デトックス機能の低下とは?症状・原因・治療法・よくある質問【医師監修】

デトックス機能の低下とは?症状・原因・治療法・よくある質問【医師監修】

公開日:2025年09月09日

デトックス機能の低下とは?症状・原因・治療法・よくある質問【医師監修】
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私たちの体には汗や尿、便などと一緒に毒素を排出する機能が備わっていますが、加齢とともにその機能が少しずつ衰えてきます。この記事では日本産科婦人科学会専門医である阿部一也医師の監修のもと、デトックス機能の低下についてわかりやすくお伝えします。

阿部一也
監修者
阿部一也
監修者 阿部一也 板橋中央総合病院

この記事3行まとめ
✔ 体内に溜まった毒素や老廃物を排出し、心と体の健康を取り戻すのがデトックスです。
✔ 50代以上の女性は、加齢や生活習慣の変化から、体のデトックス機能が低下しがちです。
✔ バランスの取れた食事や適度な運動、十分な水分補給など、生活習慣を見直すことが大切です。

デトックスとは?

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50代以上の女性に知っていただきたい基本知識

デトックスとは、英語の「detoxification(解毒)」を短縮した言葉で、体の中に溜まってしまった不要なものや有害なもの、いわゆる「毒素」や「老廃物」を体の外に出すことを指します。私たちの体には、もともと汗や尿、便などと一緒に毒素を排出する機能が備わっています。

しかし、50代以上になると、加齢とともにその機能が少しずつ衰えてくることがあるのです。食生活の乱れや運動不足、ストレスなども、毒素が溜まりやすくなる原因となります。なんだか最近すっきりしない、疲れが取れにくいと感じる方は、もしかしたら体からのデトックスのサインかもしれません。

デトックスが必要なサインは、体のさまざまな部分に現れます。例えば、以下のような症状に心当たりはありませんか?

よく見られる身体的症状

  • 荒れや吹き出物:腸内環境の悪化が肌に現れることがあります。
  • むくみ:血行やリンパの流れが悪くなると、余分な水分が溜まりやすくなります。
  • 冷え:新陳代謝が低下し、体が温まりにくくなります。
  • 肩こりや頭痛:血行不良が原因で起こることがあります。
  • 便秘:腸の働きが鈍くなり、老廃物を排出しにくくなります。
  • 疲れやすい、だるい:体の機能が全体的に低下しているサインです。

これらの症状は、一つ一つは些細なことかもしれませんが、健やかな毎日を過ごす上では気になるものですよね。

心理的な変化

体の不調は、心の状態にも影響を与えます。毒素が溜まっていると、イライラしやすくなったり、気分が落ち込みやすくなったりすることがあります。集中力が続かない、なんだかやる気が出ないといったことも、体からのSOSサインかもしれません。特に50代以上の女性は、ご自身の体の変化だけでなく、ご家族のことやこれからの人生について考える機会も多く、ストレスを感じやすい時期でもあります。心と体はつながっているということを、ぜひ覚えておいてください。

厚生労働省の国民生活基礎調査(2024年)などを見ると、50代以上の女性が「疲れやすい」「肩がこる」「手足が冷える」といった自覚症状を抱えている割合は、他の年代に比べて高い傾向にあります。これらの症状は、デトックス機能の低下と関連している可能性も考えられます。直接的なデトックスに関する統計はありませんが、多くの方が感じている不調の背景に、体内に溜まった老廃物の影響があるのかもしれません。

デトックス機能低下の原因とメカニズム

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主な原因は以下の3つです。

1. 生理学的要因

加齢は、デトックス機能に影響を与える大きな要因です。年齢を重ねると、基礎代謝が低下し、血液やリンパの流れが滞りやすくなります。また、解毒の主役である肝臓や、老廃物をろ過する腎臓の機能も、若い頃に比べると少しずつ低下していきます。腸の動きも鈍くなりがちで、便秘に悩む方が増えるのもこの年代の特徴です。これらは誰にでも起こりうる自然な変化ですが、日々の生活で意識することが大切です。

2. 環境的要因

私たちの周りには、知らず知らずのうちに体に取り込んでしまう有害物質が存在します。例えば、加工食品に含まれる食品添加物、残留農薬、大気汚染物質などです。また、忙しい毎日の中で、外食やインスタント食品に頼る機会が増えると、栄養バランスが偏り、塩分や脂肪分を摂りすぎてしまうことも。こうした食生活の乱れも、体内に毒素(老廃物)を溜め込む一因となります。

