首の寝違えの原因は?症状・治療法・よくある質問【医師監修】

首の寝違えの原因は?症状・治療法・よくある質問【医師監修】

公開日:2025年09月26日

首の寝違えの原因は?症状・治療法・よくある質問【医師監修】
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首の寝違えでお悩みの50代・60代の女性のみなさんへ。この記事では、整形外科医の三河聡志先生の監修のもと、つらい首の寝違えについて、その原因から対処法、そして繰り返さないための具体的な予防策まで、深く掘り下げて分かりやすくお伝えいたします。

三河聡志
監修者
三河聡志
監修者 三河聡志 医療法人一誠会みかわ整形外科クリニック

この記事3行まとめ

✓朝、突然の首の痛みで動かせないのが寝違えの典型的な症状です。
✓加齢やストレス、スマホ習慣、合わない寝具が50代・60代女性の大きな原因に。
✓安静が第一ですが、痛みが和らいだ後の「優しいストレッチ」と生活改善が再発予防の鍵です。

首の寝違えとは?

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正式には「急性疼痛性頸部拘縮(きゅうせいとうつうせいけいぶこうしゅく)」と呼ばれることもあります。朝、目が覚めたときに首の後ろや側面、肩にかけて痛みが生じ、首を動かせる範囲が極端に狭くなるのが特徴です。まるで首に”ぎっくり腰”が起きたような状態、と想像していただくと分かりやすいかもしれません。

50代・60代になると、私たちの体には少しずつ、しかし確実に変化が現れます。特に女性は、更年期を経て女性ホルモン(エストロゲン)が減少することで、筋肉の柔軟性が失われ、関節の動きが硬くなりがちです。このホルモンは、筋肉やコラーゲンの生成をサポートし、関節の潤滑を助ける働きがあるため、その減少が寝違えやすさや治りにくさに直結することがあるのです。

若い頃は一晩寝れば治っていたような寝違えが、何日も続いたり、痛みが強かったりするのは、こうした加齢に伴う体の変化が背景にあります。ですから、この年代の寝違えは、単なる「寝相が悪かった」だけでは片付けられない、体からの大切なサインと受け止め、根本的な原因に目を向けることが何よりも大切になります。

よく見られる身体的症状

  • 朝起きたら、首の片側(時には両側)に激痛が走り、起き上がるのもつらい。
  • 首を特定の方向に動かそうとすると、電気が走るような鋭い痛みがする。
  • 痛みで首が回らず、誰かに呼ばれても体ごと振り向かなければならない。
  • 首だけでなく、肩甲骨の内側や背中、時には腕にしびれや重だるい痛みを感じる。
  • 痛みがひどく、緊張型頭痛や吐き気、めまいを伴うこともある。
  • 着替えや洗顔、料理など、日常の何気ない動作さえ困難になる。

心理的な変化

「またあの痛みが襲ってきたらどうしよう」という予期不安から、夜、安心して眠れなくなる方もいらっしゃいます。痛みが続くことで気分が落ち込み、イライラしやすくなったり、好きだった活動への意欲が湧かなくなったりと、心にも影を落とすことがあります。この「できない」という感覚が、自信の喪失につながることもあるのです。

首の寝違えに特化した大規模な公式統計は多くありませんが、関連するデータとして、厚生労働省の国民生活基礎調査では、50代・60代の女性が抱える体の不調として「肩こり」や「腰痛」が常に上位にあります。寝違えは、こうした筋肉や骨格系の不調の延長線上で起こることが多く、決して珍しい症状ではないこと、そして多くの同世代の女性が同じ悩みを抱えていることを知っておいてください。

