鼻水を止める方法とは?症状・原因・治療法・よくある質問【医師監修】
鼻水を止める方法とは?症状・原因・治療法・よくある質問【医師監修】
公開日:2025年08月29日
この記事3行まとめ
✔ 鼻水は体を守る防御反応だが、アレルギー、風邪、寒暖差、加齢による粘膜乾燥などさまざまな原因で過度になることがある
✔ 透明な鼻水から黄色や緑色に変化したら細菌感染の可能性があり、1~2週間以上続く場合は耳鼻咽喉科受診が必要
✔ 加湿、水分補給、体を温める、マスク着用など日常的なセルフケアと適切な治療が重要
鼻水を止める方法とは?
鼻水は、鼻の粘膜から出る分泌物で、ウイルスや細菌、花粉といった異物が体の中へ侵入するのを防ぐ大切な役割を持っています。いわば、体を守るための防御反応なのです。しかし、この鼻水が過剰になると、日常生活に支障をきたすこともありますよね。特に50代以上になると、若い頃とは違う原因で鼻水の悩みが増えることもあります。
よく見られる身体的症状
透明で水のような鼻水が絶えず流れてくる、くしゃみが頻繁に出る、鼻が詰まって息苦しい、といった症状が一般的です。また、鼻水が喉に流れる「後鼻漏(こうびろう)」によって、咳や痰が絡むこともあります。
心理的な変化
鼻水が気になって集中できない、ティッシュが手放せず外出が億劫になる、といった経験はありませんか。こうした不快な症状は、気分を落ち込ませたり、ストレスの原因になったりすることもあります。
厚生労働省の調査(2019年)によると、アレルギー性鼻炎の患者数は年々増加傾向にあり、多くの方が鼻に関する症状で悩んでいることがわかります。特に、成人女性においては、花粉症だけでなく、ハウスダストや寒暖差など、さまざまな原因による鼻炎が増えています。
鼻水が止まらない原因とメカニズム
1. 生理学的要因
- アレルギー性鼻炎: 花粉、ハウスダスト、ダニなどが原因で起こります。
- 血管運動性鼻炎:アレルギー反応以外でさまざまな刺激によって起こります。
- 加齢による変化: 年齢とともに鼻の粘膜が乾燥しやすくなったり、自律神経の働きが変化したりすることで、鼻水が出やすくなることがあります。
2. 環境的要因
- 寒暖差:急激な温度変化に鼻の粘膜が過敏に反応して起こります。温かい場所から寒い場所へ移動した時などに症状が出やすいのが特徴です。アレルギー反応ではありませんし、医学用語ではありませんが、「寒暖差アレルギー」とも呼ばれています。
- 乾燥: 空気が乾燥していると、鼻の粘膜が刺激されて鼻水が出やすくなります。特に冬場は注意が必要です。
- 刺激物: タバコの煙や香水、化学物質なども鼻の粘膜を刺激し、鼻水の原因となることがあります。
3. 心理社会的要因
ストレスや疲労がたまると、自律神経のバランスが乱れ、鼻の粘膜の血管が広がりやすくなります。その結果、鼻水や鼻づまりの症状が悪化することがあります。
発症メカニズム
アレルギーの場合は、原因物質(アレルゲン)が体内に入ると、それを異物と認識した体が「ヒスタミン」という物質を放出します。このヒスタミンが鼻の神経や血管を刺激し、鼻水やくしゃみを引き起こします。寒暖差などの場合は、アレルギー反応以外がきっかけで自律神経が乱れることによって、同様の症状が現れます。
リスク要因
- アレルギー体質
- 喫煙
- ストレスの多い生活
- 不規則な食生活
診断方法と受診について
次に、受診する場合の流れについて説明します。
いつ受診すべきか
市販薬を数日間試しても症状が改善しない、黄色や緑色の粘り気のある鼻水が出る、頬や額に痛みを感じる、といった場合は、耳鼻咽喉科の受診をおすすめします。
診断の流れ
1. 問診で確認されること
- いつから症状がありますか?
- どんな時に症状がひどくなりますか?(朝、夜、特定の季節など)
- 鼻水の色や粘り気はどうですか?
