生理前のイライラの対処法は?原因・治療法・よくある質問【医師監修】

生理前のイライラの対処法は?原因・治療法・よくある質問【医師監修】

公開日:2025年09月26日

生理前のイライラの対処法は?原因・治療法・よくある質問【医師監修】
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PMSの代表的な症状といわれる「生理前のイライラ」でお悩みの50代以上の女性のみなさんへ。この記事では、沢岻美奈子女性医療クリニック・押切佳代医師の監修のもと、生理前のイライラの原因と対処法について分かりやすくお伝えいたします。

押切佳代
監修者
押切佳代
監修者 押切佳代 沢岻美奈子女性医療クリニック

この記事3行まとめ

✓生理前のイライラはPMSの代表的な症状で、ホルモンバランスの乱れが原因です。
✓50代以上になると更年期への移行期と重なり、症状が変化しやすいので注意が必要です。
✓セルフケアで改善しない場合は、婦人科や心療内科への相談をおすすめします。

生理前のイライラとは?

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生理前になると、どうしようもなくイライラしたり、普段なら気にならないような些細なことで感情が爆発してしまったり…。そんな経験はありませんか? この、月に一度やってくる心の嵐は「月経前症候群(PMS)」の代表的な症状の一つです。

特に50代以上の女性は、閉経に向けてホルモンバランスが大きく揺らぎ始める「更年期」の入り口に立っています。そのため、これまで感じていたPMSの症状が強くなったり、逆に軽くなったり、あるいはこれまでとは違う症状が現れたりと、変化を感じやすい時期でもあります。

「もう若くないから」「みんな同じ」と一人で抱え込まず、まずはご自身の心と体の声に耳を傾け、正しい知識を持つことが、健やかな毎日を取り戻すための第一歩です。

よく見られる身体的症状

イライラという心の症状だけでなく、体にもさまざまなサインが現れることがあります。50代以上の女性からは、以下のようなお悩みをよく伺います。

  • 乳房の張りや痛み:下着が触れるだけで痛む、張って重たい感じがする。
  • 下腹部の張り・痛み:ズーンと重い痛みや、きゅっと締め付けられるような痛み。
  • 頭痛・腰痛:いつものこと、と諦めてしまいがちな慢性的な痛み。
  • むくみ:夕方になると指輪がきつくなる、靴下の跡がくっきり残る。
  • 肌荒れ・にきび:急に吹き出物ができたり、肌がくすんで化粧ノリが悪くなったりする。
  • 異常な眠気やだるさ:日中、急に強い眠気に襲われる、体が鉛のように重く感じる。
  • 食欲の変化:無性に甘いものが食べたくなったり、逆にお腹が空かなかったりする。

心理的な変化

心の変化は、ご自身でもコントロールが難しく、自己嫌悪に陥ってしまう方も少なくありません。

  • 情緒不安定:ささいなことで涙が出たり、急に不安になったりする。
  • 気分の落ち込み、うつ:何をするのも億劫で、好きだったことさえ楽しめない。
  • 怒りっぽくなる、攻撃的になる:家族やパートナーに対して、ついキツイ言葉を投げてしまう。
  • 集中力の低下:仕事や家事に集中できず、ミスが増える。

厚生労働省の関連研究(2023年~2024年)によれば、月経のある日本人女性の約70~80%が、生理前に何らかの心や体の不調を感じています。そのうち、日常生活に支障をきたすほどの強い症状を持つ方は約5.4%と報告されています。

さらに、働く女性を対象とした調査では、PMSによって「元気な時と比べて仕事のパフォーマンスが半分以下になる」と回答した人が45%にものぼりました。このことからも、生理前の不調が、決して「気のせい」や「甘え」ではなく、多くの女性が直面している深刻な問題であることがわかります。

生理前に生じるイライラの原因とメカニズム

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主な原因

なぜ、生理前になるとイライラしてしまうのでしょうか。その原因は一つではなく、複数の要因が複雑に絡み合っていると考えられています。

1. 生理学的要因

もっとも大きな原因は、女性ホルモンの急激な変動です。排卵後から生理が始まるまでの「黄体期」には、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という2つの女性ホルモンの分泌量が大きく変わります。

このホルモンの波が、脳内の神経伝達物質に影響を与えます。特に、精神を安定させる働きのある「セロトニン」が減少することが、イライラや気分の落ち込みを直接的に引き起こすと考えられています。

2. 環境的要因

50代以上の女性は、仕事での責任、親の介護、子どもの独立など、家庭や社会における役割が大きく変化する時期です。こうした環境の変化が知らず知らずのうちにストレスとなり、ホルモンバランスの乱れに拍車をかけ、症状を悪化させることがあります。

