ストレートネックとは?症状・原因・治療法・よくある質問【専門家監修】

ストレートネックとは?症状・原因・治療法・よくある質問【専門家監修】

公開日:2025年09月09日

ストレートネックとは?症状・原因・治療法・よくある質問【専門家監修】
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ストレートネック(スマホ首)でお悩みの50代以上の女性のみなさんへ。この記事では、理学療法士・鍼灸師である辻端大輔さんの監修のもと、ストレートネック(スマホ首)の症状・原因・治療法についてわかりやすくお伝えいたします。

辻端大輔
監修者
辻端大輔
監修者 辻端大輔 Crossclue Physical Conditioning Office

この記事3行まとめ
✔ ストレートネックは首の自然なカーブが失われる症状で、スマートフォンやパソコンの長時間利用が主な原因
✔ 首・肩のこり、頭痛、めまい、腕のしびれなどさまざまな症状が現れ、50代以上の女性は特に注意が必要
✔ 正しい姿勢の維持、適度な運動、ストレッチなどの生活改善と必要に応じた医療機関受診が重要

ストレートネック(スマホ首)とは?その症状

shimi / PIXTA

ストレートネックは、その名の通り、本来であれば緩やかにカーブしているはずの首の骨(頸椎)が、まっすぐになってしまった状態を指します。「スマホ首」とも呼ばれるように、スマートフォンやパソコンの長時間利用が主な原因とされています。

私たちの頭の重さは、体重の約10%(約5〜6kg)もあります。うつむくだけで、首にはその何倍もの負担がかかります。この状態が続くと、首周りの筋肉が常に緊張し、頸椎の自然なカーブが失われてしまうのです。特に50代以上の女性は、加齢による筋力の低下や骨の変化も相まって、症状が出やすい傾向にあります。

よく見られる身体的症状

トレートネック(スマホ首)の症状は、首や肩のこりだけではありません。以下のような、さまざまな身体的サインが現れることがあります。

  • 首、肩、背中の慢性的なこりや痛み:最も多い症状です。マッサージをしてもすぐに元に戻ってしまうのが特徴です。
  • 頭痛:首の筋肉の緊張が頭蓋骨を締め付け、「緊張型頭痛」を引き起こします。後頭部からこめかみにかけて、重苦しい痛みが続きます。
  • めまい、吐き気:首周りの血行不良が、脳への血流に影響を与え、めまいや吐き気を催すことがあります。
  • 腕や手のしびれ:首の神経が圧迫されることで、腕や指先にしびれや痛みを感じることがあります。
  • 目の疲れ、かすみ:首の緊張は、目につながる神経や血流にも影響し、眼精疲労の原因となります。

心理的な変化

体的な不調は、心にも影響を及ぼします。原因のわからない不調が続くことで、気分が落ち込んだり、何事にもやる気が起きなくなったりすることがあります。また、痛みやめまいへの不安から、外出をためらうようになるなど、生活の質(QOL)の低下につながることも少なくありません。

厚生労働省の国民生活基礎調査(2022年度調査が最新)では、女性が訴える体の不調として「肩こり」は常に上位にあり、特に50代以降でその割合は高くなります。直接的なストレートネックの統計ではありませんが、この背景には、スマートフォンやパソコンの普及による生活習慣の変化が大きく影響していると考えられます。

ストレートネック(スマホ首)の原因とメカニズム

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要因1. 生理学的要因

  • 加齢による筋力低下:首や肩周りの筋肉が衰えると、重い頭を支えきれず、うつむき姿勢になりやすくなります。
  • 骨や椎間板の変化:加齢により、骨や椎間板が変形して、頸椎が不安定になることがあります。
  • 女性ホルモンの影響:閉経期を迎える50代以上の女性は、女性ホルモン(エストロゲン)の減少により、骨密度が低下したり、筋肉や関節の柔軟性が失われやすくなったりします。

