「終活をしない」という選択:新しい終活のかたち
2024.11.112023年09月01日
あなたの終活、間違ってます!4・お墓の終活について
どう決めればいい?迷うほど選択肢が広がるお墓事情
終活コーディネーター・吉原友美さんが、新しい視点で終活を見つめ直す連載。第1回と第2回の「片付け」、第3回の「葬儀」に続き、今回のテーマは「お墓」。選択肢が広がる中でどんなお墓や供養を希望するのか、その選び方のポイントについて考えます。
吉原友美(よしはら・ともみ)プロフィール
東上セレモサービス常務取締役、終活コーディネーター。
自身の家族が早くから他界。その経験から死生観を育成して生きていくことの大切さを知る。終活セミナーでは絵本を使い、死生観育成について伝えている。また、最新の終活事情・葬儀・お墓・相続についてもわかりやすく解説する。セミナーの参加数は累計1万5000人以上の人気を誇り、自社では3万件以上の葬儀を承っている。
お墓のことは元気なうちに何とかしたいが……
「あなたの終活、間違ってます!」第1回と第2回の「片付け」、第3回の「葬儀」に続き、第4回のテーマはお墓の終活です。
お墓を取り巻く環境は、近年大きく変わってきており、私のセミナーにいらっしゃる方からも「ここ数年でお墓の種類も増えた気がするけど、どれがいいのかよくわからない」「家族にも迷惑をかけたくないから、元気なうちにお墓のことも何とかしておきたい」といったお声をよく聞きます。
お墓は、代々受け継いできたものがあればずっと管理していく必要がありますし、手放すにしても手続きなどいろいろと手間と労力がかかります。まして新しく用意するとなると、かなり大きな買い物となります。
いずれにしても、「お墓のことをこれからどうするか」については自分一人では決められないことが多く、終活のさまざまなテーマの中でも特に「家族と一緒に考えること」が求められる課題といえます。
樹木葬、納骨堂……お墓の選択肢は多様化している
お墓の終活は選択肢が多いので、考え始めると誰もが悩みます。すぐに正解を求めず、あらかじめ「悩むものだ」と割り切ってしまうくらいが良いかもしれません。
私がご相談を受けるケースでは、「後継ぎがいない」「残される家族に負担をかけたくない」といった理由から墓石を撤去して墓所を更地にし、使用権を返還する「墓じまい」を検討される方が多くなってきました。
他にもお寺から離檀(檀家であることをやめること)したいとか、近所に樹木葬墓地ができたのでお墓の引っ越しを希望する、という方もいらっしゃいます。
今は、「骨壺の行き先の選択肢が増えた時代」といえるのかもしれません。それにともないお墓への意識や考え方も多様化し、終活世代を中心に人々の関心も年々高くなっているように感じます。
こんなにあるお墓や供養の種類
人が亡くなった後の遺骨をどのような形で供養するかについては、主だったものだけでも次のような方法があります。
- 一般墓:家族が家単位で継承する、一般的な墓石のあるお墓
- 樹木葬:樹木を墓標とし、その周囲に遺骨を埋葬する共同墓の一種。墓石を置くタイプもある
- 海洋散骨:粉骨した遺骨を海にまいて埋葬する自然葬
- 納骨堂:寺院や公営・民営の霊園などが管理する納骨スペースに遺骨を収めるもの
- 合祀墓:不特定多数の遺骨をまとめて埋葬する共同墓。基本的に改葬は不可
- 手元供養:遺骨を分骨して自宅などで供養する方法
墓地や納骨堂などの管理者についても、「公営:自治体や公益法人が管理運営」「民営:企業や宗教法人が管理運営」「寺院が直接管理運営」と種類があります。寺院の墓地はその敷地内にある場合が多く、檀家のお墓がほとんどですが、最近では檀家以外のお墓も建てられるケースが増えてきました。
また、最近のトピックとしては、「墓じまいがセット」になったお墓が登場して注目されています。お墓の継承者が将来的にいなくなってしまっても、墓所の解体・撤去や永代供養墓への改葬までがセットになっているという、消費者ニーズに応えたサービスです。
このように、今はネットで検索するだけでもいろいろな情報が出てきます。できれば実際にお墓を見学したり説明を聞いたりして、自分に合ったものを検討し、選んでいくことをおすすめします。
あなたはお墓に入る?入らない?さあどうする?