首の寝違えの原因とメカニズム

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主な原因

首の寝違えの主な原因は、単一ではなく、複数の要因が絡み合って起こります。

1. 生理学的要因

  • 筋肉・靭帯の柔軟性低下:年齢と共にコラーゲンが減少し、筋肉や靭帯は硬くなります。柔軟性を失った組織は、睡眠中の些細な負荷にも耐えられず、損傷しやすくなります。
  • 女性ホルモンの影響:前述の通り、エストロゲンの減少は筋肉や関節のしなやかさを奪い、血行不良を招きやすくします。これが筋肉の回復を遅らせ、痛みが長引く一因となります。
  • 骨格の変化:加齢により、首の骨(頚椎)が少しずつ変形する「変形性頚椎症」が始まっている方も少なくありません。骨の変形によって神経の通り道が狭くなっていると、少しの炎症でも強い痛みやしびれが出やすくなります。

2. 環境的要因

  • 合わない寝具:枕が高すぎれば首は過度に前に曲がり、低すぎれば後ろに反ってしまいます。柔らかすぎるマットレスは体が沈み込み、寝返りが打ちにくくなるため、長時間同じ姿勢を強いられることになります。
  • 不自然な姿勢での睡眠:リビングのソファでうたた寝してしまったり、長距離バスや新幹線で窓に頭をもたれて眠ったりすることも、首に極度の負担をかけます。
  • 体の冷え:夏場の強力な冷房や、冬の隙間風などで体が冷えると、血管が収縮して血行が悪化します。筋肉は硬直し、少しの動きでも傷つきやすい状態になってしまいます。
  • スマートフォンの長時間利用(スマホ首):うつむいた姿勢でスマホ画面を見続けると、重い頭(約5kg)を首の筋肉だけで支えることになり、首の後ろの筋肉は常に緊張状態に。この「スマホ首」または「ストレートネック」と呼ばれる状態が日常化すると、寝違えの最大のリスク要因となります。

3. 心理社会的要因

50代・60代は、人生の転機が訪れる時期でもあります。子どもの独立による寂しさ(空の巣症候群)、親の介護による心身の疲労、自身のキャリアの変化や定年退職による役割の変化など、さまざまなストレスが知らず知らずのうちに蓄積します。こうした精神的なストレスは自律神経のバランスを乱し、交感神経を優位にさせます。その結果、全身の筋肉がこわばり、特に首や肩はガチガチに。この緊張が睡眠中も解けないことが、寝違えの引き金となるのです。

発症メカニズム

睡眠中に不自然な姿勢が長時間続くと、首の一部の筋肉(特に肩甲挙筋や僧帽筋など)が圧迫され、虚血状態(血液が不足した状態)に陥ります。そして、朝方、寝返りを打ったり起き上がろうとしたりして急に首を動かした際に、その虚血状態だった筋肉に一気に血液が再灌流します。この過程で活性酸素が発生し、筋肉の微細な線維や周りの組織に炎症や損傷(軽い肉離れのような状態)が起こり、激しい痛みや可動域制限が生じると考えられています。

リスク要因

  • 慢性的な肩こり、首こり
  • ストレートネック、スマホ首
  • 猫背などの不良姿勢
  • 長時間のデスクワークや手芸など、同じ姿勢での作業
  • 運動不足による筋力低下と柔軟性の欠如
  • 精神的ストレスや過労
  • 疲労が溜まっているときの深酒(寝返りが減るため)

診断方法と受診について

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いつ受診すべきか

通常、寝違えは数日から1週間程度で自然に軽快しますが、以下のような「危険なサイン」が見られる場合は、単なる寝違えではない可能性が高く、速やかに医療機関を受診しましょう。

  • 1週間以上経っても痛みが全く改善しない、むしろ悪化している。
  • 痛みが激しく、夜も眠れないほどである。
  • 首の痛みに加えて、腕や手に広がるしびれや麻痺、力が入りにくい、ボタンがかけにくい、お箸が使いにくいといった症状がある。
  • めまい、ふらつき、歩きにくい、ろれつが回らないといった症状を伴う。
  • 転んだり、頭をぶつけたりした後から痛む。
  • 発熱や原因不明の体重減少がある。

