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医師が解説!動画で学ぶ腰痛体操・2
正しい姿勢&筋トレで腰痛を予防!ハリ胸エクササイズ
東京大学医学部附属病院22世紀医療センター
松平浩
公開日:2020.04.27
更新日:2020.09.18
この連載では東京大学医学部附属病院22世紀医療センター・松平浩先生が、腰痛体操・ストレッチを動画で紹介します。今回は腰に負担をかけない姿勢を学べる腰痛予防の筋トレ、3種類のエクササイズ「ハリ胸スクワット・ランジ・カーフレイズ」です。
ぎっくり腰の原因は、悪い姿勢でたまった「腰痛借金」
腰痛と聞くと、いわゆる「ぎっくり腰」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
ぎっくり腰は、腰に突然電気のような激痛を感じるのが特徴で、痛みでそのまま動けなくなってしまうこともあるようです。医学的には「急性腰痛症」や「腰椎捻挫(ねんざ)」などと呼ばれています。
ぎっくり腰は、日常生活の中で蓄積した腰への負担が許容範囲を超えたときに、ささいな動作がきっかけとなり発症します。この腰への負担が日常的に溜まった状態を、松平先生は“腰痛借金がある状態”と呼んでいるそう。
「猫背や前かがみなど悪い姿勢で過ごしていると、腰への負担が強まり、“腰痛借金”がたまった状態になります。腰痛借金は姿勢への意識や体操で少しずつ“返済”できますが、毎日悪い姿勢を続けていると、返済スピードが間に合わなくなります。そして、背中の筋肉などが持ちこたえる限界を超えると、ぎっくり腰や椎間板ヘルニアを発症してしまうのです」
現代社会はパソコンやスマホ作業、家事などで、猫背や前かがみの姿勢になりがち。自分では意識していなくても、知らず知らずのうちに腰痛借金はたまっています。
「腰痛を予防するためには、腰に負担をかけない姿勢を知ること、そして腰痛借金がたまったら、『これだけ体操』を行って、すぐに“返済”することが大切です。」
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1回3秒で腰痛改善!簡単ストレッチ「これだけ体操」
腰痛予防に!腰に負担をかけない姿勢「ハリ胸プリけつ」
また、ぎっくり腰になりやすい姿勢や動作を避けることも、予防につながります。ぎっくり腰のきっかけで特に多いのが、重い物を持ち上げること。
コップのふちギリギリまで水が入っている状態では、ちょっとした衝撃で水があふれるように、腰痛借金が限界までたまった状態では、いつもと変わらない動作でもぎっくり腰を発症してしまいます。
そのため、物を持ち上げるときも、なるべく腰に負担をかけない適切な姿勢を心掛ける必要があります。
「重い物を持ち上げるときは、なるべく腰を近づけて胸を張り、骨盤を前傾させて膝を曲げるのが適切な姿勢です」
胸を張り、お尻を突き出した状態になるため、松平先生はこの姿勢を“ハリ胸プリけつ”と呼んでいるそう。
「340kg重(340kgの物が載っているという専門的な単位)以上の力が腰の椎間板にかかると、ぎっくり腰になる可能性が高くなるという研究データがあります。20kgの重さの物を床から持ち上げる際に、通常の前かがみの姿勢だと410kg重の力が椎間板に生じます。一方、ハリ胸プリけつ姿勢の場合は、310kg重と、腰にかかる負荷を大幅に軽減できます」
ハリ胸姿勢と適度な筋トレでぎっくり腰を予防!