要因2. 環境的要因

  • スマートフォンの長時間利用:最も大きな原因です。小さな画面をのぞき込む姿勢は、首に大きな負担をかけ続けます。
  • パソコン作業:デスクや椅子の高さが合っていないと、自然と前かがみの姿勢になり、ストレートネックを誘発します。
  • 家事や趣味:料理や掃除、裁縫、読書など、うつむき姿勢で行う作業はすべて原因となり得ます。

要因3. 心理社会的要因

50代以上の女性は、子育てが一段落したり、仕事で責任ある立場になったりと、ライフステージが大きく変化する時期です。知らず知らずのうちにストレスを溜め込み、体が緊張して血行が悪くなることも、症状を悪化させる一因と考えられます。

発症メカニズム

うつむき姿勢が習慣化すると、頭の重みを支えるために首の後ろから肩、背中にかけての筋肉が常に緊張した状態になります。この緊張が続くと、筋肉が硬くこわばって血行が悪くなり、痛みやこりを引き起こします。さらに、この筋肉の緊張が、本来の頸椎のカーブを前方へ引っ張り、徐々にまっすぐな状態(ストレートネック)に変形させてしまうのです。

リスク要因

  • 1日に1時間以上スマートフォンを操作する
  • 猫背である
  • デスクワークが多い
  • 枕の高さが合っていない
  • 運動習慣がない
  • 冷え性である

これらの項目に当てはまる数が多いほど、ストレートネック(スマホ首)になりやすいと言えます。

診断方法と受診について

Ushico / PIXTA

いつ受診すべきか

「ただの肩こり」と自己判断せず、以下のような症状があれば一度、整形外科を受診しましょう。

  • 首や肩の痛みが1週間以上続く
  • 頭痛やめまい、吐き気を伴う
  • 腕や手にしびれがある
  • 痛みがだんだん強くなっている
  • 夜、痛みで目が覚めることがある

診断の流れ

1. 問診で確認すること

医師は、あなたの症状や生活習慣について詳しく質問します。

  • いつから、どのような症状がありますか?
  • 痛みやこりは、どんな時に強くなりますか?
  • 1日にどのくらいスマートフォンやパソコンを使いますか?
  • 仕事や趣味、普段の姿勢について教えてください。
  • 今までにかかった病気や、飲んでいる薬はありますか?

2. 身体検査

医師が首や肩を動かしたり、触ったりして、筋肉の緊張度や骨の状態、痛みの出る場所などを確認します。

3. 代表的な検査例

通常、ストレートネックの診断に必須の検査はありませんが、他の病気の可能性を否定するために、レントゲン(X線)検査を行うことがあります。レントゲンを撮影すると、頸椎のカーブが失われ、まっすぐになっている様子を確認できます。

受診時の準備

受診の際は、いつからどのような症状があるか、どんな時に症状が強くなるかなどをメモしておくと、医師に的確に伝えることができます。また、普段使用しているお薬手帳があれば持参しましょう。服装は、首や肩周りを診察しやすいように、ゆったりとしたものがおすすめです。

受診すべき診療科

首や肩の痛み、しびれなどの症状は、まず整形外科を受診してください。お近くの整形外科クリニックや、かかりつけの病院で相談してみましょう。どこに相談すればよいかわからない場合は、お住まいの自治体の保健所や相談窓口で情報を得ることもできます。

ストレートネック(スマホ首)の治療法

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治療方針の決定

治療は、患者さん一人ひとりの症状やライフスタイルに合わせて、医師と相談しながら決めていきます。基本的には、痛みや炎症を抑えながら姿勢や生活習慣を改善し、再発を防ぐことを目指します。

薬物療法

痛みが強い場合は、炎症を抑えるための薬が処方されることがあります。

  • 消炎鎮痛薬(飲み薬、貼り薬、塗り薬):痛みや炎症を和らげます。
  • 筋弛緩薬:筋肉の過度な緊張をほぐします。

これらの薬は、あくまで一時的に症状を緩和するものです。自己判断で使い続けず、必ず医師の指示に従ってください。

物理療法・運動療法

薬物療法と並行して、以下のような治療法が行われます。

  • 理学療法(リハビリテーション):理学療法士の指導のもと、ストレッチや運動を行い、首周りの筋肉の柔軟性を取り戻し、正しい姿勢を保つための筋力を鍛えます。温熱療法や電気療法で、血行を促進し痛みを和らげることもあります。
  • 装具療法:一時的に頸椎カラーなどを使用し、首への負担を軽減することがあります。