これらの症状は、頚椎椎間板ヘルニア、変形性頚椎症、後縦靭帯骨化症、脊髄の病気、あるいは脳血管障害など、専門的な治療を要する病気が隠れているサインかもしれません。

診断の流れ

1. 問診で確認すること

医師は、診断の手がかりを得るために、以下のような質問をします。症状を正確に伝えることが、的確な診断への第一歩です。

  • いつから、どのような状況で痛み始めましたか?
  • 痛みの強さを0から10で表すと、どのくらいですか?
  • 痛みはどのような性質ですか?(ズキズキ、ジンジン、ピリピリなど)
  • どの方向に動かすと特に痛みますか?また、楽になる姿勢はありますか?
  • 首以外に症状はありますか?(しびれ、頭痛、吐き気など)
  • これまでに同じような経験はありますか?
  • 普段の生活習慣(仕事内容、PCやスマホの使用時間、睡眠環境、運動習慣)について

2. 身体検査

次に、医師が首の状態を直接確認します。どのくらい動かせるか(可動域の測定)、押して痛む場所(圧痛点)はどこか、筋力や感覚に異常はないか(神経学的検査)などを丁寧に調べます。

3. 代表的な検査例

問診や身体検査の結果、他の病気が疑われる場合には、画像検査を行います。

  • レントゲン(X線)検査:骨の変形や骨折の有無、頸椎の並び具合などを確認します。
  • MRI検査:レントゲンでは見えない椎間板や神経、筋肉、靭帯といった軟部組織の状態を詳しく見ることができます。ヘルニアや神経の圧迫などを調べるのに非常に有用です。
  • CT検査:骨の細かい構造をより詳しく見たい場合に用いられます。

受診時の準備

  • 痛みの経過(いつから、どんな時に、どのくらい痛むか)を時系列でメモしておくと、医師にスムーズに伝えられます。
  • 現在服用している薬があれば、お薬手帳や薬そのものを持参しましょう。
  • 質問したいことを3つほど事前にリストアップしておくと、診察室で慌てずに済みます。「この痛みはちゃんと治りますか?」「何に気を付ければいいですか?」など、遠慮なく質問しましょう。

受診すべき診療科

首の寝違えで受診する際は、整形外科が最も適しています。骨、関節、筋肉、神経の専門家が、的確な診断と治療を行ってくれます。お近くの整形外科が分からない場合は、まずはかかりつけの内科医に相談したり、お住まいの自治体の保健所や医療情報提供サービスで探したりすることができます。

首の寝違えの治療法

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治療方針の決定

治療は、患者さん一人一人の症状の強さや原因、生活スタイルに合わせてオーダーメイドで決定されます。医師は、まず痛みを和らげることを最優先に考えながら、再発を防ぐための長期的な視点に立ったアドバイスも含めて、最適な治療プランを一緒に考えてくれます。

ご自身でできるケアと、専門家による治療法

ステップ1:急性期の対処法(発症〜3日)

この時期は、とにかく安静と冷却が鉄則です。

  • 安静:痛みを誘発する動きは避け、最も楽な姿勢で過ごしましょう。首にコルセット(頚椎カラー)を短期間使用することもあります。
  • 冷却(アイシング):痛みや熱感がある部分を、氷のうや保冷剤をタオルで包んだもので1回15分程度、1日に数回冷やします。炎症を抑え、痛みを和らげる効果があります。この時期に温めたり、揉んだりするのは絶対にやめましょう。

ステップ2:慢性期のセルフケアと治療(痛みが和らいだら)

痛みのピークが過ぎたら、今度は少しずつ血行を促進し、硬くなった筋肉をほぐしていきます。

  • 温熱療法:蒸しタオルやシャワー、ぬるめのお風呂で首周りを心地よく温め、血行を改善します。
  • 薬物療法:痛みが続く場合は、医師の処方のもと、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の飲み薬や貼り薬(湿布)、筋肉の緊張を和らげる筋弛緩薬などが用いられます。
  • 物理療法:病院のリハビリテーション科で、温熱、低周波、牽引などの治療を受けることもあります。
  • 運動療法(リハビリテーション):専門家の指導のもと、首周りの筋肉の柔軟性を取り戻し、再発しにくい体を作るためのストレッチや筋力強化を行います。以下に、ご自宅でもできる優しいストレッチをご紹介します。

