私のおすすめの本

『されど われらが日々』と『時雨の記』の間で   

公開日:2021.03.07

私が大好きな本、『されど われらが日々』と『時雨の記』についてご紹介します。どちらも恋愛に関する物語です。

『されど われらが日々』(柴田翔著)

『されど われらが日々』(柴田翔著)に出合ったっとき、ヒロインの節子の生き方にとてもひかれた。そして、もっと早くにこの本に出合いたかったと思った。私と同世代の人たちが迷い、煩悶(はんもん)しながらも、しっかり生きている姿にひかれた。作者の柴田翔のことが知りたくなり、作者の本をいろいろと読んだ。彼は当時、東大の文学部の先生で、奥様はピアニストをされているようだった。

私はこの本を1975年11月に住まいの近くの本屋さんで買ったと記録がある。私が33歳の時で、やり始めた塾の仕事に没頭していた。

それ以前に、私がまだ20代の頃、1つ年下のいとこにこの本を見せてもらったことがあった。いとことは、この本がきっかけで親しくなった。「挫折文学の典型だ」「いや、そんなことない」と意見を交わしたものである。

いかに生きるべきかを考えさせられた1冊。私のやっぱり1番好きな本である。しかし、今は読むのに苦労する。

 

『時雨の記』(中里恒子著)

『時雨の記』(中里恒子著)

私の心も年を取ったのであろうか。そう思うと悲しくなり、2番目に好きな本『時雨の記』(中里恒子著)を手に取ってみた。本を買うときは装丁も気になるのであるが、この本の表紙は私好みの藍色の布地である。読みやすく、すいすいと読めた。

堀川多江は40歳過ぎの一人暮らしのヒロインで、壬生孝之助は50歳を過ぎているとある。二人の物語である。

『されど われらが日々』は子どもの恋愛、『時雨の記』は大人の恋の物語だといった友達がいたが、まったくそうだと思った。『されど われらが日々』は理屈っぽくって読むのに苦労したが、やっぱり節子の手紙は好きである。何度読み返してもいいなぁと思う。

40歳過ぎて、こんな二人のような出会いはメルヘンであろうが、好きなものに囲まれてひっそりと生きていくのもいいなぁと思う。愛されたという思いでだけで生きていけると思った。

次は3番目に好きな本宮本輝の「錦繍」を読みたいと思う。

 

■もっと知りたい■

久田かえこ

好きなことは読書。本は小さい頃からいつもわたしのそばにありました。引っ込み思案な点がありますが、裏を返せば奥ゆかしさにつながるのでしょうか。4人姉妹の長女で、和歌山の実家で母を見てくれていた一回り下の妹が60歳で他界、その時の寂しさを紛らわせてくれたのは数々の本とそれを通して出会った仲間たちです。

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