食物繊維不足の原因は?影響・食生活改善法・よくある質問【専門家監修】

食物繊維不足の原因は?影響・食生活改善法・よくある質問【専門家監修】

公開日:2025年09月11日

食物繊維不足の原因は?影響・食生活改善法・よくある質問【専門家監修】
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しつこい便秘やお腹の張り、肌荒れ……もしかしたら食物繊維の不足が影響しているかもしれません。この記事では、管理栄養士・林安津美さんの監修のもと、食物繊維が不足することで起きる体への影響と上手に補うための方法を分かりやすくお伝えいたします

林安津美
監修者
林安津美
監修者 林安津美 たいや内科クリニック

この記事3行まとめ

✓ 食物繊維はお通じを整えるだけでなく、血糖値の上昇を穏やかにするなど大切な働きがあります。
✓ 50代以上の女性は特に意識したい栄養素。水溶性と不溶性のバランスが鍵です。
✓ いつもの食事に少しプラスする工夫で、無理なく健康的な毎日を目指しましょう。

食物繊維とは?

プラナ / PIXTA

「食物繊維」という言葉、健康診断の結果やテレビの健康番組でよく耳にしますよね。体に良いもの、というイメージはお持ちかと思いますが、具体的にどのようなものかご存じでしょうか。

食物繊維は、食べ物に含まれている成分のうち、私たちの体にある消化酵素では消化することができないものの総称です。かつては体内で消化・吸収されないため、役に立たないものと考えられていた時代もありました。しかし今では、健康を維持するために欠かせない多くの大切な役割を担っていることが分かり、「第6の栄養素」とも呼ばれるほど注目されているのです。

食物繊維には大きく分けて2つの種類があります。それぞれの特徴を知って、上手に食生活に取り入れることが、私たちの健やかな毎日に繋がります。

  • 水溶性食物繊維:その名の通り、水に溶ける性質を持つ食物繊維です。水に溶けるとドロドロとしたゲル状になり、便を柔らかくして排泄しやすくしてくれます。また、糖質の吸収を穏やかにして食後の血糖値の急な上昇を防いだり、コレステロールなどの余分な脂質を吸着して体の外に排出したりする働きもあります。果物や海藻類、大麦などに多く含まれています。
  • 不溶性食物繊維:水に溶けにくい性質の食物繊維です。こちらは胃や腸で水分を吸収して大きく膨らむのが特徴です。便のかさを増やし、腸の壁を刺激して、腸の動き(ぜん動運動)を活発にすることで、便通を促します。穀類や野菜、きのこ類、豆類などに豊富です。

50代以上になると、体の変化とともに、お通じの悩みや血糖値、コレステロール値などが気になり始める方が増えてきます。この2種類の食物繊維をバランスよく摂ることが、こうしたお悩みの解決の糸口になるかもしれません。

ここでは、食物繊維が不足することによって体に現れやすい「サイン」について見ていきましょう。

よく見られる身体的症状

食物繊維が不足すると、多くの方がまず実感するのがお通じの悩みです。

  • 便秘:不溶性食物繊維が不足すると便のかさが減り、腸への刺激が弱まるため、便が出にくくなります。また、水溶性食物繊維が足りないと便が硬くなりがちです。
  • お腹の張り:便が腸内に長く留まることで、ガスが発生しやすくなり、お腹が張って苦しく感じることがあります。
  • 肌荒れ:便秘によって腸内環境が悪化すると、悪玉菌が増え、有害物質が発生します。その有害物質が血液に乗って全身を巡り、肌荒れや吹き出物の原因となることがあります。
  • 体重の増加:食物繊維は満腹感を与えてくれるため、不足するとつい食べ過ぎてしまう傾向があります。また、血糖値の急上昇は、脂肪を溜め込みやすくする原因の一つと考えられています。

心理的な変化

一見、関係ないように思えるかもしれませんが、食物繊維の不足、特にそれが引き起こす便秘は、私たちの心にも影響を与えることがあります。

  • イライラや気分の落ち込み:お腹がすっきりしない不快感は、気分を憂鬱にさせ、イライラの原因になります。
  • 集中力の低下:腸は「第二の脳」とも呼ばれるほど、脳と密接に関係しています。腸内環境の悪化が、自律神経の乱れなどを通じて、集中力や思考力の低下を招くことも指摘されています。