3. 心理社会的要因

「女性はこうあるべき」「母として、妻として完璧でなければ」といった社会的なプレッシャーや、ご自身の中に根付いた価値観が、自分を追い詰めてしまうことも。また、更年期への不安や、体力の衰えに対する焦りが、イライラを増幅させてしまうケースも少なくありません。

発症メカニズム

「生理学的要因」で触れた通り、排卵後の女性ホルモンの急激な変動が、脳機能に影響を及ぼすことが主なメカニズムです。

特に、幸せホルモンとも呼ばれる「セロトニン」の低下は、気分のコントロールを難しくさせます。セロトニンが不足すると、ささいなことで不安になったり、イライラしやすくなったりするのです。このセロトニンの働きは、女性ホルモンと密接に関連しているため、ホルモンバランスが乱れる生理前は、特に影響を受けやすい状態にあると言えます。

リスク要因

以下のような方は、PMSの症状が強く出やすい傾向があると言われています。予防のためにも、ご自身の生活習慣を振り返ってみましょう。

  • ストレスを溜めやすい方
  • 完璧主義で真面目な性格の方
  • 食生活が乱れがちな方(特にビタミン・ミネラル不足)
  • 運動習慣がない方
  • 喫煙・過度な飲酒習慣がある方
  • 過去にうつ病や不安障害と診断されたことがある方

更年期と生理前のイライラ:50代以上の女性が知っておくべきこと

タカス / PIXTA

50代前後の女性にとって、生理前のイライラは、更年期の不調と見分けがつきにくく、より複雑に感じられるかもしれません。この時期特有の心と体の変化について理解を深めましょう。

PMSと更年期症状、どう違うの?

一番大きな違いは、症状が現れるタイミングです。

  • PMS:生理が始まると症状が和らぐ、あるいは消えるのが特徴です。症状に「周期性」があります。
  • 更年期症状:生理の周期とは関係なく、ほぼ毎日、あるいは断続的に不調が続きます。

イライラや気分の落ち込み、頭痛、だるさなど、両者には共通する症状も多くあります。ご自身の症状がいつ現れ、いつ消えるのかを日記につけておくと、見分ける助けになります。

症状が重なり、つらさが増す「重複期間」

更年期への移行期である「プレ更年期」(40代半ば~)には、PMSの症状が悪化したり、これまでなかった更年期のような症状が現れたりすることがあります。これは、長年のホルモンの波に加えて、加齢によるエストロゲンの全体的な減少が始まることで、ホルモンバランスがさらに不安定になるためです。

「生理前もつらいし、それ以外の時期もなんだか不調…」という状態は、まさにこの重複期間のサインかもしれません。一人で判断せず、専門医に相談することが大切です。

どんな心構えでいればいい?

この時期は、人生の中でも特にホルモンの変動が激しい「嵐の時期」だと理解することが、まず大切です。「自分のせいではない」と知るだけで、少し心が軽くなるはずです。そして、完璧を目指さず、心と体を休ませることを最優先に考えましょう。信頼できるかかりつけ医を見つけ、変化する体調についていつでも相談できる体制を整えておくことも、大きな安心につながります。

診断方法と受診について

ふみ / PIXTA

次に、受診する場合の流れについて説明します。

いつ受診すべきか

セルフケアを試しても改善しない、イライラがコントロールできずに人間関係に影響が出ている、気分の落ち込みが激しく日常生活に支障が出ている、など、ご自身で「つらい」と感じる場合は、我慢せずに専門家へ相談しましょう。特に以下のような症状が見られる場合は、早めに医療機関を受診することをおすすめします。

  • イライラや怒りの感情が爆発し、人間関係を損なうことが増えた
  • 涙が止まらなくなったり、強い孤独感に襲われたりすることがある
  • 仕事や家事に集中できず、ミスが続いてしまう
  • 身体的な症状(頭痛、腹痛など)がひどく、寝込んでしまうことがある

診断の流れ

多くの場合、診断は問診から始まります。

1. 問診で確認すること

医師は、診断の手がかりを得るために、以下のような質問をします。ご自身の言葉で、ありのままを伝えてください。

  • どのような症状が、いつから現れますか? (生理の何日前から、何日間くらい続くか)
  • 生理が始まると、症状は軽くなりますか?
  • 症状によって、日常生活にどのような支障がありますか? (仕事、家事、人間関係など)
  • 過去の病歴や、現在服用している薬はありますか?
  • 食生活や運動習慣、睡眠時間について

