落語体験記

落語自由自在⑨~桂文珍大東京独演会(下)~

公開日:2019.05.31

落語が大好きなさいとうさんの落語体験記をお届けします。古き良き日本文化である落語を聴いて楽しく笑うことで、身も心も元気になりますよ。今回は、新作落語が楽しい桂文珍師匠の独演会後編です。

「スマホでイタコ」 桂文珍

兼好師匠の後は、ふたたび文珍師匠の登場です。

「兼好さんは、好楽師匠のお弟子さんです」

とマクラが始まります。

「他所のお弟子さんはよく育ちますね。うちは? (間があって)弟子が老眼鏡をかけるんですよ。もうガッカリです。なかなか育たない……。弟子が老眼鏡をかけるようでは、おしまいです」

「NHKの『新人演芸大賞』の審査員をやっていますが、自分の弟子が予選を勝ち抜くと、審査はできないのですが、もうずっとやっています。柳家権太楼(やなぎやごんたろう)師匠と2人で、この間もそのことでボヤキ通しでした」

と自虐ネタで笑いを取ります。

「この間、弟子に古典落語の『へっつい幽霊』を教えたくて『へっついって知っているか?』って聞いたんです。そうしたらいきなり、スマホをかざして『へっつい』って言うんです。目の前に師匠がいるんですよ。『何ですか?』って聞けばいいじゃないですか」

「『かまどだそうです』って言うから『かまどはわかるね』って言ったら『かまど』ってまたスマホに話し掛けるんです。かまども知らんのかいなって呆れました。何にも知らないんですね」

「先日若い女性が私を見て『あっ、あっ、』って言ってるんです。立ち止まったら『ファンです』って言ってから、スマホに『関西・めがね・落語』。目の前にいるんですから『お名前なんでしたっけ』って言えば教えますよ。『鶴瓶です』って」

で大爆笑。

「よく鶴瓶と間違えられるんです」

こんな楽しいマクラから「スマホでイタコ」に入ります。

スマホには、あの世とこの世が繋がるアプリがあるというので、「5代目文枝師匠(文珍師匠の師匠です)」とスマホに話し掛け始めます。

「師匠お元気ですか?」

「いや、死んでいる」

のやり取りが妙におかしかったです。さっきのマクラでのスマホの話題は、仕込みというか、ふりだったのですね。

古典落語も素晴らしいけど、文珍師匠の新作落語は本当に楽しいです。「定年の夜」や「老婆の休日」等、もはや名作ともいえる作品がたくさんあります。

「栴檀の森(せんだんのもり)」桂文珍

「栴檀は双葉より芳し 蛇は寸にしてその気を表す」
「洗濯は二晩で乾くか? ジャワ-スマトラは南方に?」
なんてねぇ。

飽きるほど聞いているあの「子ほめ」の中の、栴檀(せんだん)です。

栴檀(せんだん)というのは植物の名前で、昔から虫除けや薬に使われていて、最近の研究ではインフルエンザにも効果があるそうです。

村の公金十両を使い込み困った若い衆2人が、猟師の親分に、隣村の後家さんにお金を借りてくれと頼みにきます。隣村へ行くには、昼でも恐ろしい栴檀の森を通らなければならず、粋がって引き受けた親分ですが、実は人一倍の怖がり。ビクビクして歩く親分の表情が、恐怖に満ち満ちています。

途中、「はめもの(鳴り物)」をふんだんに入れて、怖さを強調。どうなることかと思いきや、自殺願望のある娘に出会います。そんなに死にたいなら手伝ってあげると親切を装う親分。実は娘の所持金が目当てですが、どうやって首を吊るのかと聞かれ、見本を示すと言って、良い枝ぶりを探し、紐をかけ、首をかけ、足元の石を蹴ってしまいます。その様子を見ていた娘「あら、死んじゃった、首吊りは嫌だなあ」とすっかり死ぬ気をなくすのです。

嫌なこと(金策)を人に押し付ける若い衆から始まり、人間の業が次々と描かれていきます。

終演後文珍師匠は「栴檀の森はめったにやりません。面白くないからです」と正直でした。
 

今回の演目
今回の演目

 「さて来年は2020年、ここでお知らせです。実は来年3月にお隣の大劇場でやってみたいと思います。しかも20日間、40公演、全部違うネタですから、1公演2席で80席となります。キャパは1610名ですから、ここにいる方一人残らず、お出かけください」と文珍師匠。って、行きます! 行きます!

「今日は、読売新聞の号外が出ました」と発表されます。
 

読売新聞の号外
読売新聞の号外​​​​​

「ネットで3万円で販売します。って嘘です。新元号令和の号外ではないですからね」

2020年「桂文珍独演会」は、国立劇場大劇場です。今からとても楽しみです。

ぜひみなさんもお出かけください!

さいとうひろこ

趣味は落語鑑賞・読書・刺しゅう・気功・ロングブレス・テレビ体操。健康は食事からがモットーで、AGEフードコーディネーターと薬膳コーディネーターの資格を取得。人生健康サロンとヘルスアカデミーのメンバーとなり現在も学んでいます。人生100年時代を健康に過ごす方法と読書や落語の楽しみ方をご案内します。

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