毎日のお通じは、体からの大切なお便りです。もし、ここに挙げたようなサインに心当たりがあれば、それは「食物繊維が不足しているよ」と体が教えてくれているのかもしれませんね。

厚生労働省の「国民健康・栄養調査(2023年)」によると、残念ながら、ほとんどの年代の日本人において食物繊維の摂取量は目標量に達していません。

特に、食生活が変化し、穀類やいも類、豆類の摂取が減った現代では、その傾向が顕著です。

「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、1日あたりの摂取目標量を、18歳から64歳の女性で「18g以上」、65歳以上の女性で「17g以上」と定めています。しかし、実際の平均摂取量はこれを下回っているのが現状です。

特に50代以上の女性は、閉経などの影響でホルモンバランスが変化し、コレステロール値が上がりやすくなったり、代謝が落ちて太りやすくなったりと、体に様々な変化が訪れる時期です。だからこそ、食物繊維の持つ力を借りて、上手に体をコントロールしていくことが、これまで以上に大切になってくるのです。

食物繊維が不足する原因と体への影響

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では、なぜ私たちは食物繊維が不足しがちなのでしょうか。その原因と、不足が招く体への影響について、もう少し詳しく見ていきましょう。

主な原因

食物繊維が不足する主な原因は、日々の食生活の中に隠されています。

1. 食生活の欧米化

パンやパスタ、白米といった精製された炭水化物を主食とすることが増え、玄米や全粒粉パンなどの食物繊維が豊富な主食を選ぶ機会が減っています。また、肉類中心の食事は、野菜や穀類の摂取量が減り、結果として食物繊維が不足しやすくなります。

2. 加工食品の利用増加

忙しい毎日を送る中で、手軽な加工食品やインスタント食品、ファストフードに頼ることも多くなります。加工食品の多くは精製されており、食物繊維が少ないものが多く見られます。

3. 過度なダイエット

特定の食品を極端に制限するようなダイエットは、食物繊維の不足を招きがちです。特に、炭水化物を完全に抜くような方法は、食物繊維の主要な供給源である穀類やいも類を断つことになり、注意が必要です。

発症メカニズム

食物繊維が不足すると、体の中ではさまざまな変化が起こります。

まず、不溶性食物繊維が不足すると、便の材料が減るため、作られる便の量が少なくなります。便の量が少ないと、腸の壁を十分に刺激できず、腸の動きが鈍くなってしまいます。

次に、水溶性食物繊維が不足すると、便が硬くなり、腸の中をスムーズに移動しにくくなります。また、腸内の善玉菌のエサが不足するため、腸内環境が悪化し、腸内の菌バランスが乱れ、悪玉菌が相対的に増えやすくなります。

こうした状態が続くと、便が腸内に長時間とどまる「便秘」になります。便秘は、単にお腹が苦しいだけでなく、さまざまな不調の引き金となるのです。

リスク要因

以下のような生活習慣がある方は、食物繊維が不足し、便秘などの不調につながる可能性が高まります。

  • 主食が白米や食パン、うどんなど精製されたものが多い
  • 野菜や果物、海藻類をあまり食べない
  • 食事を抜いたり、簡単なもので済ませたりすることが多い
  • 外食やコンビニ食、インスタント食品の利用頻度が高い
  • 水分をあまり摂らない

ご自身の食生活を振り返ってみて、当てはまる項目はありましたか?一つでも当てはまるなら、少しだけ食事の内容を見直してみる良い機会かもしれません。

食物繊維不足による症状と受診について

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食物繊維不足は病気ではありませんが、それが原因で起こる便秘などの症状が続く場合は、一度医療機関に相談することも大切です。

いつ受診すべきか

以下のような症状が見られる場合は、単なる食物繊維不足や便秘ではなく、他の病気が隠れている可能性も考えられます。早めに医療機関を受診しましょう。

  • 便秘が何週間も続いている
  • 便秘と下痢を繰り返す
  • 市販の便秘薬を飲んでも改善しない、または飲む量が増えてきた
  • 激しい腹痛や吐き気、嘔吐がある
  • 便に血が混じる
  • 急に体重が減った