【注意】 ストレッチは、必ず痛みが和らいでから、「痛気持ちいい」と感じる範囲で行ってください。少しでも痛みが増す場合はすぐに中止しましょう。

自分でできる、痛みが和らいだ後の優しいストレッチ

首の横側(僧帽筋上部)のストレッチ

  1. 椅子に座り、背筋を軽く伸ばします。
  2. 右手で椅子の座面の端を持ち、体が傾かないように固定します。
  3. 左手を頭の右側に置き、ゆっくりと左側に頭を倒していきます。
  4. 右の首筋が心地よく伸びているのを感じながら、20秒間キープします。深い呼吸を繰り返しましょう。
  5. ゆっくりと頭を元に戻し、反対側も同様に行います。

首の後ろ側(肩甲挙筋)のストレッチ

  1. 背筋を伸ばして椅子に座ります。
  2. ゆっくりと右を向き、次に顎を引いて斜め下を向きます。
  3. 左手を頭の後ろに添え、斜め左下方向に優しく引きます。
  4. 右の首の後ろ側がじんわりと伸びるのを感じながら、20秒間キープします。
  5. ゆっくりと頭を元に戻し、反対側も同様に行います。

治療期間と予後

ほとんどの寝違えは、適切な対処をすれば1〜2週間で日常生活に支障がないレベルまで改善します。しかし、症状が長引く場合や、しびれなどを伴う場合は、背景にある別の病気の治療が必要になることもあります。焦らず、医師と相談しながら一歩一歩治療を進めることが大切です。

【決定版】今日から始める、寝違えを繰り返さないための生活習慣

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つらい寝違えを繰り返さないためには、治療だけでなく、日々の生活習慣を見直すことが何よりも重要です。ここでは、今日からすぐに実践できる具体的な工夫をご紹介します。

1. 睡眠環境の最適化

一日の3分の1を過ごす睡眠環境は、首の健康に最も影響します。

  • 枕の選び方と調整法:理想は、仰向けで寝たときに首の自然なカーブ(S字)が保たれ、横向きで寝たときに首から背骨が一直線になる高さの枕です。なかなか合う枕が見つからない場合は、玄関マットやバスタオルを重ねて、自分に合う高さを探してみましょう。数ミリ単位の調整で、驚くほど首が楽になります。
  • マットレスの重要性:適度な硬さがあり、スムーズに寝返りが打てるマットレスを選びましょう。体が沈み込みすぎる柔らかいものは、寝返りを妨げ、首への負担を増やします。
  • 寝るときの姿勢:うつ伏せ寝は首を大きく捻った状態が続くため、最も避けるべき姿勢です。できるだけ仰向けか横向きで寝るように心がけましょう。

2. 日中の姿勢と動作の改善

日中の「首への借金」を溜めないことが、朝の破綻を防ぎます。

  • PC・スマホとの付き合い方:パソコンのモニターは目線がやや下がるくらいの高さに調整し、ノートPCの場合はスタンドを使うと効果的です。スマートフォンは、意識して顔の高さまで持ち上げて操作しましょう。30分に一度は画面から目を離し、遠くを見るようにするだけでも首の緊張が和らぎます。
  • 家事の際の工夫:掃除機をかけるときは、腰を曲げるのではなく、少し膝を曲げて体全体で動くように意識します。キッチンでの作業も、台が低い場合は少し足を開いて高さを調整するなど、前かがみの姿勢が続かないようにしましょう。
  • バッグの持ち方:いつも同じ側の肩にショルダーバッグをかけていませんか?時々持ち替える、あるいはリュックサックを利用するなどして、片方の肩だけに負担が集中しないようにしましょう。

