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- 落語自由自在⑨~桂文珍大東京独演会(下)~
落語が大好きなさいとうさんの落語体験記をお届けします。古き良き日本文化である落語を聴いて楽しく笑うことで、身も心も元気になりますよ。今回は、新作落語が楽しい桂文珍師匠の独演会後編です。
「スマホでイタコ」 桂文珍
兼好師匠の後は、ふたたび文珍師匠の登場です。
「兼好さんは、好楽師匠のお弟子さんです」
とマクラが始まります。
「他所のお弟子さんはよく育ちますね。うちは? (間があって)弟子が老眼鏡をかけるんですよ。もうガッカリです。なかなか育たない……。弟子が老眼鏡をかけるようでは、おしまいです」
「NHKの『新人演芸大賞』の審査員をやっていますが、自分の弟子が予選を勝ち抜くと、審査はできないのですが、もうずっとやっています。柳家権太楼(やなぎやごんたろう)師匠と2人で、この間もそのことでボヤキ通しでした」
と自虐ネタで笑いを取ります。
「この間、弟子に古典落語の『へっつい幽霊』を教えたくて『へっついって知っているか?』って聞いたんです。そうしたらいきなり、スマホをかざして『へっつい』って言うんです。目の前に師匠がいるんですよ。『何ですか?』って聞けばいいじゃないですか」
「『かまどだそうです』って言うから『かまどはわかるね』って言ったら『かまど』ってまたスマホに話し掛けるんです。かまども知らんのかいなって呆れました。何にも知らないんですね」
「先日若い女性が私を見て『あっ、あっ、』って言ってるんです。立ち止まったら『ファンです』って言ってから、スマホに『関西・めがね・落語』。目の前にいるんですから『お名前なんでしたっけ』って言えば教えますよ。『鶴瓶です』って」
で大爆笑。
「よく鶴瓶と間違えられるんです」
こんな楽しいマクラから「スマホでイタコ」に入ります。
スマホには、あの世とこの世が繋がるアプリがあるというので、「5代目文枝師匠(文珍師匠の師匠です)」とスマホに話し掛け始めます。
「師匠お元気ですか?」
「いや、死んでいる」
のやり取りが妙におかしかったです。さっきのマクラでのスマホの話題は、仕込みというか、ふりだったのですね。
古典落語も素晴らしいけど、文珍師匠の新作落語は本当に楽しいです。「定年の夜」や「老婆の休日」等、もはや名作ともいえる作品がたくさんあります。
「栴檀の森(せんだんのもり)」桂文珍
「栴檀は双葉より芳し 蛇は寸にしてその気を表す」
「洗濯は二晩で乾くか? ジャワ-スマトラは南方に?」
なんてねぇ。
飽きるほど聞いているあの「子ほめ」の中の、栴檀(せんだん)です。
栴檀(せんだん)というのは植物の名前で、昔から虫除けや薬に使われていて、最近の研究ではインフルエンザにも効果があるそうです。
村の公金十両を使い込み困った若い衆2人が、猟師の親分に、隣村の後家さんにお金を借りてくれと頼みにきます。隣村へ行くには、昼でも恐ろしい栴檀の森を通らなければならず、粋がって引き受けた親分ですが、実は人一倍の怖がり。ビクビクして歩く親分の表情が、恐怖に満ち満ちています。
途中、「はめもの(鳴り物)」をふんだんに入れて、怖さを強調。どうなることかと思いきや、自殺願望のある娘に出会います。そんなに死にたいなら手伝ってあげると親切を装う親分。実は娘の所持金が目当てですが、どうやって首を吊るのかと聞かれ、見本を示すと言って、良い枝ぶりを探し、紐をかけ、首をかけ、足元の石を蹴ってしまいます。その様子を見ていた娘「あら、死んじゃった、首吊りは嫌だなあ」とすっかり死ぬ気をなくすのです。
嫌なこと(金策)を人に押し付ける若い衆から始まり、人間の業が次々と描かれていきます。
終演後文珍師匠は「栴檀の森はめったにやりません。面白くないからです」と正直でした。
「さて来年は2020年、ここでお知らせです。実は来年3月にお隣の大劇場でやってみたいと思います。しかも20日間、40公演、全部違うネタですから、1公演2席で80席となります。キャパは1610名ですから、ここにいる方一人残らず、お出かけください」と文珍師匠。って、行きます! 行きます!
「今日は、読売新聞の号外が出ました」と発表されます。
「ネットで3万円で販売します。って嘘です。新元号令和の号外ではないですからね」
2020年「桂文珍独演会」は、国立劇場大劇場です。今からとても楽しみです。
ぜひみなさんもお出かけください!
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