これらの症状がなくても、お通じのことで長年悩んでいる、生活に支障が出ていると感じる場合は、我慢せずに専門家に相談することをおすすめします。

診断の流れ

便秘などで医療機関を受診した場合、一般的には以下のような流れで診察が進みます。

1. 問診で確認すること

医師は、診断の手がかりを得るために、まずじっくりとお話を聞きます。いつから症状があるのか、便の状態、排便の回数や習慣、食事の内容、普段飲んでいる薬、他に病気があるかなど、詳しく質問されます。恥ずかしがらずに、ありのままを伝えることが大切です。 この後、お腹の状態を直接確認するために、身体検査を行います。

2. 身体検査

お腹を触って硬さや張り、痛みの場所などを確認する「触診」や、聴診器を当てて腸の動く音を聞く「聴診」などを行います。患者さんのプライバシーには十分に配慮しながら、丁寧に行われますのでご安心ください。 さらに詳しく調べる必要があると判断された場合は、検査に進みます。

3. 代表的な検査例

便秘の原因を調べるために、以下のような検査が行われることがあります(医師の判断により、必ずしもすべて実施するわけではありません)。

  • 血液検査:貧血や炎症の有無、甲状腺機能など、便秘の原因となる全身の病気がないか調べます。
  • 腹部X線検査:腸内の便やガスのたまり具合を確認します。
  • 大腸内視鏡検査(大腸カメラ):ポリープやがん、炎症など、腸の中に病気がないかを直接観察します。
  • 直腸指診:痔核や直腸腫瘍、便の貯留を触診で確認します。
  • 便潜血検査:大腸がんスクリーニングの一環として行われることもあります。

受診時の準備

受診する際には、以下のことをメモしておくと、医師に症状を正確に伝えやすくなります。

  • いつから、どのような症状があるか
  • 便の硬さや形、色、量
  • 排便の頻度
  • 食事の内容(特にここ1〜2週間)
  • 普段飲んでいる薬(サプリメントや漢方薬も含む)
  • これまでにかかった病気や受けた手術

日々の排便の状態を記録する「排便日誌」をつけておくと、診察がとてもスムーズになります。

受診すべき診療科

お通じの悩みで受診する場合、まずはかかりつけの内科や胃腸科、消化器内科が適しています。どこに行けばよいか分からない場合は、お住まいの自治体の保健所や、かかりつけ医に相談してみましょう。適切な医療機関を紹介してもらえます。

食物繊維の補い方と食生活の改善

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食物繊維不足を解消するには、日々の食生活を見直すことが一番の近道です。ここでは、無理なく続けられる工夫をご紹介します。

治療方針の決定

医療機関では、問診や検査の結果をもとに、まずは食事や運動といった生活習慣の改善から始めることがほとんどです。薬を使う場合でも、生活習慣の改善と並行して行うことが基本となります。医師や管理栄養士とよく相談し、ご自身のライフスタイルに合った、続けやすい方法を見つけていきましょう。

薬物療法

生活習慣の改善だけでは十分な効果が得られない場合や、症状が強い場合には、便秘薬などの薬物療法が検討されます。

市販薬も多くありますが、薬の種類によっては、長く使い続けると効き目が悪くなったり、かえって腸の動きを鈍らせてしまったりするものもあります。自己判断で使い続けず、必ず医師の診断のもと、ご自身の症状に合った薬を処方してもらうことが大切です。

非薬物療法

薬に頼る前に、あるいは薬と並行して行いたいのが、食事や運動といった非薬物療法です。特に食物繊維を意識した食事は、お通じの悩みの根本的な解決に繋がります。

  • 食事療法:食物繊維を多く含む食品を積極的に食事に取り入れます。詳しくは次の「生活習慣による管理」でご紹介します。
  • 運動療法:ウォーキングなどの適度な運動は、腸の動きを活発にし、血行を促進します。また、腹筋を鍛えることも、排便時の「いきむ力」を助けます。

