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ネットフリックスドラマ「ある告発の解剖」は、世界中でヒットしたドラマ「アリーmy love」(なつかしい!)の脚本家デイビッド・E・ケリーが制作に関わっています。
あらすじ
国会議員の夫ジェームスと2人の子どもに恵まれ、絵に描いたようなセレブリティの生活を満喫しているソフィー。しかし夫は部下と不倫した上にレイプ犯として訴えられます。裁判が始まると、そこから別の事件が浮かび上がり……。キーパーソンになるのは原告側の弁護士ケイト。ケイトはある秘密を抱えながらジェームスを追い詰めます。
フェミニズム本との共通点
先日、フェミニズムを扱った本、田嶋陽子さんの『愛という名の支配』を読みました(田嶋陽子さんは90年代、「ビートたけしのTVタックル」を見ていた人にはおなじみ。近年再評価されています)。このドラマを見るとこの本に書いてあることが諸々浮かんできて、内容がリンクすることに気づきました。
どういうことかといいますと、法廷ミステリーものとして楽しめますが、肝となるのは女性問題であったか、と思えるのです。
著書の一文に、
人は、男が上で女が男の下にくるのを「自然」だと言います。なにが、そういう「自然」をつくりだしているのか。そのしかけは、男の子を「男の子らしく」、女の子を「女の子らしく」育てることにあります。「男らしさ」「女らしさ」で子育てすれば、放っておいても男は甲板の上の貴族に、女は船底のドレイにならざるをえないような文化的な企みがあるからです。
『愛という名の支配』が最初に刊行されたのは1992年、ちょうど30年前です。男女の意識は変わってきてはいるものの、女性はいまだに男性に愛され、結婚することが幸せという考えは根強く残っています。
ドラマでは、「女らしく」育ったソフィーは大学時代に知り合った、成績優秀でスポーツも万能な「男らしい」ジェームスに目をつけます。美しさとセクシーさでもって彼を引きつけ、結婚。出版社で働いていたソフィーは早々に仕事を辞めてしまったことに少し後悔しています。
夫ジェームスの不倫相手、助手のオリヴィアは20代。ソフィーは義母に彼女のことを「別の世代の人なの」と説明するシーンがあります。40代のソフィーは、「私の大学時代とは大違い。性的同意もあいまい。女は意思を伝えられなかった」と語ります。男らしさがまだ良い方に通用していた時代だったと思いを馳せるのです。
一方、その上の世代の義母は息子ジェームスの自信過剰で狡猾な面を認めつつ「あなたは理想の妻で母よ」とソフィーを励まします。義母はなにが問題なのかは分かっていない様子。世代によるジェンダーの意識の違いがわかるシーンになっています。
もの申す女性が増えてきた
ストーリーは妻VS不倫相手という形で進むのではなく、男性VS女性の問題に意識が移るようになっていきます。夫に裏切られたソフィー、上司にレイプされたと訴えるオリヴィア、不幸な事件に遭ったケイトは女であるが故の苦しみを抱えているという点がクローズアップしてくるのです。
ジェンダー問題が進んでいそうなイギリスでも、と思いますが改めて世界共通の問題と納得です。
しかしここ数年、2017年の#MeToo運動、女性ジャーナリストレイプ事件、最近の映画界の性的被害告発と、若い世代を中心にもの申す女性が増え、この問題解決に向けぐっと加速してきた感があります。
ソフィーとケイトが自分らしく生きるために戦う姿に私は共感しない、という女性はほとんどいないと思います。たぶん。
ソフィーを演じたのが、シエナ・ミラー。ケイト役は「ダウントン・アビー」のメアリー役でも知られたミシェル・ドッカリー。物語の序盤とラストの表情の変化に注目です。
■作品詳細
- Netflix ある告発の解剖 2022年 リミテッドシリーズ 6エピソード
- 原作・制作 デイビッド・E・ケリー、メリッサ・ジェームス・ギブソン
- 監督 S・J・クラークソン
- 出演・シエナ・ミラー、ミシェル・ドッカリー、ルパート・フレンド
※参考図書
『愛という名の支配』 田嶋陽子 著(新潮文庫 令和元年)
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