3. 心理社会的要因

50代以上の女性は、仕事や家庭での役割の変化、親の介護、ご自身の健康への不安など、さまざまなストレスに直面しやすい時期です。ストレスは自律神経のバランスを乱し、血行不良や内臓機能の低下を引き起こします。その結果、体のデトックス機能がうまく働かなくなってしまうのです。リラックスする時間を見つけ、心穏やかに過ごすことも、健やかな体を保つためには欠かせません。

発症メカニズム

私たちの体には、主に5つの排出ルートがあります。便が約75%、尿が約20%、そして汗、髪、爪から残りの約5%が排出されると言われています。肝臓で有害物質を分解し、腎臓で血液をろ過して尿として排出し、腸で便にして体の外に出す。この一連の流れが、体の解毒システムです。しかし、加齢や生活習慣の乱れによってこれらの臓器の機能が低下すると、処理しきれなかった毒素や老廃物が体内に蓄積し、さまざまな不調を引き起こす原因となるのです。

リスク要因

以下のような生活習慣は、デトックス機能の低下につながる可能性があります。ご自身の生活を振り返ってみましょう。

  • 加工食品やインスタント食品をよく食べる
  • 野菜や果物をあまり食べない
  • 水分をあまり摂らない
  • 運動習慣がない
  • 湯船に漬からず、シャワーで済ませることが多い
  • 睡眠不足である
  • ストレスを溜め込みやすい

診断方法と受診について

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いつ受診すべきか

「デトックス」という言葉は医療用語ではありませんが、原因不明の体調不良が続く場合は、何らかの病気が隠れている可能性もあります。特に、急激な体重の増減、ひどいむくみ、長引く便秘や下痢、我慢できないほどの倦怠感など、日常生活に支障をきたすような症状がある場合は、自己判断せずに医療機関を受診しましょう。

診断の流れ

特定の「デトックス診断」というものはありませんが、体調不良の原因を探るために、以下のような問診や検査を行うことが一般的です。

1. 問診で確認すること
医師は、あなたの体の状態を詳しく知るために、さまざまな質問をします。

  • いつから、どのような症状がありますか?
  • 食事の内容や生活習慣について教えてください。
  • ストレスを感じることはありますか?
  • これまでにかかった病気や、現在治療中の病気はありますか?
  • 飲んでいる薬やサプリメントはありますか?

2. 身体検査

血圧測定や聴診、腹部の触診などを行い、体の状態を直接確認します。

3. 代表的な検査例

必要に応じて、血液検査や尿検査、便検査などを行います。これらの検査によって、肝臓や腎臓の機能、栄養状態、貧血の有無、炎症反応などを確認し、不調の原因を探る手がかりとします。

受診時の準備

受診する際には、いつからどのような症状があるのか、ご自身の生活習慣(食事、運動、睡眠など)や感じているストレスなどをメモにまとめておくと、医師に伝えやすくなります。また、お薬手帳や健康診断の結果などがあれば持参しましょう。

受診すべき診療科

まずは、かかりつけの内科や婦人科に相談するのがよいでしょう。症状によっては、消化器内科や内分泌内科などの専門医を紹介されることもあります。どこに相談すればよいかわからない場合は、お住まいの自治体の保健所や相談窓口で情報提供を受けることもできます。

デトックス機能低下の治療法

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治療方針の決定

前述の通り、「デトックス機能の低下」自体を病気として治療することはありません。医療機関では、問診や検査の結果に基づいて体調不良の原因を特定し、その原因に対する治療を行います。例えば、便秘であれば便通を整える薬を処方したり、栄養不足が考えられれば食事指導を行ったりします。医師は患者さんと相談しながら、一人一人の状態に合わせた治療方針を決定します。

薬物療法

症状を和らげるために、薬が処方されることがあります。例えば、便秘薬、利尿薬、漢方薬などです。ただし、これらの薬は根本的な解決策ではありません。薬に頼るだけでなく、生活習慣の改善と並行して行うことが大切です。ご自身の判断で薬を飲んだりやめたりせず、必ず医師の指示に従ってください。

非薬物療法

薬を使わない治療法としては、管理栄養士による栄養指導や、理学療法士による運動指導などがあります。専門家のアドバイスを受けながら、ご自身の生活を見直していくことが、体質改善への近道です。また、ストレスが大きな原因である場合には、カウンセリングなどが有効な場合もあります。