- 他に症状はありますか?(くしゃみ、鼻づまり、目のかゆみ、咳、熱など)
- アレルギーはありますか?
2. 身体検査
鼻の中を直接観察し、粘膜の腫れや色、鼻水の性状などを確認します。
3. 代表的な検査例
必要に応じて、アレルギーの原因を特定するための血液検査や皮膚テスト、副鼻腔炎が疑われる場合にはレントゲン検査やCT検査を行うことがあります。
受診時の準備
いつ、どのような状況で症状が出るかなどをメモしておくと、医師に正確に状態を伝えることができます。また、現在使用しているお薬があれば、その情報も持参しましょう。
受診すべき診療科
鼻の症状が中心の場合は、耳鼻咽喉科が専門です。アレルギーが原因と思われる場合は、アレルギー科でも相談できます。
鼻水を止めるための治療法(アレルギー性鼻炎の場合)
治療方針の決定
アレルギー性鼻炎の治療は、原因や症状の重さに合わせて行われます。医師と相談しながら、ご自身のライフスタイルに合った治療法を見つけていきましょう。
薬物療法
- 抗ヒスタミン薬: アレルギーによる鼻水やくしゃみを抑えます。眠気の出にくい第二世代のものが主流です。
- 点鼻薬: 鼻の粘膜の腫れや炎症を直接抑えるため、鼻づまりに効果的です。ただし、長期間使用するとかえって症状を悪化させる点鼻薬の種類こともあるため、医師の指示に従って使いましょう。
- 漢方薬: 体質改善を目指す治療として、西洋薬が合わない場合などは「小青竜湯(しょうせいりゅうとう)」などが用いられることがあります。
注意: ご自身の判断で薬の使用を中断したり、変更したりせず、必ず医師の診断と指示に従ってください。
非薬物療法
- アレルゲン免疫療法: アレルギーの原因物質を少量ずつ体内に投与し、体を慣らしていく治療法です。根本的な体質改善が期待できます。
- レーザー治療:鼻粘膜をレーザーで焼灼することによりアレルギー症状を緩和する治療です。
生活習慣による管理
バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動は、免疫力を高め、自律神経のバランスを整える上で非常に大切です。
治療期間と予後
症状や治療法によって異なりますが、根気よく治療を続けることで、多くの場合、症状をコントロールし、快適な生活を送ることが可能です。
予防法と日常生活での注意点
一次予防(発症予防)
- アレルギー対策: 花粉の飛散が多い日は外出を控える、マスクやメガネを着用する、こまめに掃除をしてハウスダストを除去するなど、原因物質を避ける工夫が大切です。
- 体調管理: 規則正しい生活を送り、免疫力を維持しましょう。
二次予防(早期発見・早期治療)
症状が軽いうちに早めにセルフケアや受診をすることで、悪化を防ぐことができます。
日常生活の工夫
- 加湿: 加湿器などを使って、部屋の湿度を50~60%に保ちましょう。
- 体を温める: 体が冷えると鼻の症状が悪化しやすくなります。温かい飲み物や食事、入浴などで体を内側と外側から温めましょう。
- 正しい鼻のかみ方: 片方ずつ、ゆっくり優しくかみましょう。強くかむと耳を痛める原因になります。
家族・周囲のサポート
つらい症状について家族に理解してもらい、掃除に協力してもらうなど、サポートをお願いすることも大切です。
よくある質問(FAQ)
Q1: 鼻水の色で健康状態がわかると聞きましたが、本当ですか?
A: はい、ある程度の目安になります。透明でサラサラした鼻水は、アレルギーや風邪のひき始めに多く見られます。一方、黄色や緑色で粘り気のある鼻水は、細菌に感染している可能性があり、副鼻腔炎(蓄膿症)なども考えられますので、軽くても1週間以上継続する場合は耳鼻咽喉科の受診をおすすめします。
Q2: 年齢とともに、鼻水が出やすくなった気がします。加齢は関係ありますか?
A: はい、関係があると考えられます。加齢により自律神経の働きが変化したり、鼻の粘膜が乾燥しやすくなったりすることで、鼻水が出やすくなることがあります。また、女性ホルモンのバランスの変化が影響することもあります。
Q3: すぐに鼻水を止めたい時の応急処置はありますか?
