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- 適度なストレスは脳を刺激?ストレスとの付き合い方
老人脳にならないための習慣を専門家に聞く全5回の企画。今回は、「頑固老人」にならないための心の持ち方と、脳にも体にも悪影響を及ぼす「悪いストレス」についてです。脳に適度な刺激を与える「いいストレス」を増やして脳も体も元気に過ごしましょう。
年とともに頑固になる人とずっと柔軟な人の違い
加齢とともに年々怒りっぽくなったり、頑固になる人もいれば、いくつになっても柔軟な考え方を持ち、しなやかなイメージの人もいます。
頑固とは、自分が正しいと思うことを変えないことです。「自分が正しい」「自分が正義」そういう思いが強すぎて、人の意見をなかなか認められないわけです。これは「脳のバイアス」(偏った考え方)が関係しています。バイアスが「頑固な思考」を生み出しています。
それともう一つ、頑固さには、その人がそれまでの人生の中で構築してきた固定化された考え方である「マインドセット」(価値観や信念、それに思い込みなども含む)も関係します。
では、具体的に頑固さを生み出すものの正体と傾向、その対策について知っておきましょう。
頑固を生み出す考え方の具体例
- 新しい情報や証拠などを出されても、自分の信念や考え方を修正することなく、自分の考えに固執してしまう
- 「最近の若者はダメだ」「自分たちの若い頃はもっとやっていた」といった、自分たちが生きてきた時代を肯定する考え、若い人を否定する考え
- 信じてコツコツと積み上げてきたことがもし間違いだと明らかになっても、かけてきたコストが無駄になることを恐れて、今の行動を正当化しようとする
- 「自分の能力は生まれつき決まっている」と信じている
いかがでしょうか?
一方で、いつまでも柔軟性があって成長意欲が高い人は、上記とは真逆の考え方を持っていて、「脳は使えば使うほどよくなっていく。能力はどんどん上がっていく」と信じている人が多いです。
思考の違いによって、人生が大きく変わります。過去の自分の考えにとらわれていると「頑固」はますます硬直化していきます。そういった自分を変えるためには、「新しい体験の数を増やすこと」と「ドーパミンを増やすこと」の2つが重要です。
たくさんの新しい体験をした人ほど、考えや視点が増えて柔軟性が増してきますし、ドーパミンを増やすことで意欲が高まり、相手を理解しようという気持ちも高まるのです。
「いいストレス」と「悪いストレス」を分けて考える
ストレスは体にも脳にもよくありません。「そんなことは知ってるよ!」と言うかもしれませんが、ストレスのマイナス効果は、あなたの想像以上かもしれません。
例えば、ストレスが多いと脳で炎症が起こりやすくなります。脳に損傷が起きることもあります。よくストレスがたまると胃が痛くなると言いますが、胃だけではなく脳もダメージを受けています。
ストレスがない状態をつくることは、言ってみれば最強の健康法です。歴代世界最高年齢(没年122歳)のジャンヌ・カルマンさんは、100歳を超えても喫煙して、自分の好きなように生きてきたので、その分ストレスがなかったようです。
ストレスがないと、睡眠の質も全く変わります。睡眠の質は認知症にも直結するので、やはりストレスは大敵です。
ただ、すべてのストレスが悪者というわけではないのです。ストレスには「悪いストレス」と「いいストレス」があります。
「悪いストレス」とは、不安や執着、怒りなど、マイナスの感情に支配されて起きるストレスです。「いいストレス」は、新しいことに挑戦したり、運動で体に適度な負荷をかけることで起きるストレスです。
この2つをまとめてストレスと呼んでいるので混乱しそうですが、分けて考えることが大切です。
「いいストレス」は意識的に生活の中に取り入れていった方がいいものです。脳は軽いストレスを受けた方が再生能力が上がります。運動をするのでもいいですし、新しいことに挑戦するのでもいい。これが認知機能を刺激して、脳を再生してくれます。
一日中ボーッとテレビを見ていると、ストレスはないかもしれませんが、脳は衰えます。修復機能も働かなくなるので、ストレスが「0」の状態は、いいこととは言えないのです。
と言っても「いいストレス」というのも、程度がわかりにくいかもしれません。そんなときは次のようにして「いいストレス」かどうかを計ってください。
ストレスのセルフ判断法
- ストレスを、「0(無し)~10(マックス)」の10段階に設定する
- 今、感じているストレスがこの10段階のどこにあるかを決める
数値は自分の感覚でOKです。すごいストレスならば「8」とか、この程度なら「3」のように付けましょう。「いいストレス」はこの判断で「1~2」にある状態です。「3以上のストレス」になると「悪いストレス」に分類されます。
では「悪いストレス」を減らすには、どうしたらいいのでしょうか。
悪いストレスの解消方法
悪いストレスとは、不安・執着・怒り・寂しさ・恐れ・悲しみなどが原因で起きるものと、病気や不調、過度の運動や睡眠不足などから起きるものとがあります。病気や不調などが原因の場合は、やはりその元を治す必要があります。
一方で、不安や執着など、メンタル面の悪いストレスは解消方法があるので、それを紹介します。
悪いストレスの解消法1:不安の消し方
不安の消し方は、不安がなくなりスッキリするまで書き出すことです。不安をなぜ感じるのか、それをなくすためには何があればいいかを、思いつくままに書いていきます。
悪いストレスの解消法2:執着の消し方
遠い場所に移動してみましょう。私たちは執着している結果や人、出来事と距離をとると、その対象を客観的に見ることができます。
悪いストレスの解消法3:寂しさの消し方
人とつながるのが一番ですが、それができないときは「自然や大好きなものとつながること」です。つながりは人間だけでなく、 自然、動物、物、なんでもいいです。特に注目されているのが、植物や動物とつながれるガーデニングです。
悪いストレスの解消法4:怒りの消し方
2週間、利き手と反対の手を意識的に使ってみてください。利き手と反対の手を使うことは、普段使っていない部分を意識して動かさないといけないため、自制心が鍛えられます。すると、怒りもコントロールしやすくなります。
ますは始めやすい解消法から試してみてください。良いストレスを程よく感じ、悪いストレスは可能な限り解消して、脳にも体にもいい生活を送りましょう。
教えてくれたのは:西剛志(にし・たけゆき)さん
東京工業大学大学院生命情報専攻卒。博士号を取得後、特許庁を経て、2008年にうまくいく人とそうでない人の違いを研究する会社を設立。世界的に成功している人たちの脳科学的なノウハウや、才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、これまでに1万人以上に講演会を提供。エビデンスに基づいた研修、商品開発サービスなども全国に展開。テレビやメディアなどにも多数出演。著書は海外でも出版され累計31万部を突破。近著に『80歳でも脳が老化しない人がやっていること』(アスコム刊)
80歳でも脳が老化しない人がやっていること
いくつになっても脳が若いままの人と、脳の老化が進んでいく人の差はどこにあるのか?脳科学者が伝えたい「老人脳」にならないための方法を紹介。
食べるもの、運動、睡眠、考え方、人付き合いなど、日々の習慣を少し変えることで脳は若くなる、と本書は説明します。さらに、高齢になっても超人的な認知・身体能力を持つ人(スーパーエイジャー)たちの脳の使い方をひも解き、いつまでも若々しく幸せなシニアライフを送るきっかけを示唆します。
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