「お墓に入る意向の有無」という意識調査※では、「お墓には入る」と答えた人が49.3%とおよそ半数でした。その一方、「お墓に入らない」とする人が23.6%、「わからない」とする人も27.1%。長年、終活事業に携わってきた私から見ると、お墓に入ることが絶対という考え方は、徐々に薄れてきている感があります。
その傾向は同調査の別のデータにも表れており、「家族は先祖代々の墓に入る方が良い」「妻は夫の家の墓に入る方が良い」という考えに肯定的な意見は、30年前にはいずれも6割程度ありましたが、近年では4割前後まで低下しています。
※冠婚葬祭総合研究所「葬祭等に関する意識調査」(2022年調査)
お墓に入ることが暗黙の了解でなくなりつつあることは、お墓に「入る」「入らない」を選ばなくてはならない、そしてその意思を示しておかないといけない、ということでもあります。
その意思が伝えられないまま亡くなってしまっては、残された側も供養の仕方に悩んでしまうことになります。この意味でも、やはりお墓については家族と一緒に考え、話し合い、方向性決めておくことが大切です。
【教えて、終活先生!】お墓のことは何を決め手に考えればいい?
選択肢が広がり続けるお墓事情を前にして、やはり「多すぎて選べない」「決めるのが難しい」という方もいらっしゃると思います。
方針を決めたとしても、購入先が完売していたり、希望するお墓が見つからなかったりなど、なかなか悩みは尽きません。
そういうときは、考えることを一度止めてみるのも良いでしょう。「今は選べなくてもいいんだ」と、悩み自体を手放す勇気を持つことも時には必要です。
今は終活がブームのようになっていて、自分はこうするという「答え」を持っておかないといけない、と焦らされてしまう部分もあると思います。しかし、終活は本来自分と向き合いながら進めていくもの。
すぐに答えを求めなくてもいいし、一度出した答えが後で変わってもいいんです。自分らしく、自分のペースで、お墓や供養のことを考えていってくださいね。
お墓は先祖を想い、心満たされる場所
私にとってお墓は、その前で手を合わせ、ご先祖様に感謝を伝える場所です。亡き人を思い出し、いつも見守ってくれていることに「ありがとう」と素直に言えるよう、精いっぱい生きていくことの大切さを再確認する場でもあります。
私はいつもお墓参りに行くと、白玉団子21個と日本酒、生花をお供えし、白い雑巾で墓石を拭き、手を合わせて感謝の言葉を伝えています。お供えしたものは持ち帰り、造花を生けて帰ります。
これは我が家のお墓参りのやり方ですが、みなさんはどのようにされていますか? それぞれの家の慣習を、ぜひお子さんやお孫さんたちに伝えていってあげてください。先祖供養という習慣が、何か困ったときの心の拠り所になることがあるかもしれません。
お墓という祈りの場は、私たちの心をきっと満たしてくれます。
連載コラム「あなたの終活、間違ってます!」。第5回目となる次回は、私の母が残してくれたレシピに触れつつ、「目に見えないもの」の伝え方・残し方について考えてみたいと思います。どうぞお楽しみに!
スペシャル動画を見る
コラム第1回を読む
コラム第2回を読む
コラム第3回を読む
コラム第5回を読む
コラム第6回を読む
コラム第7回を読む
コラム第8回を読む
東上セレモサービス加入者様(互助会会員様)は
初年度年会費無料でハルメク365本会員登録ができます
詳しくはこちら
■もっと知りたい■