後半、80代での山登りはこの太った体では無理、それに若いころと違って、長い期間お風呂に入れない登山はいや! と、今は毎週スイミング教室に通い泳いでいる。相変わらず体重減少はなく、お腹は妊娠5、6ヶ月、体重は出産まぢかと同じだが、身体を動かしいつまでも健康でいたいと思っている。
山本ふみこさんからひとこと
ダイエットをテーマにしたエッセイとして(けっこう退屈)、こんなにおもしろいものがあるなんて。
正直なところ、ユーモアがあるところ、とても魅力的です。
当時の私は、仕事を辞めたらタンザニアの最高峰、キリマンジャロに登りたいと考えていた。
ここを読んで、実現してもしなくても、この志を持つに至る心根にあこがれました。
通信制 山本ふみこさんのエッセー講座とは
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は講座の受講期間の半年間、毎月1回出されるテーマについて書き、講師で随筆家の山本ふみこさんから添削やアドバイスを受けられます。
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