映画『たしかにあった幻』日本の臓器移植の現実とは?
俳優・尾野真千子が語る!「河瀨直美監督の現場では役作りはしない」
俳優・尾野真千子が語る!「河瀨直美監督の現場では役作りはしない」
公開日:2026年02月12日
河瀨直美監督の映画では役作りをしない理由

映画『たしかにあった幻』は、フランスから来日した臓器移植コーディネーターの視点で描く、日本の臓器移植の現実と、失踪した恋人への想いを重ねて描いた愛の物語。
尾野真千子さんが演じるめぐみは、病院に出入りするお弁当屋さんで、息子を亡くした悲しみを抱えながら、ドナーを待つ入院患者の子どもたちを支える役。
――出演依頼があったときの気持ち、出演の決め手について教えてください。
尾野真千子さん(以下、尾野真千子):
最初に脚本を読みました。とても難しいテーマを扱った作品なので、かなり悩みましたが、河瀨直美監督から「やるべき作品だと思う」という言葉があり、「よし、やろう!」と出演を決めました。

――めぐみという女性について、どのような人だと解釈して演じましたか?
尾野真千子:
役作りはしませんでしたし、役の解釈も行っていません。河瀨監督の撮影現場は、ありのままの感情で臨む場所なので、台本を読んだまま入っていきました。もちろん他の作品では役の解釈をしっかり行って撮影に臨みますが、河瀨組は違うんです。
臓器移植ドナーを待った実経験のある親に話を聞き

――脚本に書いてあるめぐみのイメージを、自分の中で膨らませる感じですか?
尾野真千子:
撮影の前日に河瀨監督と、夫役の北村一輝さんと一緒に、めぐみたちに似た境遇の方にお会いしてお話を聞きました。どのような経験をされてきたのかなど伺い、自分の中に取り入れて、お芝居の参考にしました。
――めぐみ役と同じような経験をされた方から話を聞いたり、めぐみを演じたりして、彼女の生き方や考え方などに心が動かされたこと、共感したことはありますか?
尾野真千子:
共感というのは違いますね。私は子どもを持ったことがないし、子どもを失った経験もないので。ただ、めぐみを認めることしかできない。「そうか、そうか」と彼女の思いを受け止めて、認めて、精一杯演じるだけです。

――河瀨監督の現場は、撮影中に生まれる力が大切なんですね。
尾野真千子:
そうですね。河瀨組は本当に特殊で、皆さんが思い描くような役作りや、芝居を作るというのとはまったく違うんです。
私は河瀨監督の『萌の朱雀』でデビューしたのですが、あの頃と変わりません。河瀨直美という人が私にとっては特別ですし、河瀨監督との仕事は別物として捉えています。
病院シーンではスタッフも医療関係者の衣装に

――撮影で印象深かったことは何でしょうか?
尾野真千子:
すべての時間が印象深いです。監督は台本どおりにカットをかけたりしません。「そのセリフが話せる気持ちになるまで、セリフを言わないで」と言われますから。
俳優の気持ちが熟すまで辛抱強く待ってくれますし、そこから生まれる表情もどんどん撮ってくれる。まさに河瀨ワールドです。
病院のシーンでは医師役のキャストだけでなく、スタッフ全員が医療関係者の衣装を着ているんです。俳優たちが自然に役に入れるよう、病院内の空気に違和感を感じさせないようにしていました。
――完成した映画を見た感想は?
尾野真千子:
河瀨直美監督らしさがあふれた映画でした。それがとてもうれしかったです。
尾野真千子プロフィール
1981年11月4日生まれ。奈良県出身。97年、河瀨直美監督『萌の朱雀』で俳優デビュー。主な出演作は映画『殯の森』『そして父になる』ほか。2026公開予定で『鬼の花嫁』『仏師(2026年公開予定)』がある。現在、東京と沖縄の二拠点生活で、沖縄では居酒屋を経営している。
『たしかにあった幻』

2月6日(金)よりテアトル新宿ほか全国ロードショー。
監督・脚本・編集:河瀨直美
出演:ヴィッキー・クリープス 寛一郎
尾野真千子 北村一輝 永瀬正敏
© CINÉFRANCE STUDIOS - KUMIE INC - TARANTULA - VIKTORIA PRODUCTIONS - PIO&CO - PROD LAB - MARIGNAN FILMS - 2025
取材・文=斎藤香 写真=泉三郎 編集=鳥居史(ハルメクアップ編集部)