生活習慣による管理

食物繊維を毎日の食事で無理なく増やすための、具体的な工夫をご紹介します。

  • 主食を見直す:白米に玄米やもち麦を混ぜる、食パンを全粒粉パンやライ麦パンに変えるなど、いつもの主食を少し変えるだけで、食物繊維の摂取量はぐっと増えます。
  • 「プラス一品」を心がける:いつもの食事に、野菜サラダや具だくさんの味噌汁、きのこのソテー、海藻の酢の物などを一品加える習慣をつけましょう。
  • 調理法を工夫する:野菜は「茹でる」「蒸す」など加熱するとカサが減り、たくさんの量を食べやすくなります。細かく刻んでスープや煮込み料理に加えるのも良い方法です。
  • おやつを賢く選ぶ:小腹が空いた時には、スナック菓子の代わりに、果物や干し芋、ナッツ類、甘栗などを選ぶと、食物繊維を補給できます。

治療期間と予後

食生活の改善は、薬のようにすぐに効果が出るものではありません。しかし、根気よく続けることで、腸内環境が少しずつ整い、お通じの悩みが根本から改善されていきます。

まずは2週間、1ヶ月と、できることから続けてみましょう。体調の変化を感じ始めると、続けるのが楽しくなってくるはずです。焦らず、ご自身のペースで取り組むことが何よりも大切です。

予防法と日常生活での注意点

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食物繊維を意識した生活は、便秘の改善だけでなく、将来の健康を守るための「予防」にも繋がります。

一次予防(発症予防)

健康なうちから食物繊維を十分に摂ることは、便秘だけでなく、肥満や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病の予防(一次予防)に繋がります。バランスの取れた食事は、健康の基本です。

二次予防(早期発見・早期治療)

もし便秘などの症状が現れたら、それを放置せず、早めに食生活を見直すことが大切です。これは、症状の悪化を防ぎ、他の病気への進展を食い止める「二次予防」になります。体の小さなサインを見逃さないようにしましょう。

日常生活の工夫

  • 水分を十分に摂る:食物繊維、特に不溶性食物繊維は、水分を吸収して膨らみます。水分が足りないと、かえって便が硬くなることがあるため、1日に1.5リットル程度を目安に、こまめに水分を補給しましょう。
  • 発酵食品をプラスする:ヨーグルトや味噌、納豆などの発酵食品は、腸内の善玉菌を増やし、食物繊維と共に腸内環境を整える助けになります。
  • 朝食を抜かない:朝、胃に食べ物が入ると、腸が動き出す「胃・結腸反射」という反応が起こり、便意を催しやすくなります。朝食を食べる習慣は、排便のリズムを作る上でとても重要です。

具体的にどのような食事をすれば良いのか、1日のモデル例をご紹介します。無理なく、ご自身の生活に取り入れられそうなところから試してみてください。

朝食

メニュー例:全粒粉パンのトースト、プレーンヨーグルト(季節のフルーツとオートミールを添えて)、温野菜サラダ(ブロッコリー、人参など)
ポイント:主食を食物繊維の多いものに。ヨーグルトで善玉菌も一緒に摂るのがおすすめです。

昼食

メニュー例(外食の場合):五目あんかけ焼きそば、または、とろろ蕎麦にほうれん草のおひたしを追加。
メニュー例(コンビニの場合):もち麦入りおにぎり、海藻と蒸し鶏のサラダ、具だくさんの味噌汁。
ポイント:麺類なら野菜や海藻がたっぷり入ったものを。コンビニではサラダや小鉢をプラスする意識を持つとバランスが良くなります。

間食

メニュー例:素焼きのアーモンド(手のひらに軽く一杯)、プルーン2〜3粒、または、蒸したさつまいも。
ポイント:甘いお菓子ではなく、素材の味を活かしたおやつを選びましょう。

夕食

メニュー例:玄米ごはん、なめこと豆腐の味噌汁、鮭の塩焼き(大根おろし添え)、ひじきの煮物、きゅうりとわかめの酢の物。
ポイント:和食は食物繊維を摂りやすい献立の宝庫です。海藻、きのこ、根菜などをバランスよく取り入れましょう。

