海原純子さんの幸せに生きるヒント6
医師伝授!気持ちよく「ノー」と断る人になるヒント
医師伝授!気持ちよく「ノー」と断る人になるヒント
更新日:2023年05月12日
公開日:2021年07月24日
海原純子(うみはら・じゅんこ)さんのプロフィール
1952(昭和27)年神奈川県生まれ。東京慈恵会医科大学卒業。医学博士、心療内科医、産業医。昭和女子大学客員教授。最新刊に『こころの見方 いい気分を貯めて暮らしたい』(毎日新聞出版刊)。心をラクに、幸せに暮らすためのヒントを学ぶオンライン講座・動画も人気。
相手も自分もOKなゴールを目指す

今回は総まとめとして、アサーティブに心地よく「ノー」と言いましょう、をテーマにお話しします。
まずはアサーティブについて、簡単にもう一度復習してみましょう。アサーティブは自分の気持ちや考えを相手に伝え、相手と良いコミュニケーションを作ることができること、といえます。
嫌でもつい我慢して引き受けたり、うんざりしながら不本意な会合に出掛けたり、相手の気分を損ねないように言いたいことを抑え込むのではなく、相手も自分もOKなゴールを目指そう、というコミュニケーションの方法です。
それではワークショップを始めましょう。あなたも参加してください。
ワーク1:ブティックでのショッピング

例題です。あなたはショッピングセンターのブティックでウインドーにちょっといいかな、と思うワンピースを見つけました。ただそれはノースリーブ。ノースリーブは着ないので半袖がないかしら?と思いながら店に入りました。店内を見渡しましたが半袖は見当たりません。
そこに若い女性の店員さんがやってきて「気になるものがありましたら試着してください」とあなたに声を掛けました。そこで「ウインドーの服のデザインで半袖がないかしら」と尋ねました。店員さんは奥からいろいろ出してきますが、ウインドーにあるような感じの服はありません。「ちょっと違うなあ」と言うと「少々お待ちください」と言いながら彼女は再び奥に行き、また数着を持ってきます。
1枚はまあまあかな、と思いましたが、どうしても欲しいというほどではありません。「試着してはいかがでしょう」と店員さん。ケースの上には彼女が持ってきた服が並び、何となくこのまま帰るのはどうかな、という雰囲気です。
さあ、あなたはどうしますか?
店員に対しての反応でわかること

こういうこと、よくありますよね。店に入ってすぐ、「見てるだけですから」と言った場合はいいのですが、なまじウインドーに気になった服がありそのことを伝えてしまった場合は、何となく立ち去りにくいですね。
実際のワークショップに出席したみなさんはどうだったかと言うと……「安いものなら買ってしまうかも」「よく行く店だと断りにくい」「ごめんなさい、でもぴったりこれというものがなくて、と断る」「若い男のイケメン店員さんなら買ってしまうかも」などという発言も出て、みなさん大笑いでした。
いろいろな意見がありましたが、買わない方は全員が「ごめんなさい、でも」という言葉で始まりました。なぜ「ごめんなさい」なのでしょうか? 店員さんが洋服を提示して商品を見せるのは、仕事です。見せられたものを必ず買わないといけない、というルールなどありませんね。
とはいえ「ごめんなさい」と言わないと物事がスムーズに運ばないと思い込んでいる「ごめんなさい幻想」にはまっていないでしょうか?
気持ちよくいらないものはいらない、と伝えるには

ではアサーティブに気持ちよく、いらないものはいらない、と伝えるにはどうすればいいでしょうか?
私ならこんなふうに言うでしょう。「ありがとう。たくさん見せてくれて。でも私が探しているようなものがなかったから」と言って買わない選択をします。
「またウインドーを見に来ますね」と言って店を出ればいいのではないかと思います。これならお互いにwin-winの感じで終わるのではないでしょうか。
店員さんは売り上げになりませんでしたが、あなたも欲しい服が買えなかった。でもお互いに、見せてくれてありがとう、店に来てくれてありがとう、でいいのではと思います。
「ノー」と言える!アサーティブになるときのヒント

では、アサーティブになるときのヒントをお話ししましょう。
- 自分の「心と体」はどう反応しましたか?
何か頼まれて嫌だな、と思ったとき体が緊張したり、呼吸が苦しくなったりしませんでしたか? 体が反応したときは嫌、というサインです。 - 理不尽と感じたら、説明を求めましょう。
頼まれたとき、詳細を説明してもらいましょう。するかしないか決めるのは、その説明を受けてからです。 - 考えてみましょう。
頼まれたことをするのは、自分がしたいからか、相手に嫌な顔をされないためか、それを引き受けて自分が苦しむことにならないか。きちんと整理しましょう。 - 「ノー」と言うことに、言い訳をしないと心に決める。すぐわかる嘘はやめましょう。
例えば“家族”を断る理由にするのはやめましょう。すぐ嘘だとわかります。ダメなときはダメでよく、その事実だけを言えばいいのです。 - 壊れたCD対応を応用する。
壊れたCDは何度も同じところを繰り返しますね。断るときはそれをまねしましょう。どのように手を替え品を替え頼まれても、いつも返事は「ノー」。それでいいのです。
ワーク2:義母への対応、アサーティブな方法は?

