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- 更年期の口の渇き・喉のつかえ…「ドライマウス」とは
「これって更年期障害?」という人のために、更年期の気になる症状・対処法を医師が解説する連載企画。今回のテーマは「口の渇き・喉のつかえ」です。更年期の口の渇き、食べ物が飲み込みにくい、声がかすれるといった症状の原因を専門医が解説します。
自律神経が乱れる更年期はドライマウスになりやすい!
更年期には女性ホルモンの減少によって自律神経のバランスも乱れやすく、その影響で唾液の分泌も低下するようになります。
さらに更年期には口の周りやあご、喉の周囲の筋肉が衰えたり、こりが起こりやすくなったりするため、咀嚼回数が減ることも唾液の減少につながります。
このように唾液が減る症状を「ドライマウス(口腔乾燥症)」といいます。ドライマウスになると口の中が渇きやすく、食べ物がつかえたり、食べ物を飲み込みにくくなったりします。声のかすれや喉の奥に何かが詰まったような感じがすることもあります。
唾液は口の中を潤すだけでなく、浄化作用や殺菌作用もあり、細菌の繁殖を防いでいます。そのため、唾液が減って口の中が乾燥すると雑菌が繁殖して口臭がするようになり、人と話すときに口臭が気になって困ることも増えます。
唾液が少ないと虫歯や歯周病にもかかりやすくなり、口の中の健康状態に大きく影響します。乾燥により、舌がざらざらする、味覚がおかしいなどの症状があらわれることも。食べ物の好みが変わり、水っぽいものばかりが欲しくなって、食べる楽しみがなくなったという人もいます。
その他、しゃべりづらくなって仕事に支障をきたしたり、おしゃべりがしにくくなってストレスがたまったりと、人によって悩みもさまざまです。
他の病気の可能性もあるので、まずは受診して検査を
ドライマウスは更年期障害だけでなく、別の病気が原因の場合もあります。例えば、「シェーグレン症候群」という自己免疫疾患の一種では唾液の分泌が減少するほか、目や鼻の粘膜も乾燥します。
更年期障害でも目や鼻の乾きは起こることがあり、とても紛らわしいため、まずは検査で他の病気の可能性を否定することが大切です。かかりつけの婦人科や内科(膠原病内科)で相談するか、口腔外科を受診するとよいでしょう。
また、ドライマウスはイライラやストレス、緊張が高まると余計に悪化します。更年期には心の不調も起こりやすいので、そのストレスがさらに口の渇きや喉のつかえ感を強めることもあります。
検査で病気でないことがわかったら、あまり気に病み過ぎず、セルフケアで少しずつ改善していくのがおすすめです。
唾液分泌を促すベロ回し&水分補給で自分でセルフケアも
セルフケアで唾液の分泌を促すためには、舌や口、あごを意識して動かすようにします。
舌の体操では、大きく口を開けて「あいうえお」と発声したり、舌をベーッと出したり引っ込めたりするのをくり返します。舌を出して上下左右に動かしたり、右回り・左回りに回したりして、舌を意識して大きく動かすようにしましょう。
食事のときにしっかりよく噛んで食べる、ガムを噛むなどの方法で、咀嚼回数を増やすのも効果的です。さらに、酸っぱくて唾液が出てくるような梅干しやレモン、酢の物など酸味の強いものを食べるのもよいでしょう。唾液の分泌を促すには、このような方法を積極的に取り入れて自分で改善していくことが必要です。
こまめな水分補給も大切です。外出先でもペットボトルやマイボトルを持ち歩き、少しずつ飲みながら口の中を潤しましょう。カフェインが多い飲み物よりも、水や麦茶、ハーブティーなどカフェインが含まれていない飲み物がおすすめです。
あめやキャンディーをなめてもよいのですが、唾液が少ないのでかえって食べにくく、砂糖が含まれていると虫歯の原因にもなることもあります。ノンシュガーやキシリトールなど、歯に影響しにくいものを選びましょう。
更年期のドライマウスには漢方治療も効果的
更年期障害が原因のドライマウスをセルフケアで改善できなかった場合は、口腔疾患の治療に使われている漢方薬がおすすめです。漢方薬は、更年期のさまざまな不調を根本改善する目的で婦人科でも処方されています。日常生活に支障があるレベルであれば、食事や会話の楽しみを取り戻すためにも婦人科を受診して、治療しましょう。
ドライマウスに悩む方におすすめの漢方薬
- 麦門冬湯(ばくもんどうとう):比較的体力が低下した咳により顔面紅潮する人で、口やのどが乾燥してイガイガし、痰があまり出ない乾いた咳がコンコンと続くようなとき、あるいは切れにくい痰をともなう咳、空咳などに使われます。
- 白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう):比較的体力がある人に向き、湿疹・皮膚炎や皮膚のかゆみがある場合に適します。のどの渇きやほてりにも用いられます。
- 五苓散(ごれいさん):水の巡りを整えて改善する処方で、口の渇きや尿量の減少やめまいなどのある方のむくみ、頭痛、下痢などに使用されます。
漢方薬をのむときの注意点
漢方薬をのむ場合、自分の体質に合ったものを選ばなければ、効果が得られないだけでなく、副作用が起こることもあります。体質に合うものを選ぶことが何よりも大切です。
気軽に自分に合う漢方薬が知りたい方には、オンライン相談を受け付けているサービス「あんしん漢方」がおすすめです。薬剤師などの医療チームがAIを利用して一人ひとりに効く漢方を見極め、お手頃価格で自宅に郵送してくれます。
監修者プロフィール:横倉恒雄さん(横倉クリニック)
よこくら・つねお 医学博士。医師。横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長。東京都済生会中央病院に日本初の「健康外来」を開設。故・日野原重明先生に師事。婦人科、心療内科、内科などが専門。病名がないものの不調を訴える患者さんにも常に寄り添った診療を心がけている。著書『病気が治る脳の健康法』『脳疲労に克つ』他。日本産婦人科学会認定医 /日本医師会健康スポーツ医/日本女性医学学会 /更年期と加齢のヘルスケア学会ほか。
TOP写真(撮影=中西裕人 ヘアメイク=小島けさき モデル=桂智子)、それ以外のイメージ写真=PIXTA
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