A: 完全に止めるのは難しいですが、症状を和らげる方法はあります。蒸しタオルで鼻を温めると、血行が良くなり鼻の通りが楽になります。また、マスクをすると鼻や喉の湿度を保つことができ、刺激から守ってくれます。
Q4: アレルギーの薬は眠くなると聞きますが、日中も安心して飲める薬はありますか?
A: はい、あります。最近では、眠気の副作用が出にくい「第二世代抗ヒスタミン薬」が処方されることが多くなっています。お仕事や車の運転など、ライフスタイルに合わせて医師が薬を選択しますので、診察の際にぜひご相談ください。
Q5: 鼻うがいは効果がありますか?正しいやり方を教えてください。
A: 鼻うがいは、鼻の中のウイルスや花粉を洗い流すのに効果的です。ただし、やり方を間違えると耳を痛める原因にもなります。必ず体温程度のぬるま湯に、専用の洗浄剤や食塩を溶かしたものを使用し、「えー」と声を出しながら洗浄液を鼻から入れて口から出すようにしましょう。
Q6: 鼻水が喉に流れてきて、咳が止まらなくなります。どうすればよいですか?
A: それは「後鼻漏(こうびろう)」という症状かもしれません。鼻水をこまめにかむ、部屋を加湿する、体を温めるなどのセルフケアで症状が和らぐことがあります。改善しない場合や、咳がひどい場合は、耳鼻咽喉科で相談しましょう。
Q7: 食べ物で鼻水を改善することはできますか?
A: バランスの取れた食事が基本ですが、体を温める作用のある生姜やネギ、免疫力を高めるビタミン類を多く含む緑黄色野菜などを意識して摂るのは良いでしょう。ただし、特定の食品だけで症状が劇的に改善するわけではありません。
Q8: 鼻づまりもひどくて夜眠れません。何か良い方法はありますか?
A: 鼻づまりは本当につらいですよね。加湿器で寝室の湿度を保ったり、鼻の通りを良くする効果のある市販のテープを試したりするのも一つの方法です。また、枕を少し高くして寝ると、鼻づまりが楽になることがあります。
Q9: 市販の点鼻薬を使い続けても大丈夫ですか?
A: 血管収縮剤が含まれているタイプの点鼻薬は、使いすぎるとかえって鼻づまりを悪化させる「薬剤性鼻炎」を引き起こすことがあります。使用は短期間にとどめ、症状が続く場合は必ず医師に相談してください。
Q10: 病院に行くべきか迷います。受診の目安を教えてください。
A: 市販薬を数日使っても改善しない、黄色い鼻水が続く、頬や目の奥が痛む、匂いがわからない、などの症状があれば、一度耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。専門医に相談することで、安心にもつながりますよ。
まとめ
つらい鼻水の症状は、原因を知り、適切に対処することで、和らげることができます。ご自身の症状やライフスタイルに合わせたケアを見つけることが大切です。
大切なポイント
- 鼻水は体の防御反応ですが、長引く場合は原因を探ることが大切です。
- アレルギー、寒暖差、加齢など、原因に合わせた対処法があります。
- 日常生活でのセルフケアと、専門医による治療を上手に組み合わせましょう。
- つらい症状は我慢せず、かかりつけ医や専門医に相談しましょう。
毎日を少しでも快適に過ごせるよう、ご自身をいたわる時間も大切にしてくださいね。この記事が、みなさんの鼻水の悩みを解消する一助となれば幸いです。
健康に関するご相談は最寄りのかかりつけ医へ
この記事の健康情報は一般的な内容です。ご自身の症状や体調について心配なことがある場合は、必ずかかりつけ医にご相談ください。
適切な診断・治療には専門医による個別の判断が不可欠です。自己判断せず、まずは信頼できる医師にお話しすることをおすすめします。
監修者プロフィール:鷲尾 有司さん

わしお耳鼻咽喉科 院長。医学博士(通年性アレルギー性鼻炎に対する免疫療法)。日本耳鼻咽喉科学会認定専門医。日本アレルギー学会認定専門医。日本耳鼻咽喉科学会補聴器相談医。