前回の記事の宿題「パリに住む夫の両親からの誘いでフランス旅行へ。夕食は義母の手作り和食をいただくことになっています。残念なことに義母はとても料理が下手です。さて、あなたはどうしますか?」について、みなさんはどうお考えになりましたか?
義母の料理は食べたくないし、せっかくのパリで当然外食、とあなたが思うなら「お母様、私はパリのレストランに行きたいです。ぜひお付き合いください」と伝えます。あなたがしたいことを優先する、したくないことはしない、そして相手を傷つけない方法を選ぶことがアサーティブな対応です。
アサーティブになれない9つのパターン
アサーティブになりにくい人のパターンを、「よく言うせりふ」を例にご紹介します。あなたは大丈夫ですか?

- 許可願い人間:「断ってもいいんですよね?」「休んでもいいんですよね?」「しなくてもいいんですよね?」「反対してもいいんですよね?」
何をするにもその場のトップや権威者の許可をとらないと決められないタイプ。ただしこういう人は夫の言うままになり、姑の言うことを聞くのでいい妻、いい母、いい嫁、いい奥様という評価が得られている。 - 依存人間:「私の代わりに子ども(夫)に言ってやってください」
自分で自分の意見や気持ちを伝えることができず人に頼む。姑や子どもに自分の気持ちを伝えるときに、第三者の医師や教師など相手にとって話を聞かなければならない立場の権威者に頼み、自分は陰に隠れている。 - 丸投げ人間:「どうすればいいですか」
どうすればいいか私にはまるでわからない、どうしよう、あなたにお願い、と人に丸投げして責任を放棄。結果うまくいかないと「あの人に頼んだからうまくいかなかった」などと責任を人に押し付けて知らん顔、というタイプ。 - 脅迫人間:「お前が結婚しないとお母さんは恥ずかしい」「○○してくれないなら、私は生きている意味がない」
それをしてくれないと私は傷つく、と人の罪悪感を刺激して相手を操作する。そんなことをすると家の名誉を失う、などと子どもの進路を決める。 - 弱々しさの演技人間:「私はそういうことには向いてなくて」
私は弱いから何もできない、という演技を無意識にしながら逃げ、相手にやってもらう。 - レッテル貼り人間:「どうせ」「だって」「私なんて」「もう年だから」
このようなせりふを多発して、自分の可能性を失わせる。 - 言い訳人間:「ただの主婦ですから」「あなたのように丈夫ではないから」「あなたのように頭がよくないから」
言い訳をして、相手が自分に期待しないように仕向け操作して、責任から逃げる。 - 被害者意識人間:「子どもがいるから何もできない」「結婚してるから自由がない」「忙しいから何もできない」
できないことを条件のせいにする。 - “たら れば”人間とうわさ話人間:「もし○○だったら私もうまくいったのに」
現実逃避をしたり、人のうわさや悪口で時間をつぶす。
「自分がどうしたいか」を優先して考えよう

数回にわたり実際に開催したワークショップを通して感じたことが、いくつかあります。まず一つは、みなさん共通して、ご自分の気持ちやこうしたいという思いを表現することに、無意識に抵抗をお持ちだということです。そのために何か頼まれたり決めたりしなければいけないとき、「自分がどうしたいか」と主体的に考えることより先に、「この場をうまく波風を立てないように収めるにはどうするか」と考え、そちらを優先してしまうのです。
その決定が自分も望むことならいいのですが、嫌なのにその場を収めるために我慢してしまうと、そのしわ寄せはいつか自分だけでなく周囲にも来てしまいます。
いい妻、いい母、いい嫁は大事です。でも自分の考えや気持ちを伝え、自分も周りもお互いに心地よくなるにはどうするか、これがアサーティブなのです。
年をとると残された時間も短くなる、ならば大事に時間を使いましょう。人の悪口やうわさ話をしたり、誰かの顔色を見てびくびくしたりというのが一番の時間の無駄。自分らしく心地よいコミュニケーションについて考えて、自分らしく生きましょう。
構成=前田まき(編集部)
※この記事は「ハルメク」2017年9月号掲載「こころのはなし」を再編集しています。
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