2. 身体検査

必要に応じて、内診や経腟超音波検査で、子宮や卵巣に他の病気が隠れていないかを確認することがあります。プライバシーには最大限配慮されますので、リラックスして受けてくださいね。

3. 代表的な検査例

PMSは、症状の現れ方から診断されるため、確定診断のための特別な検査はありません。しかし、他の病気の可能性を排除するために、血液検査でホルモン値や甲状腺機能などを調べることがあります。

受診時の準備

受診する際は、事前に症状日記をつけることを強くおすすめします。「いつから、どんな症状が、どのくらいの強さで現れ、いつ消えるのか」を2~3か月記録しておくと、医師が状態を正確に把握しやすくなり、スムーズな診断につながります。基礎体温も併せて記録すると、排卵の有無やホルモンバランスの状態がより分かりやすくなります。

受診すべき診療科

まずは婦人科を受診するのが一般的です。婦人科では、ホルモン療法などPMSに特化した治療が受けられます。もし、イライラや気分の落ち込みといった精神的な症状が特に強い場合は、心療内科や精神科も選択肢となります。かかりつけの婦人科医に相談し、適切な専門医を紹介してもらうのも良いでしょう。どこに相談すればよいか分からない場合は、お住まいの自治体の保健所や女性健康支援センターに問い合わせてみるのも一つの方法です。

生理前のイライラの治療法

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治療方針の決定

治療は、画一的なものではなく、一人ひとりの症状の強さやライフスタイル、そしてご本人の希望を丁寧に聞き取りながら、医師と相談して決めていきます。「薬は使いたくない」「漢方を試してみたい」といったご希望も、遠慮なく伝えてみましょう。

薬物療法

症状が重く、日常生活に大きな支障が出ている場合には、薬物療法が検討されます。

  • 低用量経口避妊薬(LEP/OC・ピル):排卵を抑制し、女性ホルモンの変動を穏やかにすることで、症状を根本から改善します。PMS治療の第一選択となることが多い薬です。
  • 漢方薬:体全体のバランスを整えることで、心と体の不調を和らげます。PMSのイライラに対しては、主に以下の3つの漢方薬が体質に合わせて処方されます。
  • 加味逍遙散(かみしょうようさん):比較的体力があり、のぼせや肩こり、疲れやすさ、精神不安などを伴う方におすすめです。気分のムラやイライラを鎮め、血行を促進する働きがあります。
  • 抑肝散(よくかんさん):神経が高ぶり、怒りっぽくなっている方、歯ぎしりや不眠などの症状がある方に用いられます。文字通り「肝(感情の高ぶり)」を抑え、神経の興奮を鎮める効果が期待できます。
  • 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):体力がなく、冷え性で貧血傾向のある、いわゆる「虚弱体質」の方に適しています。体を温めて血行を改善し、ホルモンバランスを整えることで、イライラだけでなく、むくみやめまいなどの身体症状にも効果的です。
  • 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI):抗うつ薬の一種で、脳内のセロトニン濃度を高めることで、イライラや気分の落ち込みを改善します。特に精神症状が強いPMDD(月経前不快気分障害)の場合に有効です。

注意: これらの薬は、必ず医師の診断と処方のもとで使用してください。自己判断で服用を開始したり、中断したりすることは大変危険です。

非薬物療法

薬を使わない治療法としては、カウンセリングなどの心理療法があります。認知行動療法などを通じて、ストレスへの対処法を学んだり、物事の受け止め方を調整したりすることで、気分の波をコントロールしやすくなることがあります。

注意: 専門的な知識を持つカウンセラーや臨床心理士のもとで行うことが重要です。まずは医師に相談してみましょう。

治療期間と予後

治療期間は、症状の重さや治療法によって異なります。低用量ピルや漢方薬は、効果を実感するまでに2~3か月かかることが一般的です。治療によって多くの方の症状は改善しますが、閉経を迎えるまでは、ホルモンバランスの変化に伴い、症状が変化する可能性があります。長期的な視点で、上手に付き合っていくという心構えも大切です。

予防法と日常生活での注意点

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一次予防(発症予防)

PMSを完全に予防することは難しいですが、症状を軽くするためにできることはたくさんあります。

  • バランスの取れた食事:大豆製品(イソフラボン)、乳製品(カルシウム)、ナッツ類(マグネシウム)、青魚(ビタミンB6)などを意識的に食事に取り入れましょう。
  • 適度な運動習慣:週に3回、30分程度のウォーキングから始めてみませんか。
  • ストレスマネジメント:趣味の時間を持つ、アロマテラピーを取り入れるなど、自分なりのリラックス法を見つけましょう。

二次予防(早期発見・早期治療)

