臨床心理士が教える!先延ばし解消術 #1
「自分のことは後回し…」50代の先延ばしグセが一気に治る“実践4ステップ”
「自分のことは後回し…」50代の先延ばしグセが一気に治る“実践4ステップ”
公開日:2025年12月16日
教えてくれるのは、中島美鈴(なかしま・みすず)さん
臨床心理士・公認心理師・心理学博士。専門は時間管理とADHDの認知行動療法。現在は中島心理相談所 所長。九州大学大学院人間環境学府にて学術協力研究員も務める。著書に『先延ばしグセ、やめられました! 書いてみるとうまくいく』(大和書房)など多数。
「今日もできなかった…」と自分を責めてしまう人へ
私は臨床心理士として、主に大人のADHDの方々にカウンセリングを行っています。中でも「いつもぎりぎり」「なぜか先延ばし」という時間がうまく使えない方のお悩みを解決することが専門分野です。
みなさんもなんらかの先延ばしを抱えていらっしゃるのではないでしょうか。それが、やろうと思えばさっとやれてしまうような些細なタスクの先延ばしなのか、数年来手がつけられていない重めのタスクなのかはそれぞれでしょう。
先延ばしはすべてが悪いことではないのですが、時に「こんなことを先延ばししている自分はだらしない」「情けない」と自分を責めて、自信を削ぐことになっていることがあります。
この記事で少しでもあなたの先延ばしが解決して、また自分を信じられるようになれたらと思っています。では、実際にどう先延ばしをやめるのか、4ステップで解説していきます。
STEP(1)全タスクを棚卸しして“時間の空き” を作る
■先延ばしタスクを行う時間を確保するために、まずは全タスクを洗い出し、取捨選択する
私たちは、先延ばししているタスク以外にも、毎日寝て起きて、食べて、お風呂に入り、仕事をこなして……と非常に多くのことに時間を使っています。
24時間に占める活動はいったんすべて書き出します。頭の中だけで覚えておいたような、「明日ゴミ出しだなあ」のような小さなタスクは書き出すとキリがないので、ここでは1時間以上かかるものを書き出します。
こうして一覧が箇条書きで棚卸しできたら、今度は優先順位をつけていきます。優先順位は締め切りの近いものだけでなく、自分が大切にしたいものも入れていきます。こうしないと「いつかハワイに行きたい」「痩せたい」といった夢はどんどん先延ばしされていきます。
緊急かつ重要なものはもちろん最優先で取り組みますが、その次には緊急ではないが重要なものも少しでよいので入れ込むようにします。
しかしここで、多くの人が「緊急性の高いタスクだけで24時間全部埋まってしまいました」というスケジュールパンパン状態になっています。
そこで、期限があって、こなすしかないタスクをもう一度見直してみます。「これは私でないとできないことだろうか? 他の誰かに頼めないだろうか?」などと自問自答してみるのです。
このときに気を付けてほしいのは、「私がちょっと我慢すれば大丈夫」などの長期間は続きにくい方法を省くことです。時間に入るようにタスクの側を調整するのです。あなたを調整してはいけません。
こうしてタスクが整理されて、どうしてもその月にやるべきことだけが残り、先延ばししているタスクを実行するための隙間ができたことでしょう。
STEP(2)自己報酬マネジメントで“やる気のスイッチ”を入れる
■自分のやる気の源を知って、先延ばしタスクを完了した後のご褒美として設定する
いよいよ先延ばしにしているタスクへ取りかかるためのモチベーションを自分で上げていく段階です。
ゴミ出しのようなみんながご褒美なしで当然のようにしていることでも、仕事や育児のような社会では義務と言われているようなことでも、わざわざご褒美を設定します。
これまで先延ばししたくなるほどモチベーションを持てなかったという「事実」に目を向けるのです。「事実、やる気が出なかったんだから、そのものへの動機づけだけではもう無理だ。ご褒美に頼ろう」と切り替えるのです。
ご褒美を決めるのにもコツがあります。具体物を目に見える形にして自分にぶら下げることです。そして、ご褒美は分割方式でもらえるようにします。がんばり続けて1か月後にもらえるご褒美ではなく、「今10分間がんばったらもらえる小さなご褒美」が大切です。報酬は遅延させてはならないのです。
また、ご褒美はチョコや前から欲しかったバッグのような物でも、お出掛けや外食に行くなどの体験でも、達成できたらチェックボックスにチェックがつくような地味なものでも、褒めてもらえるような社会的報酬でもかまいません。
こうして自分で自分のご褒美を選び、遅れることのないタイミングで設定できれば、この段階はクリアです。
STEP(3)タスクを10〜15分単位に分解して“計画を立てる”
■TO DOリストの作成、時間の見積もり
いよいよ本丸の先延ばししているタスクを進めるための計画を立てます。
タスクの完成形をしっかりイメージしながら、無駄のない手順を、まずはおおまかにTO DOリストとして箇条書きにしていきます。
カレー作りを例に挙げて説明しますと、最初は「材料を買う」「切る」「炒める」「煮る」ぐらいの大きな塊で漏れがないかチェックします。「あ、ご飯炊くの忘れてた」などの隠れたステップがないかよく確かめておきます。
これでおおまかな構造が決まったら、今度は1タスク10〜15分で終わるぐらいの細かいタスクに分解します。こうすることで、10分程度の隙間時間も活用できるようになりますし、他のタスクが横入りしても再調整しやすくなり、元に戻りやすくなります。そして何よりタスクを終えたときに達成感を多く味わえるようになります。
計画立てはTO DOリストだけではありません。どんな場所で行うか、誰と行うか、習慣化したい場合には日常のどの活動のついでに行うか、最初の10分で何をするかなどを決めていきます。
この過程で、その先延ばしタスクをしている自分が映像で思い浮かぶぐらい具体的に想像できていることが成功の秘訣です。
STEP(4) “やらざるを得ない状況”を作って脱線を防ぐ
■日々の管理に必要な必然性を環境設定
前のステップでどんなに細かく設定できても、それでも先延ばしする確率は十分にあります。なぜなら、私たちは「計画立て」というと、なぜかいつも理想の自分を描いてしまうのです。「こうなったらいいな」と全く実態を無視してしまうのです。
こうした場合には、そのタスクをしないとまずい状況(必然性)の設定をおすすめしています。例えば、身近な人に「今日はカレーを作るから食べに来て」と誘ってみたりすればもう引っ込みがつかなくなります。こんなやらざるを得ない状況を作り出すのが最後のステップです。
次回の記事では、「他人を優先する癖が、実は先延ばしの原因!?“自己犠牲チェックリスト”」を紹介していきます。
※本記事は、書籍『先延ばしグセ、やめられました! 書いてみるとうまくいく』より一部抜粋して構成しています。
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#1:50代の先延ばしが一気に消える“実践4ステップ”
#2:他人を優先する癖が原因!?“自己犠牲チェックリスト”
#3:好きなものがないが激変!「本屋」と「スマホ」にあるヒント
もっと詳しく知りたい人は、中島さんの書籍をチェック!

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