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怒涛の日々の始まり
それは松の内最後の日、夕食の支度を終えた頃電話が鳴りました。
夫が出たのですが、ちょっと様子がおかしい。
「わかりました、すぐ行きます」と電話を切ると私に「お義父さんが交通事故で○○大学病院に入院したって」
「えっ」
私は母に支度をさせ、ちょっとパニックになりながら、とりあえずパジャマとタオル、それに父用に作っていた「病院・薬関係」のファイルを持って車に乗り込みました。
この大学病院は隣町にあります。家の裏の市民病院からドクターヘリで連れて行かれるのですが、なんでだろう、と思っているとまた警察から電話が。
運転していない私が出ると、自分たちもその病院に向かっているとのこと。私が「それで父の具合はどんなんでしょうか」と聞くと「いや、それはわからないので、病院で聞いてくれ」と言われました。でもそれはウソでした。単に責任をとりたくなかったのでしょう。
病院は正月休みなのでひっそりと静まりかえり、薄暗い状態でした。
看護婦さんに待合室に促された時に「これ今父が服用している薬の一覧です」と差し出すとちょっと驚いたように「大丈夫です」と言ってICUに入って行きました。
違和感を感じていると、医師に呼ばれて父の死を告げられました。
「まさか……」
警察のウソ
ICUに入ると父がベッドに横たわっていて、寝ているようでした。母は「こんなことならもっと優しくするんだった」と泣き崩れていましたが、私はショックで涙も出ず、自分でも考えていないことを質問していました。
「あの、父は死ぬとき痛みを感じたのでしょうか」「いえ即死と思われますので……」
そして警察官が到着し、事故現場の様子を図解で説明してくれました。
どうやら横断歩道を渡っていたところ、前方から右折してきたトラックに巻き込まれ下敷きになったとの事。体を引き出した時には、すでに心肺停止状態だったとか……。
「ほら、やっぱり知ってたんじゃない」と心の中でちょっと怒りがわきました。
非情な女事務員
すると、今度は受付の事務員から呼び出され「診察券を作るのでここに住所と名前を」と言われました。「えっ、本人死んでいるのに?」と私は口に出したくなかった「死」という言葉を言わされました。
するとこの非情なオンナ事務員は続けてこう言い放ったのです。
「もし、相手が保険に入っていない場合、交通事故は健康保険が効きません。ドクターヘリは実費のお支払いになります。150万円です!」
(はあ~あんたね、そこで家族が遺体と対面したばかりで泣いているのに。お悔やみの一言も言えんのか)と心の中で突っ込むとともに、怒りといらだちと悲しみと不安がごちゃごちゃに入り乱れて、どんな感情でいたらいいのかわからなくなりました。
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