「これってPMSかな?」と感じたら、まずは症状日記をつけてみることから始めましょう。自分の心と体のリズムを知ることが、早期発見と適切な対処につながります。そして、つらいと感じたら、決して一人で抱え込まず、早めに専門医に相談することが重要です。

セルフケアで心を穏やかに保つ工夫

生理前の不調が出やすい時期は、「無理をしない」と決めてしまうのも一つの知恵です。ここでは、ご自身でできる具体的なセルフケアをご紹介します。

  • 食事で心を満たす:イライラすると、つい甘いものや脂っこいものに手が伸びがちですが、血糖値の乱高下はさらなる気分のムラを招きます。心と体を穏やかにする食材を選びましょう。
  • トリプトファンを摂る:精神を安定させるセロトニンの材料となる必須アミノ酸です。豆腐・納豆・味噌などの大豆製品、チーズ・牛乳などの乳製品、バナナ、ナッツ類に多く含まれます。
  • GABA(ギャバ)を意識する:興奮を鎮める働きのある神経伝達物質です。発芽玄米やトマト、かぼちゃなどに含まれています。
  • 温かい飲み物で一息:白湯やハーブティーは、内臓から体を温め、リラックス効果を高めます。カモミールティーやジンジャーティーなどがおすすめです。
  • 軽い運動で気分転換:体を動かすことは、血行を促進し、気分を前向きにするセロトニンの分泌を促します。激しい運動は必要ありません。
  • 深呼吸を意識したストレッチ:朝起きた時や寝る前に、ゆっくりと筋肉を伸ばしましょう。特に股関節周りをほぐすと、骨盤内の血流が良くなり、生理前の不快感を和らげる効果も期待できます。
  • 15分の散歩:太陽の光を浴びることは、セロトニンの生成に不可欠です。昼休みなどに少し外に出て、リズミカルに歩くだけでも気分が変わります。
  • 腹式呼吸:イライラが高まってきたら、静かな場所で目を閉じ、お腹を意識した深い呼吸を繰り返します。「4秒かけて吸い、8秒かけてゆっくり吐き出す」を数回行うだけで、副交感神経が優位になり、心が落ち着きます。
  • 五感を使ってリラックス:自分を労わる時間を持つことは、何よりの薬になります。
  • 香りの力(アロマテラピー):ラベンダーやカモミール、ベルガモットなどの精油は、リラックス効果が高いことで知られています。ティッシュに1滴垂らして香りを嗅いだり、アロマディフューザーを使ったりしてみましょう。
  • 肌触りの良いものに触れる:お気に入りのブランケットにくるまる、肌触りの良いパジャマを着るなど、心地よい感触は安心感をもたらします。
  • 好きな音楽を聴く:ゆったりとしたクラシックや、自然の音(川のせせらぎ、鳥の声など)は、心を穏やかにしてくれます。

家族・周囲のサポート

ご家族やパートナーに、「生理前は心と体が不安定になりやすい」ということを、穏やかな時に伝えておくことが大切です。「この時期はそっとしておいてほしい」「少し家事を手伝ってもらえると助かる」など、具体的にどうしてほしいかを伝えることで、無用な衝突を避けられます。PMSに関する正しい情報を共有することも、理解を深める助けになります。

よくある質問(FAQ)

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Q1: 生理前のイライラはいつから始まり、いつまで続くのですか?

A: 一般的に、生理が始まる3~10日前から症状が現れ、生理が始まるとともに軽快、または消失するのが特徴です。50代に近づくと、この期間や症状の出方が変わってくることもあります。ご自身のパターンを把握するために、症状日記をつけてみることをおすすめします。

Q2: イライラがひどすぎて、病気ではないかと心配です。

A: イライラや気分の落ち込みといった精神的な症状が特に強く、日常生活や人間関係に深刻な支障をきたしている場合、「月経前不快気分障害(PMDD)」という治療が必要な状態の可能性があります。これはPMSの一種ですが、より精神症状が重いものを指します。自己判断せず、一度婦人科や心療内科で相談してみてください。

Q3: どんな食べ物がイライラに効果がありますか?

A: 特定の食品だけで完全に改善するわけではありませんが、症状緩和に役立つ栄養素はあります。豆腐や納豆などの大豆製品に含まれる「イソフラボン」は女性ホルモンと似た働きをします。また、精神を安定させるカルシウム(乳製品、小魚)、マグネシウム(ナッツ、海藻)、ビタミンB6(カツオ、マグロ)を意識して摂ると良いでしょう。逆に、カフェインやアルコール、甘いものの摂りすぎは控えることをおすすめします。

Q4: 漢方薬は効果がありますか?副作用が心配です。

A: 漢方薬は、多くの方のPMS症状緩和に効果が期待できます。体全体のバランスを整えることで、心と体の両方に働きかけるのが特徴です。医師が体質や症状に合わせて処方しますので、一般的に副作用は少ないとされていますが、まれに合わない場合もあります。気になることがあれば、処方してくれた医師や薬剤師にすぐに相談しましょう。

Q5: 低用量ピルを飲むことに抵抗があります。他に方法はありますか?

