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沖縄名護の重要文化財「津嘉山酒造所」を訪ねて

公開日:2023.03.14

沖縄名護の津嘉山酒造所は沖縄戦の空爆を免れ、戦前の様式を残す古民家酒造所。そこでは杜氏と工場長の二人だけで泡盛「國華」を作っていました。超個性的な杜氏の解説で沖縄の歴史を学び、重要文化財の古民家見学をし、泡盛の試飲をした充実のレポートです。

沖縄名護の重要文化財「津嘉山酒造所」を訪ねて
津嘉山酒造所が造る泡盛「國華」の暖簾の前で。工場長の幸喜さん(左)と杜氏の秋村さん

津嘉山酒造所の工場見学について

津嘉山酒造所の工場見学について
工場内 梁には本土の杉が使われています

工場見学を電話で予約をしようとしたところ「個人客なら予約なしで良いよ。ただし、二人だけなのでお昼休みだけ取らせて欲しい」というお返事。

小さな酒造であることは知っていましたが、まさか本当に杜氏と工場長の二人だけで運営されているとは驚きでした。

当日は平日でしたが、この酒造所のファンが次々と訪れていました。一組約30分の説明ののち、工場長にバトンタッチされて、この酒造で作られている泡盛「國華(こっか)」の試飲が古民家の座敷で行われました。

惜し気もなく重要文化財の座敷に通され、惜し気もなく出荷量が少ない希少な泡盛を試飲させてくれました。

名物杜氏、秋村英和さんについて

名物杜氏秋村さんについて
古い写真を見ながら説明中の秋村さん

秋村さんは、泡盛作りに関する全てをほとんど一人でこなしています。

伝えたいことがたくさんあるのでしょう。工場見学の説明は、超早口のマシンガントークが炸裂します。ついて行くのは大変ですが、内容が濃くおもしろいので、時を忘れて聞き入ってしまいます。

当然沖縄の人かと思いきや、千葉県出身で「ブラック企業を辞めてこちらに来たら、超ブラック企業に勤めてしまい、早15年」という話をして笑わせてくれます。

なぜ超ブラック企業かというと、彼は独りで泡盛を作り、瓶詰めし、夜には家でラベル貼りまでしているそうです。

「それは確かに超ブラック企業だわ!」と納得しますが、何とも楽しそうに話してくれました。

津嘉山酒造の歴史について

津嘉山酒造の歴史について
占領中につけられた英語の文字

大正13年(1924年)創業の津嘉山酒造所の現在の建物は、昭和3年(1928年)ごろに建築されたものです。

沖縄戦の激しい空爆で周り一帯ががれきの山になる中、この木造建築は奇跡的に残りました。

そこには、米軍が占領後にこの大きくて立派な建物を使用するという思惑がありました。占領後、まず司令部や将校の宿舎になり、その後パン工場になりました。

そして返還後、また酒造所を再開したそうです。

古民家は大切に守りぬかれています

古民家は大切に守りぬかれています
美しい建物とお庭

この建物は、戦前の面影を残し現存する県内最大級の赤瓦葺き木造建築で、平成21年(2009年)に文化庁の重要文化財に指定されました。

純沖縄風ではなく、戦前の関東様式も取り入れたもので、通常の沖縄様式にはない玄関と内風呂があります。ここを訪れた人は誰しもが懐かしさを感じて、大切な人を連れてまたやってくるそうです。

なんと、再訪率80%! 確かに私も再訪したいと思いました。

現在でも、柱に住み着いた泡盛作りに大切な黒麹菌に悪影響を与えないように、防腐処理をせず傷んだところを補修しながら使用しているそうです。

もうすぐ100年。津嘉山酒造所は、多くのファンに囲まれて、これからも大切に大切に守りぬかれていくのだと思いました。

おしまいに

おしまいに
成長の遅い黒檀の木 右手は試飲場

杜氏の秋村英和さん、工場長の幸喜行有さん、すてきな時間をありがとうございました。

工場見学と商品の購入はセットという観光酒造所が多い昨今、ここは「古民家好きさん、歴史好きさんいらっしゃい。お酒飲めない人も大歓迎!」という心温まる酒造所でした。

津嘉山酒造所

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上野真香

趣味は陶芸、旅行、料理、華道、手芸など多岐にわたるが根っこは一緒。美味しいものを食べて楽しい人生を送りたいというもの。ワインと犬とコーヒーとTVドラマが大好き。シャンシャンと誕生日が一緒のため他パンダ(?)とは思えず、現在年パスを購入しシャンシャンウォッチャーを続行中。

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