生活習慣による管理

デトックス機能を高めるためには、日々の生活習慣を見直すことがもっとも重要です。

  • 食事:食物繊維の多い野菜やきのこ、海藻類、発酵食品(ヨーグルト、納豆など)を積極的に摂り、腸内環境を整えましょう。
  • 水分補給:こまめに水を飲み、体内の巡りを良くしましょう。一度にたくさん飲むのではなく、1日を通して少しずつ飲むのがポイントです。
  • 運動:ウォーキングなどの軽い運動を習慣にし、血行を促進して汗をかく機会を増やしましょう。
  • 入浴:ぬるめのお湯にゆっくり浸かることで、リラックス効果と血行促進効果が期待できます。
  • 睡眠:質の良い睡眠を十分にとり、体の修復機能を高めましょう。

治療期間と予後

体質改善には時間がかかります。焦らず、根気強く続けることが大切です。生活習慣を見直すことで、少しずつ体の変化を感じられるようになるでしょう。不調が改善した後も、健康的な生活を続けることが、再発予防につながります。

予防法と日常生活での注意点

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一次予防(発症予防)

毒素を溜め込まない体づくりのためには、日頃からの予防が大切です。バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠を心がけ、ストレスを上手に発散する方法を見つけましょう。加工食品やインスタント食品はなるべく避け、旬の食材を使った手作りの食事を楽しむことも、心と体の健康につながります。

二次予防(早期発見・早期治療)

「なんだかいつもと違うな」と感じたら、それは体からのサインかもしれません。自分の体の声に耳を傾け、不調を放置しないことが大切です。定期的に健康診断を受け、ご自身の体の状態を把握しておくことも、病気の早期発見・早期治療につながります。

日常生活の工夫

日常生活の中で、手軽にできるデトックスの工夫を取り入れてみましょう。

  • 朝起きたら、まず1杯の白湯を飲む。
  • エスカレーターではなく、階段を使ってみる。
  • 寝る前に軽いストレッチをする。
  • 好きな香りのアロマを焚いてリラックスする。 

小さなことでも、続けることで大きな変化につながります。

家族・周囲のサポート

ご自身の健康について、ご家族や親しい友人と話すことも大切です。一緒にウォーキングを始めたり、健康的な食事を楽しんだりすることで、楽しみながら続けられるかもしれません。一人で抱え込まず、周りの人に理解してもらい、サポートをお願いすることも時には必要です。

よくある質問(FAQ)

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Q1: デトックスウォーターって本当に効果があるの?

A: 「デトックスウォーター」に特別な医学的・科学的根拠があるわけではありません。しかし、水分をしっかり摂ることは健康の基本です。普通のお水では味気ないと感じる方が、果物やハーブの風味で楽しく水分補給できるという点では良い工夫です。特定の効果を期待しすぎず、あくまで水分補給の一環として楽しむのが良いでしょう。もし体調で気になることがあれば、医師にご相談ください。

Q2: ファスティング(断食)に興味があります。安全なやり方は?

A: ファスティング(断食)は、消化器官を休ませるという考え方ですが、その健康効果については科学的に確立されていません。特に自己流で行うと、栄養不足や筋肉量の低下など、かえって健康を損なうリスクがあります。年齢を重ねると体の回復力も変化しますので、安易に試すことはおすすめできません。どうしても試したい場合は、必ず事前にかかりつけ医に相談し、その指導のもとで行ってください。

Q3: サプリメントを飲めばデトックスできますか?

A: 「デトックス」を謳うサプリメントで、体内の毒素を排出するという科学的根拠が示されたものはありません。健康の基本は、バランスの取れた食事です。サプリメントはあくまで補助的なものと捉え、頼りすぎるのは禁物です。特定の成分が体に良い影響を与える可能性はありますが、「飲むだけでデトックスできる」と考えるのは避けましょう。ご心配な点があれば、医師や薬剤師にご相談ください。

Q4: 汗をたくさんかけば、それだけデトックスになりますか?

A: 汗の成分のほとんどは水分であり、老廃物の排出は主に尿や便によって行われます。汗をかくことで排出される毒素や老廃物の量はごくわずかで、科学的には「汗でデトックス」の効果は限定的とされています。運動や入浴で汗をかくのは、血行促進やストレス解消にはとても良いことですが、デトックスを主目的とする必要はありません。水分補給を忘れずに行いましょう。

Q5: 「デジタルデトックス」とは何ですか?