このように、毎食少しずつ意識することで、1日の目標量に近づけることができます。

家族・周囲のサポート

ご家族の食事を作る機会が多いこの年代の女性にとって、家族の理解と協力は心強い支えになります。

「健康のために、今日からご飯に麦を混ぜてみない?」「お味噌汁の具を、きのこや海藻たっぷりにしてみたの」など、ご自身の取り組みをご家族に話してみましょう。家族みんなで健康的な食生活に取り組む、良いきっかけになるかもしれません。

よくある質問(FAQ)

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食物繊維について、皆さまからよく寄せられる質問にお答えします。

Q1: 食物繊維って、体にいいと聞くけど、結局何なのですか?

A: 食物繊維は、私たちの体では消化できない食べ物の成分です。お腹の調子を整える「お掃除役」のようなもの、と考えると分かりやすいかもしれません。便のかさを増やして出しやすくしたり、腸の中にいる良い菌(善玉菌)のエサになったりして、腸内環境を健やかに保つ働きがあります。50代からは特に気になる血糖値やコレステロールにも良い影響を与えてくれる、私たちの強い味方なんですよ。

Q2: 水溶性と不溶性があるって聞くけど、どう違うのですか?どちらを摂ればいいのでしょう?

A: 良い質問ですね。水溶性は水に溶けて便を「柔らかく」し、不溶性は水を含んで便の「かさ」を増やしてくれます。例えるなら、水溶性が潤滑油、不溶性が推進力といったところでしょうか。便秘がちで便が硬い方は水溶性を、便の量が少ないと感じる方は不溶性を意識すると良いかもしれません。でも、一番大切なのは両方をバランスよく摂ること。色々な食材を食べることで、自然とバランスが整いますよ。

Q3: 具体的にどんな効果があるのですか?お通じ以外にもいいことはありますか?

A: もちろんです。お通じの改善は最もよく知られていますが、他にも嬉しい効果がたくさんあります。食事の最初に食物繊維が豊富な野菜などを食べると、後から食べる糖質の吸収が穏やかになり、血糖値の急上昇を防いでくれます。また、コレステロールを体の外に出す手助けもしてくれます。さらに、お腹の中で膨らむので、満腹感が得やすく、食べ過ぎを防いでくれる効果も期待できるんですよ。

Q4: 1日にどれくらい摂ればいいのですか?目安と簡単な摂り方を教えてください。

A: 50代以上の女性の場合、1日に18g前後が目標とされています。でも、グラムで言われてもピンとこないですよね。簡単な目安としては、「いつもの食事にプラス2皿の野菜やきのこ、海藻料理」を意識してみてください。例えば、朝食のパンを全粒粉に変え、昼食にわかめの味噌汁を加え、夕食で野菜炒めをたっぷり食べる、といった具合です。無理なくできることから始めてみましょう。

Q5: どんな食べ物に多く含まれているのですか?手軽に摂れるものが知りたいです。

A: 食物繊維は、意外と身近な食べ物にたくさん含まれています。手軽なものでは、納豆、ごぼう、きのこ類(しめじ、えのきなど)、海藻(わかめ、ひじき)、切り干し大根などがおすすめです。果物なら、りんごやキウイ、バナナも良いですね。コンビニで選ぶなら、お惣菜のひじき煮や、おでんの大根、こんにゃくなどを選ぶと手軽にプラスできますよ。

Q6: サプリメントで摂ってもいいのですか?食事からと違うのでしょうか?

A: サプリメントは手軽で便利な選択肢の一つです。どうしても食事が偏ってしまう時などの補助として使うのは良いでしょう。ただ、食事から摂る場合は、食物繊維だけでなく、ビタミンやミネラルなど他の大切な栄養素も一緒に摂れるという大きなメリットがあります。まずは食事を基本に考えて、足りない部分をサプリメントで補う、という使い方が賢明です。

Q7: 食物繊維を摂りすぎると、逆にお腹が張るって本当ですか?

