犬もわが家族
エッセー作品「犬もわが家族」古本 優子さん

公開日:2021年02月02日

通信制 青木奈緖さんのエッセー講座第3回

エッセー作品「犬もわが家族」古本 優子さん

エッセー作品「犬もわが家族」古本 優子さん

「家族」をテーマにしたエッセーの書き方を、エッセイストの青木奈緖さんに教わるハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から青木さんが選んだエッセーをご紹介します。古本 優子さんの作品「犬もわが家族」と青木さんの講評です。

犬もわが家族

小型犬のヨークシャーテリアが家族の一員に加わったのは、上の息子が小学4年生の時でした。
ペットショップから来たその犬は環境が変わったせいか、お腹をこわし、与える餌を全く食べようとしませんでした。やっと手の平にのるくらいのサイズでしたから、これでは弱ってしまう、どうしようと皆で頭をかかえこんでしまいました。
翌日、庭で遊ばせていた時チャボの小屋の近くに行き、ちらかったチャボの餌を舐め始めました。どうして味も香もなさそうなものを口にしたのかわかりませんが、その日から自分の餌を食べることができるようになりました。
家族全員で大喜びしたのを40年以上たった今も覚えています。

その犬が元気に成犬になり、子犬を幾度も産んだときもあります。
1匹から3匹、多い時は一度に5匹も産みました。
小学生だったうちの子供達が餌やりをし、食べちらかして顔中汚した子犬達を拭いてやったり、床の新聞紙を替えてやったり、家族全員が忙しい毎日でした。
生後3週間もして愛くるしくかけ廻る姿が忘れられなくて、また子犬を産ませ、その忙しさを繰り返すのでした。

子犬が手放せず、家に残したことが2回ありました。
結局3匹になったヨークシャーテリアと3人の子供がいる賑やかな生活が続きました。
現在老夫婦2人になってみると、その頃の忙しさが一番楽しかった風景として思い出されます。

3匹の犬達が次々と寿命で亡くなり、その後うちに来た犬は中型のエアデールテリアでした。
妹の所でたくさんのチワワと一緒に飼われていたその犬は、小型犬を傷つける心配があるので、いつも一番先に叱られ、必要以上に厳しく育てられていました。

そんな環境の中で生れたばかりのチワワの赤ちゃんをちょっと咬んだだけで瀕死の重傷を負わせるという事件が起きました。
そこで、同じ環境では飼えないということになり、再訓練の専門家に預けられました。
リードを持った人と歩く時は、人より先に出ないこと、人が止まったら横に並んで座ること、そういう訓練をきちんとされた犬をわが家に迎えたわけです。
犬は訓練を受けても急に飼い主になった私に専門知識はなく、犬は段々私の顔色をみることを覚えてしまいました。
私を怖くない人と認識したようで、人より先に歩かないという事も時々忘れてしまうようになりました。ダメと注意するときちんと私の足もとに戻るのですが、つい飛び出てしまうのです。

私にとっても中型犬と歩くことは健康的な生活をするための良い手段でした。
犬と同じくらい散歩の時間を楽しみに一日を暮らすようになりました。
何十年も住んでいた町に新しい発見がたくさんありました。
畑の横のぬけ道、田んぼの畔道、川原の土手道など、犬が一緒でないと決して通らないような道を歩きました。

リードを持っているだけで、犬が何に興味を持つか伝わるようになります。他の犬とすれ違っても、ダメよ、と言うと近寄ることもなく歩いて通りすぎるようになりました。

やがてこの犬も老いて、肝臓の病気で療養の身になりました。
車のトランクに前足からゆっくりかかえて乗せてやり、私が運転をして動物病院に通いました。

ところが、その日は主人が運転席に座っていたものですから、トランクを開けると大喜びで元気だった頃のように思わず自分で飛び乗ろうとしたのです。
主人の運転で一緒に遠くまで遊びに行ったことを思い出したのではないでしょうか。
思いっきりお腹をトランクの台にぶつけ、痛めていた肝臓をひどく打撲してしまったのです。
病院について間もなく具合が悪くなり、その日のうちに亡くなりました。

実は二日前に私の母が亡くなっていて、葬儀の準備に行くところでした。
縁のある動物は飼い主に従っていくことがあると後で教えてもらいました。

 

青木奈緖さんからひとこと

このタイトルが表す通り、身近にいる動物も家族のエッセーとなります。
古本様が作品を書いていらっしゃる間中、頭の中できっと元気な犬が飛び跳ねていたのだろうと想像します。

すべて過去の出来事ですが、文末が単調にならないように工夫して書いていらっしゃいます。


ハルメクの通信制エッセー講座とは?

全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回家族の思い出をエッセーに書き、講師でエッセイストの青木奈緖さんから添削やアドバイスを受けられます。講座の受講期間は半年間。

現在、雑誌「ハルメク」の誌上とハルメク旅と講座サイトで3月から始まる第2期の参加者を募集しています。詳しくは、こちらをご覧ください。

 

■エッセー作品一覧■

 

ハルメク旅と講座
ハルメク旅と講座

ハルメクならではのオリジナルイベントを企画・運営している部署、文化事業課。スタッフが日々面白いイベント作りのために奔走しています。人気イベント「あなたと歌うコンサート」や「たてもの散歩」など、年に約200本のイベントを開催。皆さんと会ってお話できるのを楽しみにしています♪

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