3. 心と体のリフレッシュ習慣

  • 心と体の緊張を解きほぐす時間も、大切な予防策です。
  • 質の良い入浴:38〜40度のぬるめのお湯に15分ほどゆっくり浸かりましょう。首までしっかり温めることで血行が促進され、筋肉がリラックスします。好きな香りの入浴剤を使うのもおすすめです。
  • 就寝前のリラックスルーティン:寝る1時間前にはスマホやテレビを消し、照明を少し暗くして、穏やかな音楽を聴いたり、カフェインの入っていないハーブティーを飲んだりして、心身を睡眠モードに切り替えましょう。
  • 簡単な呼吸法:椅子に座って、あるいは仰向けに寝て、ゆっくりと鼻から息を吸い、口から細く長く吐き出します。この腹式呼吸を5分ほど続けるだけで、自律神経が整い、心身のリラックスにつながります。

よくある質問(FAQ)

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Q1: 寝違えてしまったら、冷やすべき?温めるべき?

A: 発症直後で熱っぽくズキズキ痛む「急性期」(目安は1〜2日)は、炎症を抑えるために冷やしてください。その後、痛みが少し落ち着いてきて、筋肉の張りが気になる「慢性期」には、血行を良くするために温めるのが効果的です。

Q2: どんな枕を使えば寝違えを防げますか?

A: 理想的な枕は、仰向けに寝たときに首のカーブを自然に支え、横向きに寝たときに背骨がまっすぐになる高さのものです。素材の好みもありますが、通気性が良く、頭が沈み込みすぎないものがおすすめです。タオルケットなどで微調整しながら、ご自身の「シンデレラフィット」を探してみてください。

Q3: 寝違えを繰り返すのですが、なぜでしょうか?

A: 繰り返す寝違えは、合わない寝具、日常的な姿勢の悪さ(特にスマホ首)、ストレス、運動不足などが複合的に絡み合っているサインです。また、加齢による変形性頸椎症など、首の骨や関節に原因が隠れている場合もありますので、たかが寝違えと軽視せず、一度整形外科で根本的な原因を調べてもらうことを強くお勧めします。

Q4: 痛いのですが、ストレッチをしても良いですか?

A: 痛みが強い急性期に無理にストレッチをすると、炎症を起こしている筋肉をさらに傷つけ、回復を遅らせる危険があります。絶対にやめましょう。この記事で紹介したストレッチは、あくまで痛みが和らいでから、慎重に始めるようにしてください。

Q5: 病院ではどんな治療をするのですか?

A: まずは問診や身体検査で診断し、痛みを和らげるための湿布や飲み薬を処方することが一般的です。症状によっては、リハビリテーション(運動療法や物理療法)を行ったり、痛みが非常に強い場合には神経ブロック注射を検討したりすることもあります。患者さんの状態に合わせたさまざまな選択肢があります。

Q6: 寝違えに効くツボはありますか?

A: 東洋医学では「落枕(らくちん)」というツボが寝違えに効果があると言われています。手の甲側、人差し指と中指の骨が交わる少し手前のくぼみにあります。ただし、痛みが強いときは刺激せず、あくまで心地よい範囲で優しく押してみる程度にしてください。

Q7: 子どもや若い人も寝違えるのですか?

A: はい、寝違えは年齢に関わらず誰にでも起こります。しかし、50代・60代になると、加齢による筋肉や関節の変化により、治るまでに時間がかかったり、より頻繁に繰り返したりする傾向があります。若い頃の感覚で無理をしないことが大切です。

Q8: 寝違えと「ぎっくり首」は同じですか?

A: 一般的に、朝起きたときの首の痛みを「寝違え」、日中の何らかの動作(重いものを持ち上げる、急に振り向くなど)で急に首を痛めた場合を「ぎっくり首」と呼び分けることが多いですが、医学的にはどちらも首まわりの筋肉や靭帯の急な損傷であり、本質的には似た状態と言えます。

Q9: 痛みを早く治すために、自分でできることはありますか?

A: まずは安静が第一です。痛む方向へ無理に首を動かさないようにしましょう。急性期には冷やし、痛みが和らいだら温めるのが基本です。また、タンパク質やビタミンなど、筋肉の修復を助ける栄養バランスの良い食事を心がけ、体の回復力を内側から高めることも大切です。

Q10: 寝違えだと思っていたら、違う病気の可能性はありますか?