しかし、50代以上の大人女性は、とっさに胸を張る姿勢を取るのが難しい場合が多いそう。
「年を取ると背中の筋肉やインナーマッスル(体幹の深部の筋肉)が衰えて、胸を張るのが難しくなるため、猫背になりがちです。ぎっくり腰の予防には、とっさのときに自然とハリ胸の姿勢を取ることが大切です。そのために、日頃からハリ胸を体に覚えこませておく必要があります」
また、松平先生によると、女性は加齢により筋肉量が減少して、全身の筋力低下および身体機能の低下が起こる「サルコペニア」になりがちとのこと。
「美しい適切な姿勢を維持するためには、体幹、骨盤回り、脚の筋肉を鍛えておくことが大切です」
そこで、松平先生にハリ胸をキーワードにしたエクササイズを3つ教えてもらいました。
【動画】簡単な筋トレで腰痛を予防!足腰を鍛えよう
「腰痛の予防にハードな筋トレは必要ありません。でも、大腿四頭筋など、姿勢の維持にも重要な足の筋肉を維持するためには『きついな』と感じるくらいの適度な負荷が必要です」
「特に新型コロナウイルスの感染拡大で、外出自粛、ステイホームが重要なこの時期は、ここで紹介する3つのエクササイズを1日合計で10回ずつ(最初は分割して少しずつでも)取り入れてみてください」
ハリ胸エクササイズ1:ハリ胸スクワット
ハリ胸スクワットのやり方
1.足を肩幅よりやや広めに開き、つま先を少し外側に向けます。人差し指と中指の2本の指を太もものつけ根(そけい部)に添え、肘が体よりも少し後ろになるように、しっかりと胸を張る(ハリ胸)。
2.胸を張ったまま、後ろに椅子があるイメージで、8秒間かけてゆっくり腰を下ろしお尻を突き出す(プリけつ:股関節で指をはさむイメージで、できれば太ももと床が水平になるまで)。膝がつま先と同じ方向に向かうように。
【注意】膝がつま先のラインを超えると、膝に負担がかかり痛めてしまう可能性が高まるので注意する
3.座ったときと同じように、8秒かけてゆっくり戻す(完全に立った姿勢までは戻らない)。
★エクササイズの効果:体幹、骨盤、太もも回りの筋力強化
「ハリ胸プリけつ姿勢のままゆっくり行ったり来たりを繰り返す、いわゆるスロースクワットを行うことで、太ももの筋肉のタンパク質合成が高まります」
ハリ胸エクササイズ2:ハリ胸ランジ
ハリ胸ランジのやり方
1.どちらか片方の足を大きく前へ踏み出し、腰に両手を当て、胸を張ります(ハリ胸)。つま先はまっすぐ前を向くように。
2.ゆっくり腰を落としていき、腰は反らずに下までさがったらそのまま8秒キープ。前足の膝がつま先より前に出ないように注意。後足の股関節の前側(腸腰筋)がストレッチされているのを感じる。
3.ゆっくり元の体勢に戻り、足を入れ替えて同じ動作を繰り返す。戻るときは、前足のつま先で蹴らないよう注意しつつ一歩で戻る。左右合わせて10回を目安にしましょう。
★エクササイズの効果:足腰全般の筋肉強化と股関節前側(腸腰筋)のストレッチ
「とても重要な筋トレとストレッチが同時にできる一石二鳥のエクササイズです。丹田(おへそから5cm下)を意識し、腰を反らないよう注意しましょう」
ハリ胸エクササイズ3:ハリ胸カーフレイズ
ハリ胸カーフレイズのやり方
1.両腕を背中の後ろに回し、指を組み、胸を張ります(ハリ胸)。
2.腕を下にグーッと下げながら、かかとをしっかり上げる。
3.そのまま8秒キープして、元の体勢に戻す。
★エクササイズの効果:姿勢改善とふくらはぎの筋力アップ
「カーフはふくらはぎ、レイズは上げるという意味。かかとを上げることで、ふくらはぎの筋肉を鍛える体操です。足を閉じ内くるぶしを近づけて行うと負荷が上がり、足を開くとラクになります。もし、ふらふらする場合は、壁に両手(指先)をついてやってもOKです」
美しく適切な姿勢を身に着けるには、ハードな筋トレよりも「少しきついかな」と感じる程度のエクササイズを毎日習慣として繰り返すことが大切です。継続は力なり。ハリ胸エクササイズで足腰を鍛えて、「腰痛借金」を溜めずに腰痛を予防しましょう。次回は、腰痛借金をためない「美ポジ」ストレッチをご紹介します。お楽しみに!
監修者プロフィール:松平浩さん
まつだいら・こう 東京大学附属病院22世紀医療センター「運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座」特任教授。NHK番組出演を含め、腰痛の正しい知識や対策に関する啓蒙啓発活動を精力的に行っている。主な著書は『腰痛は「動かして」治しなさい』(講談社+α新書)など。「美ポジラボ」やYoutubeチャンネルにて「Stay Home」の今、家でできる体操動画コンテンツを配信中。
取材・文=竹下沙弥香(ハルメクWEB)
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