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- エッセー作品「雲、雲、雲」原田彰子さん
随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から山本さんが選んだエッセーをご紹介します。今回募集した作品のテーマは「雲」です。原田彰子さんの作品「雲、雲、雲」と山本ふみこさんの講評です。
雲、雲、雲
令和2年7月4日、熊本県は豪雨に襲われた。次々と発生する積乱雲が一列の線状となって停滞し長時間、激しい雨を降らせ続けた。県内でも人吉、球磨地方が甚大な被害を受け、65名もの方が犠牲となった。
四季折々の雲の中でも、夏空の入道雲や天空の城「ラピュタ」を取り巻く大きな雲を「積乱雲」と、難しいことばでいう。その程度の知識しかなかった私にとって、積乱雲が線状降水帯となり川の氾濫、山崩れ、道路の崩壊を招き、人々の命、生活を奪う狂暴な雲となり得ることは、新知識であった。
単体の積乱雲が発生させる雷だけでも十分に恐怖だが、集団となって地上に襲い掛かるそれは、まるで人間の集団心理のようで、思わず暴走行為に走った雲たち! と思ってしまう。
電化製品の発する熱、化学物質の排出する有毒なガス。人類の文化文明の発展は気象に変化をもたらし、暑さから命を守るために、さらに電気の力を使って、空気中に熱を放出している。気象予報の科学的解析は精度を増し、大雨洪水の警報注意報は何時間も前から発令されている。早めの避難指示、
「命を守る行動をしてください」
切羽詰まった呼びかけが繰り返される。それでも毎年、梅雨の終わりは大きな災害が起きる。
今回の熊本豪雨で暴れ川となった球磨川は豊かな水量と急流で知られ、土地を潤し観光資源としても、流域の人々の暮らしを支えてきた。球磨川の氾濫で身内を亡くし、家財を失ったひとが、
それでも
「球磨川に恨みはない」
と言い切った言葉が報道された。
同様に線状降水帯となった積乱雲を恨むのは筋違いではなかろうか。人間の営み、文明の進歩による自然破壊がもたらした結果だと認めよう。雲が悪いんじゃない。ただ、私達はもう電気のない暮らしには戻れない。
山本ふみこさんからひとこと
むずかしいテーマに取り組まれ、気負いなく自然に結びにつなげられました。「ラピュタ」のくだりも、作家はもう少し説明を……? と、悩まれたそうですが、キマりマシタ!
通信制 山本ふみこさんのエッセー講座とは
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回出されるテーマについて書き、講師で随筆家の山本ふみこさんから添削やアドバイスを受けられます。講座の受講期間は半年間。
次回の参加者の募集は、2020年12月10日(木)に雑誌「ハルメク」の誌上とハルメク旅と講座サイトで開始予定。募集開始のご案内は、ハルメクWEBメールマガジンでもお送りします。ご登録は、こちらから。
青木奈緖さんと山本ふみこさんの対談イベントの参加者募集中!
山本ふみこさんと、明治の文豪・幸田露伴から続く作家の家で育ったエッセイストの青木奈緖さん。ハルメクのエッセー講座の講師を務めるお二人が書くことの魅力を語る対談を12月6日(日)にオンラインで開催します。
二人が書くことをおすすめする理由や、作家が自らの書き方について話し合う珍しいトークもあります。自分でも書きたいと思っているけれど、きっかけがなかった方も必見。詳しくはこちらをご覧ください。
■エッセー作品一覧■
- 山本ふみこさんが選んだ5つのエッセー第2回
- エッセー作品「雨雲レーダー」中村富子さん
- エッセー作品「黒い雲」仁科あかねさん
- エッセー作品「白く光るもの」丹羽由実さん
- エッセー作品「雲、雲、雲」原田彰子さん
- エッセー作品「逃げ足」三澤千惠子さん
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