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- 日本画家・金子富之さんの言葉に勇気をもらいました
静岡県浜松市・天竜区にある『浜松市秋野不矩美術館』へ行ってきました。「秋野不矩・金子富之が描くアジアの神々」展。二人の日本画家が描く絵と、金子富之さんの言葉にぐっと引き込まれました。
秋野不矩さんと金子富之さん。時代を超えた二人の日本画家
浜松市街から車で40分ほど。緑に囲まれた静かな場所に『浜松市秋野不矩美術館』はあります。
山のふもとに車を止め、坂道を歩いて登っていくと、小さな美術館が現れました。
秋野不矩さんは、明治生まれ・浜松市出身の日本画家です。
インドに魅せられ、2001年に亡くなるまでインドの風景や人々の様子を描き、寺院や神々の作品も多く残しています。
金子富之さんは、1978年生まれ。
カンボジア滞在中にヒンドゥー教や仏教に触れ、神々や珍獣、そして妖怪などをモチーフにした迫力あふれる日本画を描かれています。
今回の展覧会では、秋野不矩さんの絵に呼応するようなかたちで、金子富之さんの大きな絵画が展示されていました。
それぞれの世界観がリンクする不思議な空間
館内に入ると、向かって右に金子さんの絵、左に秋野不矩さんの絵。
シヴァ神やナーガ(蛇の神様)をモチーフにしている二人の絵が対になっていて、それぞれの世界観を比べながら鑑賞することができます。
これまで、金子さんのことは存じ上げなかったのですが、あまりのスケールの大きさに、圧倒されました。
そしてメインの部屋へ。高い天井の部屋に掲げられている、「大舞虎」が目に飛び込んできました。大きさは約5m四方にも及ぶそうです。
そして絵に近づいて見てみると、その緻密な筆致にまた驚きます。一本一本の線が積み重なって大きな絵ができていることを、改めて感じました。大げさかもしれないけれど、人生の縮図みたいな。
「一秒ずつの積み重ねで一日ができ、一日一日の積み重ねで一年ができ、人生ができていく」。そんな気分になりました。
金子さんの内面に触れたような気がした「カリ・ユガ記」
そしてそして、一番釘付けになったのは、2階に展示されている「カリ・ユガ記」という作品です。
パッと見、大きな模造紙に下描きスケッチが描いてあるのかな? と思うのですが、よく見るとスケッチのすき間には、とっても小さな文字で何かがびっしり書いてあるのです(正確には、紙一面に書かれた文字の上に、スケッチが描かれている状態です)。
まるで、金子さんの心の声がそのままあふれ出したかのように、細かく書かれた言葉の数々。私は夢中で読みました。
その中で、特に心を打った言葉があります。
「私は、なんの因果かわからないがそう反(判)断したのだから自分を信じてあげると知っています」
作品の写真は撮影できなかったので、私はこの言葉を何度も何度もつぶやいて記憶しました。
何度か繰り返してつぶやいているうちに、なぜか涙が出てきました。
実は少し前、自分の選択が間違っていたのでは? と悩む出来事がありました。
こっちじゃなくて、あっちを選べばよかったかも。新しいことに手を出さずにおけばよかったかも。もっと現実を見るべきだったかも……。いろんな思いが心に浮かんで、心の整理がついていなかったのです。
そんな時に飛び込んできたこの言葉。
ゆらゆらと揺れ動いていた私の気持ちを、優しくかつ力強く止めてくれて、そして言い聞かせてくれるようでした。
もっと自分を信じよう、あの時の私の判断を支持しよう。
そして、本来の私はきっと、そのことを「知っている」んだ、だから大丈夫。そんな勇気もまた、湧いてきました。
気づけば2時間以上も滞在し、次の日も見に行ってしまいました(笑)。
緑に囲まれた美術館で、こころの洗濯をしてみませんか?
圧倒的に力強い絵と、繊細すぎる言葉とのコントラスト。どちらもとても印象的で、私の心をぐっとつかんだ空間でした。
この展覧会は、7月30日(日)まで開催しています(一般800円)。ぜひ出かけてみてくださいね。
※画像は美術館の許可を得て掲載しています。
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