A: はい、その可能性があります。特に、普段あまり食物繊維を摂らない方が急にたくさん摂ったり、不溶性食物繊維ばかりを摂りすぎたりすると、腸内でガスが発生してお腹が張ることがあります。また、水分が不足していると便が硬くなってしまうことも。大切なのは、少しずつ量を増やしていくことと、水分をしっかり摂ることです。ご自身の体と相談しながら、心地よい量を見つけてくださいね。

Q8: 血糖値が気になるのですが、食物繊維は関係ありますか?

A: 大いに関係があります。特に水溶性食物繊維は、小腸での糖質の吸収スピードを遅らせる働きがあります。これにより、食後の血糖値が急激に上がるのを防いでくれるのです。食事の際に、まず野菜や海藻など食物繊維の多いものから食べる「ベジタブルファースト」という食べ方も、この効果を活かした方法なんですよ。

Q9: 毎日続けるのが大変…長続きするコツはありますか?

A: お気持ち、よく分かります。完璧を目指さなくて大丈夫。「今日は味噌汁に乾燥わかめを追加してみよう」「明日はご飯にもち麦を混ぜてみよう」というように、小さなことから始めてみませんか?切り干し大根や乾燥ひじき、冷凍のきのこなどを常備しておくと、使いたい時にさっと使えて便利です。楽しみながら、ゲーム感覚で「今日の食物繊維チャレンジ」をしてみるのも良いかもしれませんね。

Q10: 食物繊維を摂るようになってから、おならが気になるのですが…どうしてですか?

A: それは、腸が良い働きをしている証拠かもしれません。食物繊維は、腸内にいる善玉菌のエサになります。善玉菌が食物繊維を分解する過程でガスが発生するため、おならが増えることがあるのです。これは腸内環境が活発になっているサインとも言えます。多くの場合、続けていくうちに腸が慣れてきて、ガスの発生も落ち着いてきます。あまりに気になる場合は、一度に摂る量を少し減らして様子を見てみましょう。

まとめ

にしやひさ / PIXTA

大切なポイント

  • 物繊維は、お通じ改善だけでなく、血糖値やコレステロールにも良い影響を与える、50代からの私たちの強い味方です。
  • 水溶性・不溶性の2種類をバランスよく摂ることが、健やかな腸内環境を育む鍵となります。
  • 完璧を目指さず、いつもの食事に「プラス一品」の工夫から。無理なく続けることが何より大切です。
  • 体の不調を感じたら、一人で悩まず、かかりつけ医に相談する勇気を持ちましょう。

なんだか最近、体が重たいな、とか、すっきりしない日が増えたな、と感じることはありませんか?それはもしかしたら、これまでの人生を頑張り抜いてきたあなたの体に、少しだけ休息と栄養が必要だというサインなのかもしれません。食物繊維は、そんな私たちの体に優しく寄り添い、内側から調子を整えてくれる、まるで縁の下の力持ちのような存在。特別なことじゃなくていいんです。いつもの食卓に、彩り豊かな野菜や、滋味深いきのこ、海の恵みである海藻を少しだけ加えてあげる。そんな小さな思いやりが、明日のあなたの笑顔と元気につながっていきます。私たち自身の体を、もっと慈しみ、大切にしてあげませんか。


健康に関するご相談は最寄りのかかりつけ医へ

この記事の健康情報は一般的な内容です。ご自身の症状や体調について心配なことがある場合は、必ずかかりつけ医にご相談ください。

適切な診断・治療には専門医による個別の判断が不可欠です。自己判断せず、まずは信頼できる医師にお話しすることをおすすめします。

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監修者プロフィール:林安津美さん

林安津美さん

大学卒業後JAあいち厚生連に入職し37年間病院の管理栄養士として勤務、その間豊田厚生病院・安城更生病院の技師長として17年間在籍。2022年5月よりたいや内科クリニックへ入職。病態栄養専門管理栄養士・日本糖尿病療養指導士・腎臓病療養指導士・がん病態栄養専門管理栄養士・和漢薬膳師等の資格を生かし患者さんの思いを聴き・応え、患者目線でテーラーメイドの医療をお届けできるように努めています。