夫婦が不仲になる決定的な原因とは?

コロナ禍での夫婦「円満」「不仲」の分かれ道

公開日:2020.08.13

更新日:2021.08.19

雑誌「ハルメク」のシンクタンク・生きかた上手研究所の所長・梅津順江が、ミドル~シニア世代の女性のトレンドを読み解きます。60~79歳の男女600人のWEBアンケートを実施。コロナ禍での、老年夫婦の関係性から見えてきたことは?

コロナ禍での夫婦
コロナ禍での夫婦問題

シニア世代の男女600人に夫婦関係についてアンケート!

新型コロナウイルスの感染拡大によって、夫婦がおうちで一緒に過ごす時間が増えました。「コロナ離婚」「DV被害の増加」「児童虐待」など家庭内に多くの影を落とすニュースが聞こえてきます。

老年夫婦関係においても、夫婦関係の強度が問われています。ハルメクの「生きかた上手研究所」では、外出自粛が老年の夫婦関係にもたらした影響を把握すべく、2020年5月22日~25日、60~79歳の男女600人を対象にWEBアンケートで「夫婦関係と生活に関する意識調査」を実施しました。なお、回答者の大半がリタイア年金世代です(有職34%、無職66%)という構造)。

 

7割のシニアが夫婦関係に満足。しかし、男女に大きなギャップあり

夫婦関係

2年前(2018年1月下旬、60~79歳の男女437人に実施)と比較すると、夫婦関係に満足している人の割合に男女差が見られました。配偶者に対して「満足」「やや満足」と回答したのは全体では70.8%で、2018年の65.3%より5.5%上昇しています。

男女別にみると、男性は76.0%(2018年は61.0%)と15%増加する一方で、女性は65.7%(2018年は68.8%)と3.1%減少しており、コロナ禍で女性の不満が高まっていることがわかりました。

 

女性の不満の主要因は、女性の家事負担が増えていること

女性の家事負担

「現在の家事分担に不満がある」と回答した人は、男性3%に対し、女性は26%。女性の4人に1人が家事負担に不満があることがわかりました。その男女差は、8.6倍!不仲夫婦の場合は、女性の不満度がさらに高く、女性の47.4%(2人に1人)が、現在の家事分担に不満を抱いていました。

外出自粛の中、夫婦関係に変化があった理由(自由回答)を読むと、「関係が悪くなった」と回答した女性は、「自宅にいる時間が増えたのに家庭のことは何もしないで寝てばかり。口癖のように『暇』と言っている(60歳 鳥取県)」「たまには飯作れ(67歳 愛知県)」「夫がコロナで仕事をやめたので朝昼晩ご飯を作るようになった。食事の支度・片付け・献立決めにもうぐったり。自分の時間がなく疲れ切ってしまった(68歳 東京都)」など、家事負担に関するコメントが目立ちます。家事分担の偏りは、夫婦仲によくない影響を及ぼしていました。

一方、仲良し夫婦のコメントからは、夫側の家事参加が見られました。具体的には、「私が家事をする時間が増えたことでお互いの理解が深まった(63歳男性 東京都)」「一緒に庭のアレンジや料理を作るようになった(76歳男性 福岡県)」「足りなくなった食料品を車で買い出しに行ってくれるようになった(67歳女性 岩手県)」「夫に自由な時間があるため、庭や家の周りをきれいにしてくれる(72歳女性 埼玉県)」などです。夫の家事参加は、夫婦円満・不仲の分かれ道であるといえそうです。

 

夫婦関係の新たな不満・不快要素に「衛生観念の差」も

配偶者に対して不満・不快感を覚えること

「配偶者に対して不満・不快感を覚えること」を尋ねると、全体では1位「性質」、2位「コミュニケーション」、3位「生活習慣」でした。

配偶者に対して不満・不快感を覚えること(男女別)

男女別にみると、男性は「夫婦のコミュニケーション(55.6%)」、女性は「相手の性質(上から目線、言葉遣いなど)(54.4%)」を1位に挙げています。また、女性は男性よりも不満・不快に感じる要素が多岐に渡っていました。男性との差が大きかったのは「相手の性質(54.4%)」「生活習慣(風呂・トイレの使い方など)(45.6%)」「食事に関する習慣(食べ方、音など)(30.1%)」です。全体的に女性の方が生活習慣や衛生面に不満を持ちやすいことがわかります。

関係性が悪くなったと回答した人のフリーコメントでも、衛生観念の差が見られました。具体的には、「コロナウイルス感染予防の仕方に違和感ある(63歳 東京都)」「清潔感に欠けるところが多く、神経質な私には嫌な感じ(73歳 大阪府)」などです。「ウイルスを持ち込まないで(妻)」「神経質になり過ぎだ(夫)」といった夫婦間による衛生意識の不協和は、コロナによって新たに加わった衝突要素といえるのではないでしょうか。

先日、専業主婦の友人とこんな話をしたのを思い出しました。「夫が在宅勤務の日もあるけど、出勤日の帰宅時に玄関で除菌スプレーを振りかけたら、夫にばい菌扱いするなとキレられた」と。

私も心当たりがあります。営業職の夫は、人と会う機会が多いです。そのため不安は大きく、帰宅したらすぐ、「まず手洗い・うがい!」と口ぐせのように言ってしまいます。ウイルスを家に持ち込まれたくないですから……。

また、外出自粛をきっかけに、家で一緒に過ごす時間が増え、夫が家事を手伝わずにゴロゴロしている姿を見てイラッとしたり、リモートの日の仕事ぶりに幻滅したり……。この5か月くらい、そんな小さなストレスが私も少しずつ溜まっています。外出もできないので、一人時間を持ったり、切り替えて発散したりする場もない……何とも八方ふさがりな状態です。

一緒にいる時間が増えたことは、長年連れ添った老年の夫婦関係にも影響を与えていました。仲良し夫婦は共通の時間ができて会話や感謝が増えたとプラスに捉えていましたが、不仲夫婦は時間が増えたことで家事分担に差が生じ、溝が深まったとしています。

これまで家と外とのバランスを保ちながら、つかず離れずの程よい距離感で長年お互いの関係性を築いてきた老年夫婦にも、新たな夫婦の在り方が問われています。習慣を変えることは、年を重ねるとおっくうに感じることがあるかもしれません。

家族に対する価値観や衛生観念など、今起きている大きな変化に対応できるか否かが、これからの老年の夫婦円満のカギを握っていくのではないでしょうか。

 

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梅津 順江

うめづ・ゆきえ 生きかた上手研究所長/インタビュアー。1年間に約700人の素敵な女性にお会いし、誌面や商品開発の種になる話を伺っています( ͡° ͜ʖ ͡°)/。のんきな夫との2人暮らし。趣味はダイビング、マンホール、美術鑑賞、食べ歩き。

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