物価上昇時代に負けないための「お金」の知識#4

欧米の富裕層シニアの秘訣「ゴールベース運用」とは?

公開日:2023.11.26

物価が上昇する時代に必要なお金の知識を、IFAの五十嵐修平さんに教わる連載です。今回は、1990年代から普及し始め、米国人を豊かにしてきた運用方法である「ゴールベース運用」という考え方についてお伝えします。

教えてくれる人は五十嵐修平(いがらし・しゅうへい)さん 

株式会社バリューアドバイザーズ 代表取締役

株式会社バリューアドバイザーズ 代表取締役。父親の影響で大学生の時に投資を始める。投資に“無限の可能性”を感じ、証券会社に就職。「中立な立場で顧客に資産運用の提案をしたい」との思いから2013年に会社を設立。ゴールを設定する欧米式の資産運用手法を基にIFAとして活躍中。著書に『55歳からでも失敗しない投資のルール』(インプレス刊)。無料の個別相談セミナーが好評。
※IFAとは、特定の金融機関に属さず、独立した立場でお客さまに資産運用のアドバイスを行う専門家です。

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資産運用の方法は、実は2つある!

この連載の第1回目では、インフレ時代に現金預金では資産が目減りして実質的に目減りしてしまうこと。
第2回目では欧米のシニアはどのようにインフレを乗り越えてきたか 、そして資産運用に対する考え方の違いによってどのように差をもたらしてきたか。第3回目では金融リテラシークイズ でみなさまの現状をご確認いただきました。

今回は、日本の方々にもぜひ取り入れていただきたい資産運用方法について解説させていただきます。

資産運用の手法は、実は二つあることをみなさまはご存じでしょうか。

スリルがあり玄人向けのマーケットベース運用

スリルがあり玄人向けのマーケットベース運用

一つ目が「マーケットベース運用」という手法です。
マーケットベース運用とは、株式市場の動きに合わせて、価格が上がりそうな商品を探し、短期の値動きを参考にしながら運用する方法です。

株式を売ったり買ったりするので、短期間で大きく利益が出ることもあれば、大きく損してしまうこともあります。

スリルがあり面白い投資手法ではありますが、初心者向けではありません。

初心者にもできるゴールベース運用

初心者にもできるゴールベース運用

これに対して二つ目が「ゴールベース運用」という手法です。
ゴールベース運用とは「いつ」「何を目的に」「どのくらいの資産が必要か」などの資産運用の目的(ゴール)を定めて運用する手法です。

資産運用のゴールといっても難しく感じるかもしれませんが、難しく考える必要はありません。

例えば、「10年後の教育資金を用意する」「15年後のセカンドライフの資金を用意する」「銀行預金が低いのでインフレで資産が目減りしないようにする」などがあります。

この運用手法は金融先進国である米国では1990年代から普及しており、『米国人の人生を豊かにしてきた手法』です。そして、近年日本でも少しずつ注目を集めています。

イメージがつきにくい方もいると思いますので、みなさまの身近な例で説明すると、「献立を考えてから買い物に行く」というイメージです。

例えば、カレーを作るという目的であれば、玉ねぎ・にんじん・牛肉・じゃがいもといった材料を買います。

目的から逆算して行動していきます。順を追って解説していきます。

 

ゴールベース運用の考え方と手順

ゴールベース運用の考え方と手順

<1>具体的な目的を設定。まずは資産運用のゴールを決めます

「子どもの教育資金として10年後までに500万円を用意する」「老後の生活資金として65歳までに2000万円を確保する」など、具体的な目的・目標を立て、ゴールを明確にしましょう。

料理に例えると……献立を決める段階。「カレーを4人分」などメニューを決めないと買い物に行けませんよね。。

<2>運用計画の策定

ゴールが決まったら、目標達成までの期間や現在の保有資産、今後の収入の見通しなどを整理します。

ライフプラン表などを作成し、整理した情報をもとにゴールまでの道筋を考え、運用計画を立てます。

料理に例えると……スーパーで何を買うのか決める段階。献立に必要な食材を確認する段階

<3>運用計画の実行

運用計画ができたら、計画を具体的に実行していきます。
ゴールまでの期間やリスク許容度に合わせて運用商品や資産配分を決定し、金融商品の買付を行います。

料理に例えると……スーパーに買い物に行って料理する段階。考えた献立に合わせて必要なものを買うことで、「買いすぎ」や「足りない」といった失敗を未然に防げる。

<4>運用状況の確認・見直し

運用状況を確認し、必要に応じて運用商品や資産配分を変更しながらゴールを目指します。
ライフプランが変わると、運用商品の変更の必要性が出てきます。

料理に例えると……味見や途中経過を確認する段階。焦げないように経過観察をして味見もする!

<5>運用してきた資産を活用する

資産運用により、じっくりと育ててきた資産を活用して、いざ「ライフプランを実現」していきます。

例えば、一軒家のリフォーム代金をゴールにしていたのであれば「一括で1000万円売却」、老後の生活資金であれば運用を継続しながら「毎月10万円ずつ取り崩す」など、資金用途に応じていろいろな売却方法を活用していきます。

料理に例えると……出来上がった料理をおいしく食べる段階。サラダはその日中に全部食べて、カレーは2日間で、楽しみながら食べていく。1日目はカレーライス、2日目カレーうどんにしても良し。

ゴールベース運用なら安定的な資産運用が可能に
 

ゴールベース運用なら安定的な資産運用が可能に

当たり前のことですが、料理では作るメニューから逆算して買い物をします。

資産運用では目的もなく商品を購入して、うまくいかないということが多々あります。

例えば、利益を出すことを重視して、本来必要のない過度なリスクをとった商品に投資してしまうこともあるでしょう。

しかし、最初にゴールを明確にすれば、目的達成に必要な利回りも把握でき、リスクを適切に管理しながら、安定的な資産運用が可能になります。

ゴールを設定してから運用すれば、短期的な値動きで一喜一憂もしないで済みます。

短期的な値動きに一喜一憂し売買を楽しむという目的なら、マーケットベース運用でも間違いではありません。

しかし、今みなさんの手元にある資金はどうでしょうか?

一時的な楽しみのためではなく、将来の生活のための大事な資金なのではないでしょうか?

そういった大事な資金を安心して運用していく手法として、ゴールベース運用を今から始める資産運用に取り入れていただきたいです。

ゴールベース運用は、結果的に資産運用の原理原則である「長期・分散投資」になります。資産運用は長期的に続けることで成果が出やすく、安定した利益を出すことが期待できます。
 
今回は、日本の方々に取り入れていただきたい資産運用方法について解説しましたが、適切な運用の方法は年齢・家族構成・目的によっても変化していきます。

その点については、次回詳しくご説明させていただきます。

■もっと知りたい■

五十嵐修平

株式会社バリューアドバイザーズ 代表取締役。父親の影響で大学生のとき投資を始め証券会社に就職。「中立な立場で顧客に資産運用の提案をしたい」との思いから2013年に会社を設立。ゴールを設定する欧米式の資産運用手法を基にIFAとして活躍中。著書に『55歳からでも失敗しない投資のルール』(インプレス刊)

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