お金の多さではきまらない⁉
心療内科医・海原純子さんが語る「幸せとお金の関係」
心療内科医・海原純子さんが語る「幸せとお金の関係」
公開日:2025年07月27日
海原純子さんのプロフィール
うみはら・じゅんこ 東京慈恵会医科大学卒業。同大学講師を経て、日本初の女性クリニックを開設しその後、ハーバード大学客員研究員、日本医科大学特任教授を歴任し、昭和女子大学客員教授。日本ポジティブサイコロジー医学会理事。ジャズシンガーとしてYouTube配信も行っている。
大切なのは、お金の多寡ではなく「自分が心地よく生きられるか」

お金と幸福感の関係について、アメリカの有名な研究があります。高額宝くじに当選した人を調査したところ、当たった直後は最高潮に幸せなんですが、幸福感は長く続かず、1年たつと平均的なアメリカ人とほぼ同じになってしまうのです。たとえ数億円あっても幸せは続かない。
なぜかといえば、人は自分が持っているものにすぐ慣れて、あるのが当たり前になってしまうから。たくさんお金を手にしても幸せは一瞬だけでどんどん目減りしてしまうのです。
では目減りしない幸せを手に入れるにはどうしたらいいのでしょうか。大事なのは、「お金がたくさんあったらいいのに」という願望ではなく、「自分にとって本当に必要なお金はどれくらいか」を知ることです。
まずは、ゆっくり寝られる安全な場所に住んで、自分の好きなものを食べ、生活に必要なものを買える、必要最低限のお金を確保することが基本です。その上で、心地よく生きていくために必要なお金は人それぞれ違います。月10万円で生活を支えられる人もいれば、100万円ないと支えられない人もいるでしょう。
それは人によって違うので、比べる必要はまったくありません。大切なのは、お金が多いか少ないかではなく、自分が心地よく生きられるかどうか。自分を知り、自分に必要なものを見極めることが幸せにつながります。
お付き合いや見栄を張るために使うお金はムダだなと感じます

フランスの哲学者ドゥニ・ディドロのこんな話があります。あるときディドロは素晴らしいガウンをプレゼントされました。喜んでガウンを着たものの、部屋にある汚れたいすや机、本棚と全然釣り合わない。ならばと、全部新しくしたら、自分らしさがなくなって居心地が悪くなってしまった、というお話です。
これまで私たちの世代は、物が豊かにあれば幸せになれると思ってきました。でも本当に大切なのは、自分が心地よく生きるために必要なものを選び取っていく力だと思います。私の場合は、勉強するための本にはすごくお金を払います。読んでみて失敗することもあるんですが、何か自分の中に蓄積されていると思うから後悔はしません。
一方、気が進まないお付き合いのランチ会や、見栄を張るための贅沢な洋服やバッグなどに払うお金はムダだなと感じます。やっぱり迷うことなく気持ちよくお金を払えるかどうかが大事ではないでしょうか。
取材・文=五十嵐香奈(ハルメク編集部)、撮影=高山浩数、イラストレーション=藤田ヒロコ
※この記事は、雑誌「ハルメク」2024年12月号を再編集しています。




