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- 一生脳を元気に!そのための運動習慣と食事法
80代・90代になっても脳を元気に保つための習慣を専門家に伺う企画。今回は、脳の老化を遠ざけるための、食と運動をご紹介します。加齢による体の衰えは日々感じとるものですが、脳の老化は気付きにくいもの。人生100年時代を元気に生き切りましょう!
脳を活性化するには「組み合わせ運動」!
「脳の老化防止のために、ウォーキングには脳を活性化する効果がある」とよく言われますが、実はこれは脳にとってベストな方法ではありません。
脳を活性化させるために、運動は有効です。免疫機能を上げたり、筋力をつけたりと、さまざまな効果があることもわかっています。でも、脳の認知機能を一番高める運動はなにかと聞かれたら、私は「コーディネーション運動」だと答えます。
コーディネーション運動とは、複数の動きを同時に行う運動のことで、運動神経を上げるための方法として開発されました。脳から体への伝達速度をよりスピーディーに、より正確にすると言われています。
ちなみにウォーキングなどの有酸素運動や筋力のエクササイズの、約2倍の効果があったそうです。
コーディネーション運動を詳しく説明すると、大きく7つの要素に分かれます。
- リズムの能力
目や耳から入ってきた情報を使い、タイミングをうまくとる。 - バランス能力
崩れたバランスを素早く整える。 - 変換能力
相手の動きに合わせて瞬時に変換できる。 - 反応能力
状況を察知し素早く瞬時に反応できる。 - 連続能力
体をスムーズに動かす、流れの中でうまく動かす。 - 定位能力
ボールがどこに落ちるかを予測するなど変化を調整していく。 - 識別能力
ボールなどを精密に扱う。
この7つがミックスしているコーディネーション運動こそ、認知機能の向上に最も効果がある運動なのです。
コーディネーション運動の具体例
- お手玉
- 卓球
- ボーリング
- ダンス
など
特に、脳の認知機能を上げる究極のコーディネーション運動としておすすめしたいのは、コーディネーション運動の7つの要素が全部入っている「ダンス」です。
最近、SNSなどで短いダンス動画などをアップしているシニアの方もいますが、脳を元気な状態にするためにはとてもいい趣味だと言えます。自分で動画をアップしなくても、動画を見ながら、その動きに合わせて踊るというのも、コーディネーション運動になります。
コーディネーション運動は、どの年齢でも効果があるので、若い時から始めていれば脳の老化防止につながります。
食が細い人は死亡率が高い?脳を元気に保つ栄養素
老人脳を防ぐには、食生活が重要です。食が細い人は食欲が旺盛な人に比べて死亡率が2倍以上高いことがわかりました。咀嚼(そしゃく)力の低下や薬の副作用、孤独感や抑圧など心理的な要因、家族などの環境要因も食欲に悪影響を及ぼしますが、それらの要因を差し引いた後も死亡率は1.5倍高かったのです。
また食欲が旺盛な人は食が細い人に比べて、肉、魚、卵、野菜、果物の摂取量が多く、ビタミンB1、ナイアシン、鉄、リンなどの栄養素の摂取量も多く、吸収率もよいことがわかっています。
肉や魚が食べたくなくなる、または肉や魚を食べられなくなるという人は、老人脳のリスクが上がります。肉には、老人脳の予防に必要な栄養素がしっかり入っているからです。
では、どんな食材や栄養をとればよいのでしょうか?代表的なもので、EPAやDHAを含む青魚やビタミンB群、チロシンなどのタンパク質に含まれる各種アミノ酸が脳にいい栄養素とよく言われています。
若返り遺伝子「サーチェイン遺伝子」活性化!
どの栄養素がいいのかを選ぶ上で、私が特に注目しているのが若返り遺伝子として有名なサーチュイン遺伝子です。
この若返り遺伝子が活性化すると、神経の衰えがゆるやかになる、心筋の保護をする、シミやシワが改善される、難聴・視力低下が回復する、炎症や免疫が改善、肝臓の代謝が改善、インスリンの分泌を促すなど、老化を穏やかにすることで寿命が延びることが科学的に証明されています。
「サーチュイン遺伝子」を活性化させる7つの栄養素
- ナイアシン
かつお節、マイタケ、たらこなど - エラグ酸(ポリフェノールの一種)
イチゴ、ブラックベリー、クランベリー、ザクロなど - レスベラトロール
サプリでの摂取が現実的 - プテロスチルベン
ブルーベリー、オメガ3系の油、青魚、マグロのトロなど。サプリメントがおすすめ - EPA、DHA
サバ、アジなどの青魚、ブリ、ウナギ、あん肝、サバの水煮缶など - ビタミンC
アセロラ - ビタミンD
キノコ類、あん肝、しらす干し、イクラ、ウナギなど
※ビタミンDを食品から摂取する場合、腎障害を起こす危険があるため、1日の上限が決まっています。日光を浴びることによるビタミンDの供給を推奨します。
これらの7つの栄養素は、どれも単体で効果があるという研究結果が出たものなので、すべてを取らないといけないわけではありません。この7つの栄養素を食生活やサプリメントなどでうまく取り入れていくことで、若返り遺伝子を活性化させ、老化を予防しましょう。
食は、誰しもが、毎日必ず行う習慣ですから、そこを意識して改善していくことは、脳機能を高めるために非常に意義のあることになります。
また、前半で説明したコーディネーション運動も、日々の生活の中で、無理のない範囲でできることを続けてみてください。これらの脳にいいことを「習慣にしていく」ことがとても大切です。
次回は老人脳にしないために重要な室温の設定と、デジタルツールを使って脳を活性化させる方法についてです。
教えてくれたのは:西剛志(にし・たけゆき)さん
東京工業大学大学院生命情報専攻卒。博士号を取得後、特許庁を経て、2008年にうまくいく人とそうでない人の違いを研究する会社を設立。世界的に成功している人たちの脳科学的なノウハウや、才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、これまでに1万人以上に講演会を提供。エビデンスに基づいた研修、商品開発サービスなども全国に展開。テレビやメディアなどにも多数出演。著書は海外でも出版され累計31万部を突破。近著に『80歳でも脳が老化しない人がやっていること』(アスコム刊)
80歳でも脳が老化しない人がやっていること
いくつになっても脳が若いままの人と、脳の老化が進んでいく人の差はどこにあるのか?脳科学者が伝えたい「老人脳」にならないための方法を紹介。
食べるもの、運動、睡眠、考え方、人付き合いなど、日々の習慣を少し変えることで脳は若くなる、と本書は説明します。さらに、高齢になっても超人的な認知・身体能力を持つ人(スーパーエイジャー)たちの脳の使い方をひも解き、いつまでも若々しく幸せなシニアライフを送るきっかけを示唆します。
■「脳が老化する人しない人」の続きを読む■
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