整体や鍼灸なども有効な場合がありますが、医療機関ではないため、まずは医師に相談し、適切な治療法を選択することが大切です。

生活習慣による管理

治療の基本は、日常生活の見直しです。

  • 姿勢の改善:意識的に背筋を伸ばし、あごを引くようにしましょう。
  • 環境の調整:パソコンのモニターを目の高さに合わせる、スマートフォンは顔の高さで操作するなど、うつむき姿勢を避ける工夫を。
  • 適度な運動:ウォーキングなど、全身の血行を良くする運動を習慣にしましょう。

治療期間と予後

症状の程度によりますが、数週間から数ヶ月で改善が見られることが多いです。しかし、生活習慣が元に戻れば再発しやすいため、根気よく治療とセルフケアを続けることが重要です。

予防法と日常生活での注意点

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一次予防(発症予防)

ストレートネック(スマホ首)にならないために、最も大切なのは日々の心がけです。

  • 30分に1度は休憩:スマートフォンやパソコン作業中は、30分に1度は立ち上がって、首や肩を回すなど、軽いストレッチを行いましょう。
  • 正しい姿勢の意識づけ:壁に背中とかかとをつけて立ち、後頭部が自然に壁につく姿勢が理想です。この感覚を普段から意識しましょう。
  • 枕の見直し:高すぎる枕や柔らかすぎる枕は避けましょう。仰向けに寝たときに、首のカーブが自然なS字を描ける高さのものが理想です。タオルを使って自分に合った高さに調整するのも良い方法です。

二次予防(早期発見・早期治療)

「おかしいな」と感じたら、早めにセルフケアを始めたり、医療機関を受診したりすることが悪化を防ぎます。自分の体の声に耳を傾ける習慣をつけましょう。

日常生活の工夫

  • 体を温める:ゆっくり湯船に浸かるなどして、首や肩周りの血行を良くしましょう。
  • ストレッチの習慣化:テレビを見ながら、寝る前など、生活の中に簡単なストレッチを取り入れましょう。

おすすめ簡単ストレッチ

  • あご引き体操:背筋を伸ばし、ゆっくりとあごを引きます。首の後ろが心地よく伸びるのを感じながら5秒キープ。これを数回繰り返します。
  • タオルストレッチ:タオルの両端を持ち、首の後ろに当てます。斜め上に軽く引き上げるようにしながら、ゆっくりと首を後ろに倒し、5秒キープします。

家族・周囲のサポート

ご家族に、時々姿勢をチェックしてもらったり、肩を揉んでもらったりするのも良いでしょう。つらい症状を一人で抱え込まず、周囲に理解を求めることも大切です。

よくある質問(FAQ)

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Q1: ストレートネックは自力で治せますか?

A: 軽い症状であれば、姿勢の改善やストレッチなどのセルフケアで改善が期待できます。しかし、痛みが強い場合やしびれがある場合は、自己判断は禁物です。他の病気が隠れている可能性もあるため、一度整形外科で正確な診断を受けることをおすすめします。

Q2: どんな枕を選べば良いですか?

A: 仰向けに寝たときに、首から肩にかけてのラインが自然なS字カーブを保てる高さの枕が理想的です。一般的には、少し硬めで、頭が沈み込みすぎないものが良いとされています。バスタオルを重ねて、ご自身に合った高さを探してみるのもおすすめです。

Q3: 更年期と関係がありますか?

A: 直接的な関係はありませんが、更年期に起こる女性ホルモンの減少は、筋肉や骨の衰えにつながります。また、自律神経が乱れやすくなるため、血行不良や体の冷えが起こり、ストレートネックの症状を感じやすくなったり、悪化させたりする一因になることがあります。

Q4: どんな運動が効果的ですか?