A: はい、可能性はあります。特に、手足のしびれ、激しい頭痛、めまい、歩行障害などを伴う場合は、頸椎椎間板ヘルニア、脊髄の病気、あるいは脳血管障害などの重篤な病気も考えられます。いつもと違う、何かおかしいと感じたら、自己判断せずにすぐに医療機関を受診してください。

Q11: 整体やカイロプラクティックに行っても良いですか?

A: 痛みが強い急性期に、安易なマッサージや矯正を受けるのは症状を悪化させる可能性があります。まずは整形外科で正確な診断を受けることを優先してください。

その上で、治療の一環として検討する場合は、施術者の資格(JCRやJAC※への登録状況など)、経験、施術方針などを十分に確認し、納得できる施術者を選ぶようにしましょう。不安な場合は、医師に相談することも有効です。
※JCR…日本カイロプラクティック登録機構、JAC…日本カイロプラクターズ協会
 

Q12: 寝違えに良い食べ物や栄養素はありますか?

A: 特定の食べ物で治るわけではありませんが、回復を助ける栄養素はあります。筋肉の材料となるタンパク質(肉、魚、大豆製品)、血行を促進するビタミンE(ナッツ、アボカド)、神経の働きを助けるビタミンB群(豚肉、玄米)などを意識して摂ると良いでしょう。バランスの取れた食事が、回復の土台となります。

Q13: 旅行先(飛行機や新幹線)で寝違えないためのコツはありますか?

A: 長時間同じ姿勢になりがちな旅行中は、ネックピローを上手に活用するのがおすすめです。首が左右や前に倒れすぎないように支えてくれます。また、30分〜1時間に一度は首をゆっくり回したり、肩を上げ下げしたりして、筋肉が固まらないように意識的に動かすことが大切です。

まとめ

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大切なポイント

  • 寝違えは首の筋肉の炎症。まずは安静にし、急性期は冷やすことが鉄則です。
  • 50代からは、加齢や長年の生活習慣が原因で繰り返しやすいと心得、根本改善を目指しましょう。
  • 枕やマットレスを見直し、スマホとの付き合い方を改めることが、一番の予防策です。
  • 痛みが和らいだ後の優しいストレッチを習慣にし、しなやかな首を保ちましょう。
  • 長引く痛みやしびれは放置せず、必ず整形外科で専門家の診断を受けてください。

朝、目が覚めた瞬間の「あっ…」という感覚。首に走る鋭い痛みで一日が始まるのは、本当に憂鬱ですよね。50代60代になると、体のあちこちから「少し無理してるよ」「もっと自分を大切にして」というサインが送られてくるようになります。

この繰り返す寝違えも、もしかしたら「少し休んで」「スマホばかり見ていないで、もっと遠くの景色を見つめてみて」という、体からのメッセージかもしれません。つらい痛みを一人で抱え込まず、これを機にご自身の体と生活を優しく見つめ直すきっかけにしていただけたなら、うれしいです。


健康に関するご相談は最寄りのかかりつけ医へ
この記事の健康情報は一般的な内容です。ご自身の症状や体調について心配なことがある場合は、必ずかかりつけ医にご相談ください。

適切な診断・治療には専門医による個別の判断が不可欠です。自己判断せず、まずは信頼できる医師にお話しすることをおすすめします。

かかりつけ医について詳しく知る(厚生労働省)

 

監修者プロフィール:三河聡志さん

三河聡志さん

2023年5月 みかわ整形外科クリニックを開院。「楽しく元気に」を合い言葉に職員一丸となり、治療に取り組んでいる。診療の中心は整形外科であり、関節の痛み、打撲や骨折等の怪我、交通事故、労災などに対応しており、患者層は乳幼児から100歳を超える高齢者まで幅広い。

 

 

HALMEK up編集部
HALMEK up編集部

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