家にいる夫の家事・成長作戦1
何もしない家にいる夫…50代妻が見つけた“料理を始めさせるコツ”
何もしない家にいる夫…50代妻が見つけた“料理を始めさせるコツ”
更新日:2025年11月06日
公開日:2025年10月29日
コンビニ弁当の空き容器を見るたびに気が滅入る…
平日の夜9時すぎ。疲れて帰宅した私の目に入ったのは、キッチンに残る空の弁当容器。
「またコンビニか……」とつぶやいた瞬間、胸の奥に小さなため息がこぼれました。
夫は定年退職して1年。62歳、ボサノバを愛する穏やかな人です。仕事一筋で家庭のことはほとんど私任せ。家事どころか、包丁を握る姿も見たことがありません。
私は今もフルタイムで週5勤務のため、正直、家のことをすべて担うのはしんどい時があります。だから、夫が「手伝うよ」と言ってくれるだけでもありがたいか……と思おうとしていました。
けれど、夫の昼食はほぼ毎日コンビニ弁当。
健康にもお金にもよくないし、なにより“料理ができない夫”という現実が、私の中でずっと引っかかっていたのです。
「手伝う」じゃなく「自分でやる夫」になってほしい

「お昼、何食べたらいいかわかんないんだよな」と、ある晩ぼそっと言った夫の言葉に、私は思わず反応しました。
「ねえ、会社勤めしてた頃、ランチって何食べてた?」
「ん? だいたい豚の生姜焼き定食だな。あれ好きだった」
——その一言が、すべての始まりでした。
「じゃあ、それを自分で作ってみるのは?」と軽く提案してみると、夫が思いがけず前向きに。
「え~、生姜焼きなら食べたいけど、俺でもできるのか?」
思わず「よっしゃ!」という気持ちを飲み込んでで、私は力強くうなずきました。
初めての挑戦。夫、台所に立つ
翌週末、私は生姜焼きに必要な調味料を“セット化”しました。しょうゆ、みりん、チューブのすりおろし生姜。計量スプーンもまとめて、カゴに「生姜焼きセット」とラベルを貼り、冷蔵庫にIN。
調味料を探す、分量を調べる——そんな小さな“面倒”や段取りのハードルを下げておくと、初めての料理でも失敗しにくくなります。これは今まで経験した妻だからわかること。
「これで何でも作れるぞ!」と笑う夫を見て、心の中でガッツポーズ。その日の昼下がり、台所からじゅうじゅうと香ばしい音が聞こえてきました。
「おっ、いい匂い!」と声をかけると、「どう? なんかいい感じっぽいよな?」と少し緊張気味の夫。
味見してみると、なかなかいける。
「ほんとに初めて?」「上手!」「お店みたい!」と褒めると、夫の顔がふっと明るくなりました。この瞬間、私の心の中で“作戦成功”の文字が点灯!
その日から、彼の“料理人生”が静かにスタートしたのです。
週3で生姜焼き!“夫の料理スイッチ”が入った
それからというもの、夫は週3ペースで昼食に生姜焼きを作るようになりました。
「今日の豚ロースは厚めにしてみた」
「生姜をすりおろしに変えてみた」
そんな報告を受けるたびに、私の疲れもどこかへ吹き飛びます。
夫はやがてネットで「生姜焼き レシピ」「酒と砂糖 割合」などを検索するように。「砂糖を入れるとコクが出るんだな」「玉ねぎ多めもアリだな」——そんなふうに研究を始めました。ついこの間まで料理から遠いところにいた人が、まさかの“レシピ探求モード”。ときどき、週末にも作ってくれるようになりました。
「油多すぎ!」「そんなにしたら洗い物が大変じゃない……」思わず口を出したくなる瞬間もありましたが、そこはぐっと我慢。“見守る”のも妻の腕の見せどころです。
夫が料理を続けるようになった3つの工夫
この経験を通して、「続く夫」に変わった理由を考えてみました。
- まず、好きなメニューから始めたこと。自分の好物なら、自然とやる気が出ます。
- そして、手順を細かくしすぎなかったこと。ざっくりでいいんです。
- 最後に、褒めること。これは何より効果絶大。
この3つだけで、家の空気が変わりました。
1か月が過ぎた頃、夫に聞いてみました。
「会社でよく食べてたランチ、他にもある?」
少し考えて、「サバの味噌煮と、マーボー豆腐かな」と答える夫。魚は片付けが大変そうなので、「おいしい缶詰があるんだって」と軽く誘導。続いて「マーボー豆腐なら簡単かもね」と提案すると、「いいかもな!」とやる気スイッチが再びON。
こうして、次なる“チャレンジ料理”が決まりました。
興味のあることから少しずつ広げていく——それが“続ける力”になるのだと実感します。
何もできない夫でも、できるようになる
夫に家事を“やらせる”のではなく、“やりたい気持ちを引き出す”。そのためには、
- 興味のあるものから始める
- できたことを褒める
- 続ける環境を整える
——この3つがポイントです。
「できない」と決めつけていた夫が、今では自分の料理を写真に撮るほどのハマりよう。
マーボー豆腐の次は「チャーハンに挑戦してみようかな」と話しています。
夫の変化を見て、私も気付きました。
誰だって、いくつになっても新しいことを始められる。
そのきっかけを、家庭の中で見つけられたのは、私にとっても小さな幸せでした。
……次は洗濯に挑戦してほしいな。