A: 首に負担をかけないウォーキングや水泳などの有酸素運動がおすすめです。全身の血行が良くなり、筋肉の緊張がほぐれます。また、ヨガやピラティスは、正しい姿勢を意識しながら体幹を鍛えることができるので、予防や再発防止に効果的です。

Q5: 整体やマッサージに行っても良いですか?

A: 筋肉の緊張を和らげる目的で、整体やマッサージを利用するのは一つの方法です。ただし、施術を受ける際は、必ず国家資格を持つ専門家(あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師など)がいる施設を選びましょう。痛みが強い場合やしびれがある場合は、まず医療機関を受診することが先決です。

Q6: 痛いときは温めるべき?冷やすべき?

A: 慢性的なこりや痛みには、蒸しタオルや入浴で温めるのが効果的です。血行が促進され、筋肉の緊張が和らぎます。一方、寝違えのように急に痛くなった場合(急性期)は、炎症を起こしている可能性があるので、冷やして炎症を抑えるのが良いでしょう。判断に迷う場合は、医師に相談してください。

Q7: ストレートネックが原因で、他の病気になることはありますか?

A: ストレートネックが直接的な原因で重篤な病気になることは稀ですが、頭痛、めまい、吐き気、自律神経の乱れによる不調(不眠、疲労感など)を引き起こすことがあります。これらの症状が生活の質を大きく下げる可能性があるため、軽視せずに早めに対処することが大切です。

Q8: スマートフォンを使うときに気を付けることは?

A: スマートフォンを目線の高さまで上げて操作することを心がけましょう。画面をのぞき込むように首を曲げるのではなく、少し肘を上げて、画面が顔の正面に来るように持つのがポイントです。また、長時間連続して使用せず、こまめに休憩を取ることが何よりも重要です。

Q9: 良い姿勢を保つコツはありますか?

A: 耳、肩、骨盤が一直線になるように意識することです。壁に背中をつけて立ち、後頭部、肩甲骨、お尻、かかとが壁につく状態を体で覚えてみましょう。座るときは、お尻にクッションを入れるなどして、骨盤が後ろに倒れないようにすると、自然と背筋が伸びやすくなります。

Q10: この先、ずっとこの痛みと付き合っていくしかないのでしょうか?

A: 決してそんなことはありません。ストレートネックは、生活習慣を見直すことで、十分に改善・予防が可能です。時間はかかるかもしれませんが、正しい知識を持って、ストレッチや姿勢の改善に根気よく取り組めば、症状はきっと和らぎます。つらいときは一人で悩まず、専門家を頼ってくださいね。

まとめ

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この記事では、多くの50代以上の女性を悩ませるストレートネック(スマホ首)について、その原因から治療、予防法までを詳しく解説しました。

大切なポイント

  • ストレートネックは、うつむき姿勢の習慣化によって起こる現代病です。
  • 主な症状は首や肩のこりですが、頭痛、めまい、しびれなど全身に影響が及ぶこともあります。
  • 治療の基本は、姿勢の改善、ストレッチ、生活習慣の見直しです。
  • 痛みが続く、しびれがあるなど、気になる症状があれば「ただのこり」と放置せず、整形外科を受診しましょう。

長年の生活習慣を変えるのは、簡単なことではないかもしれません。しかし、ご自身の体に目を向け、少しずつでもケアを始めることが、これからの毎日を元気に、そして笑顔で過ごすための第一歩です。つらい症状を「年のせい」と諦めずに、今日からできることから始めてみませんか。

健康に関するご相談は最寄りのかかりつけ医へ

この記事の健康情報は一般的な内容です。ご自身の症状や体調について心配なことがある場合は、必ずかかりつけ医にご相談ください。

適切な診断・治療には専門医による個別の判断が不可欠です。自己判断せず、まずは信頼できる医師にお話しすることをおすすめします。

 かかりつけ医について詳しく知る(厚生労働省)

監修者プロフィール:辻端大輔さん

理学療法士、鍼灸師。Crossclue Physical Conditioning Office所属。理学療法と鍼灸を生かし、健康とパフォーマンスを支える専門トレーナー。

HALMEK up編集部
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