A: これは医学用語ではありませんが、スマートフォンやパソコンから離れて心身のストレスを減らすという考え方です。情報過多な現代において、意識的にデジタル機器から離れる時間を作ることは、心の平穏を保つ上で良い試みかもしれません。しかし、それ自体が体内の毒素を排出するわけではありません。もし精神的な不調が続くようであれば、専門医への相談をおすすめします。

Q6: デトックスに良い食べ物と悪い食べ物を教えてください。

A: 特定の食べ物が「デトックスに良い・悪い」と断定できる科学的根拠は乏しいです。大切なのは、特定の食品に偏らず、多種多様な食材をバランス良く食べることです。食物繊維が豊富な野菜やきのこ、海藻類、発酵食品などを日々の食事に取り入れることは、腸内環境を整え、健康維持に繋がります。あまり神経質にならず、楽しく食事をすることが一番です。

Q7: お酒やタバコはデトックスにどう影響しますか?

A: これは「デトックス」というより、基本的な健康の問題です。アルコールの過剰摂取は肝臓に負担をかけ、タバコは多くの有害物質を体内に取り込みます。これらは体の機能を損なう明確な要因ですので、健康を考えるならお酒は適量にし、禁煙することが強く推奨されます。特別なデトックス法を考える前に、まずこれらの習慣を見直すことが先決です。

Q8: リンパマッサージはデトックスに効果がありますか?

A: リンパマッサージが老廃物の排出を促進するという考え方もありますが、その医学的根拠は十分ではありません。心地よいマッサージはリラクゼーション効果や、むくみの一時的な改善に繋がるかもしれません。しかし、それによって体内の毒素が排出されると過度に期待するのは避けましょう。強いマッサージはかえって体を痛めることもありますので、もし行うなら優しく、気持ち良い範囲で行ってください。

Q9: デトックスを始めたら、かえって体調が悪くなった気がします。

A: 「好転反応」という言葉を耳にするかもしれませんが、医学的には証明されていません。体調が悪化したのは、その方法がご自身の体に合っていないサインかもしれません。すぐにその方法を中止し、症状が続くようであれば、必ず医師に相談してください。自己判断で続けるのは危険です。

Q10: 年齢を重ねても、デトックス効果は期待できますか?

A: 「デトックス」という言葉に捉われる必要はありません。大切なのは、年齢に関わらず、バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠といった健康的な生活習慣を続けることです。私たちの体には元々、不要なものを排出する機能が備わっています。特別なことをするよりも、日々の生活で体をいたわることが、健やかな毎日に繋がります。心配なことがあれば、いつでもかかりつけ医に相談しましょう。

まとめ

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大切なポイント

  • デトックスの基本は、体内の毒素や老廃物を排出しやすい体を作ることです。
  • 治療の基本は、バランスの取れた食事、適度な運動、十分な水分補給といった生活習慣の見直しです。
  • 心と体はつながっています。ストレスを上手に解消し、リラックスする時間も大切にしましょう。
  • 原因不明の体調不良が続く場合は、自己判断せずにかかりつけ医に相談しましょう。

この記事を読んでくださっている50代以上の女性のみなさんは、これまで仕事や家事、子育てに一生懸命取り組んできました。少し立ち止まって、ご自身の体に目を向ける時間を持ってみませんか。デトックスは、単に体の中をきれいにすることだけではありません。自分自身の心と体に向き合い、いたわることで、これからの人生をより健やかに、生き生きと過ごすための大切なステップです。一緒に、すこやかな毎日を目指していきましょう。

健康に関するご相談は最寄りのかかりつけ医へ

この記事の健康情報は一般的な内容です。ご自身の症状や体調について心配なことがある場合は、必ずかかりつけ医にご相談ください。

適切な診断・治療には専門医による個別の判断が不可欠です。自己判断せず、まずは信頼できる医師にお話しすることをおすすめします。

かかりつけ医について詳しく知る(厚生労働省)

監修者プロフィール:阿部一也さん

IMSグループ医療法人社団明芳会 板橋中央総合病院 勤務。日本産科婦人科学会専門医。東京慈恵会医科大学卒業。都内総合病院産婦人科医長として妊婦健診はもちろん、分娩の対応や新生児の対応、切迫流早産の管理などにも従事。婦人科では子宮筋腫、卵巣嚢腫、内膜症、骨盤内感染症などの良性疾患から、子宮癌や卵巣癌の手術や化学療法(抗癌剤治療)も行っている。PMS(月経前症候群)や更年期障害などのホルモン系の診療なども幅広く診療している。

HALMEK up編集部
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