A: 低用量ピルは非常に有効な治療法ですが、抵抗があるお気持ちもよく分かります。その場合は、まず漢方薬や、食事・運動といった生活習慣の改善から試してみるのが良いでしょう。また、カウンセリングなども有効な場合があります。どのような治療法を選ぶか、医師とよく相談して、ご自身が納得できる方法を見つけていきましょう。

Q6: 運動が良いと聞きますが、どんな運動をすれば良いですか?

A: 激しい運動は必要ありません。ウォーキングや軽いジョギング、サイクリングといった有酸素運動がおすすめです。血行が良くなり、気分転換にもなります。また、心と体をリラックスさせるヨガやストレッチも効果的です。大切なのは、無理なく、楽しみながら続けることです。

Q7: 家族に理解してもらえず、辛いです。

A: とてもお辛いですね。PMSは目に見えないため、周囲に理解されにくいという側面があります。可能であれば、体調の良い時に、ご自身の症状や「この時期はこうなりやすい」ということを冷静に伝えてみましょう。この記事のような客観的な情報を見てもらうのも一つの方法です。「病気だから」と大げさに言うのではなく、「ホルモンの影響で、自分でもコントロールが難しい時がある」と伝えることで、相手の受け止め方も変わるかもしれません。

Q8: もうすぐ閉経なのに、まだ治療は必要ですか?

A: 閉経が近づくと症状がなくなる方もいますが、更年期症状と重なって、かえって不安定になる方もいらっしゃいます。閉経までの数年間を、つらい気持ちで過ごすのはもったいないことです。残りの月経期間を少しでも穏やかに過ごすために、治療という選択肢は十分価値があります。生活の質(QOL)を大切に、という視点で考えてみてはいかがでしょうか。

Q9: 病院は何科に行けば良いのでしょうか?

A: まずは婦人科への受診をおすすめします。ホルモンバランスの専門家であり、子宮や卵巣の病気がないかも含めて総合的に診てもらえます。その上で、精神的な症状が特に強い場合は、心療内科や精神科を紹介してもらうことも可能です。

Q10: このイライラと、一生付き合っていくしかないのでしょうか?

A: そんなことはありません。PMSは、正しい知識を持って適切に対処すれば、必ず症状を和らげることができるものです。また、閉経すれば、このホルモンの波からは解放されます。つらい時期は永遠には続きません。今はご自身を労り、上手に乗り切る方法を見つける時期だと考えてみてください。あなた一人ではありませんよ。

まとめ

Fast&Slow / PIXTA

大切なポイント

  • 生理前のイライラはホルモンバランスの乱れが原因で、あなたのせいではありません。
  • 治療の基本は生活習慣の見直し。食事・運動・睡眠を大切にしましょう。
  • つらい時は我慢せず、婦人科や心療内科など専門家の力を借りましょう。
  • 閉経までの期間を穏やかに過ごすために、生活の質を優先する視点も大切です。

これまで、家族のため、仕事のために、ご自身のことは後回しにして走り続けてきたのではないでしょうか。生理前の不調は、そんなあなたに「少し立ち止まって、自分を大切にして」と体が送っているサインなのかもしれません。コントロールできない感情に、ご自身を責める必要は全くありません。それは、あなたがこれまで頑張ってきた証でもあるのです。

これからは、もう少しだけご自身を甘やかして、心と体の声に耳を傾ける時間を作ってみませんか。この揺らぎの時期を上手に乗り越えた先には、きっと穏やかで新しいステージが待っていますよ。


健康に関するご相談は最寄りのかかりつけ医へ

この記事の健康情報は一般的な内容です。ご自身の症状や体調について心配なことがある場合は、必ずかかりつけ医にご相談ください。適切な診断・治療には専門医による個別の判断が不可欠です。自己判断せず、まずは信頼できる医師にお話しすることをおすすめします。

かかりつけ医について詳しく知る(厚生労働省)

監修者プロフィール:押切 佳代さん

押切 佳代さん

沢岻美奈子女性医療クリニック(兵庫県神戸市)院長。日本内科学会認定医。日本糖尿病学会専門医。ダイエット外来担当医。

HALMEK up編集部
HALMEK up編集部

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