50代からの夫婦関係、見つめ直して幸せ老後に#6

向き合えない夫婦の問題に名越康文さんが回答!

公開日:2021/08/17

更新日:2021/09/04

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50代からの夫婦関係を考える特集第6回目は、夫婦間の「モヤモヤ」に心理学の側面からアプローチ! 人気コメンテーターとしても活躍中の精神科医・名越康文さんに「夫がわからない」「夫と会話できない」「家事が不公平」という不満の解決策を聞きました。

向き合えない夫婦の問題に名越康文さんが回答!

「こうあるべき」という道徳的価値観は一度やめてみる

「まず『こうであるべき』という思考停止の状態が自分を苦しめていないか、ということは一度チェックしてみてもいいという気がします。もしもピンと来ない方がいらっしゃったらですが、例えば子どもへの関わりを思い出してみてください」と名越康文さん。

子育てをしていた頃。あるいは自分が子どもだった頃。毎朝「起きなさい!」と子どもを起こした(起こされた)経験は、誰しもあることかも知れません。
 
「朝起きて学校へ行く。もちろんこれは本来『子どものタスク(=課題・すべきこと)』であって、親のタスクじゃないんです。頭ではわかっていても、子どもがぐずぐずしていると、ついお尻を叩いて余計な世話を焼いてしまう。それが親の責務=『そういうもの』だと思いこんでいるからです。

あくまでも心理学的には、ですが、子どもの課題に親が踏み込む場合は、いったん『朝は自分で起きることができますか?それとも親に起こしてもらいたいですか?』などと、と子どもに問うことがスタートになるんです。もちろん他の問い方でいい。当たり前、ではなくて話し合って決めてゆくことが必要なときもあります」 

名越さんは「夫婦の関係も同じ」と続けます。
 
「もしも、『愛情はあって当たり前』とか『夫婦とはこうあるべきもの』とか、そういう枠組みに押さえつけられていて、知らない間に自分の生き方自体が苦しくなっているとすれば、それは『道徳』の刷り込みなのかも知れないです」 

夫に対する気持ちが「わからない」もある

夫に対する気持ちが「わからない」もある

読者150人からのアンケートでは「夫を愛していますか?」と質問したところ、夫を「愛している」「愛はないが情はある」と回答した人を合わせると85.3%と大半でした。その一方で、「わからない」と答えた人は10.9%でした。
 
「わからないという回答は夫婦としてどうなの?」と疑問に思った人もいたかもしれません。しかし名越さんは「心理学的に見たら、自分が夫を愛しているかどうか『わからない(10.8%)』という答えは、自分の気持ちに問いかけて出てきた、ありのままの答え」と解釈します。
 
「どのような関係においても、いつの間にかどこか強制的に相手を受け入れようとしていれば、苦しくなって気持ちが枯渇してゆくことにもなります。自分と他者の考え方や感じ方が違うのは当然ですし、夫婦関係の幸せの基準も人それぞれ。ただ『夫婦はこうあらねばならない』という思い込みが強い場合は、もしかしたら自分の素直な気持ちからではなく、刷り込まれた道徳観であると気付くことで、生きやすくなる人がいることは事実です」と名越さんは言います。
 
確かに「母親・妻ならこうあるべき」といった価値観にどうしても縛られているというのは、実感がある方は多いのでは。また「自分の気持ちがわからない」のも、当然あることだと言われると少し安心します。 
 
「でも僕がこういうことを話すと、また新たな刷り込みが生まれてしまうのがややこしいところ(笑)。それぞれの人が、この記事をきっかけに『自分はどう生きてゆこうか』と考えるきっかけになったらいいですね。こう生きろ、では断じてなくて、あなたの思いを知りたいというのが心理学の基本ですから」
 
「夫婦関係とは、かくあるべし」という刷り込みからいったん離れたところで、
 
「本当のところ、愛情があるのかどうか知りたい。表面上、お互い明るく振る舞っているが、仮面なのかどうかわからない」(グーマ 65歳)
 
「(問題があって)解決しようとしても、(夫が)聞く耳を持ってくれない」(まあいいかさん。 64歳)

 

といった読者の「分かり合えない」「話し合えない」という夫婦関係のお悩みについて、名越さんに伺っていきましょう。

他人は自分を映す鏡。夫婦は横の関係から再スタート

他人は自分を映す鏡。夫婦は横の関係から再スタート

人間は関心を持たれると、自分を表現したいと思う生き物なのだ、と名越さんは言います。
 
「自分は傷ついている、悲しい。そんなとき、相手があなたの感情に関心を持ってくれることで、人は自分の感情に目を向けることができるようになるんです。鏡になってくれることで、あなたも自分の姿が見える。『あ、私はこういう理由で傷ついてるんだ』『私は悲しいんだ』と気が付いて、どう傷ついているのか、どう悲しいのか、気持ちを言葉にしやすくなるんです。
 
『関心を持つ』ことは一種のスキルなので、意外と身に着けられていない人が多いものです。お互いにしっかり向き合っています、という方はそんなに多くないんじゃないでしょうか。もっと言えば、『愛してはいても、関心はない』っていう人もいるかもしれません。 愛し方は人それぞれですし『愛している』と『関心を持つ』は別カテゴリだと思っていただけたらいいと思います」(名越さん)
 
では、「関心を持つ」とはどういうことなのでしょうか。
 
「一から説明するのは難しいので、関心がある方は本やWEBで調べられた方がいいのですが、アドラー心理学の考え方では、相手に関心を持つことから横の関係を結べると考えます。『わかってやろう』とか『理解してやろう』という、上から目線で相手をコントロールするような発想は縦の関係。それでは、相手は自分のことを表現したいという気持ちにはならないでしょうし、関心を持てているとは言い難いです。だから、まずは対等な横の関係を結ぶ、あるいは話し合うときだけでも少しそういうことに注意するということで、話し合う雰囲気が生まれます」
 
ほんの一例ですが、仕事で遅く帰ってきて一緒にごはんを食べない夫に腹を立てた場合で考えてみましょう。

縦の関係だったら、例えば「食べないなら、もうご飯作らないから!」という高圧的な伝え方になります。しかし横の関係であれば、例えば「一緒にご飯を食べたいから早く帰ってきて」という言葉遣いになるかも知れません。
 
「職場や友人関係で人として関心を持ち合うことを誰しもやっているはずなのに、なぜか家族関係となるとモードが変わってうまくいかない人が多いのかも」と名越さん。
 
読者コメントの中でも「私はあなたのお母さんじゃない」という夫に伝えたい一言がありましたが、長年の夫婦関係の中でいつの間にか親子関係に切り替わってしまっていることも、横の関係を築くことを邪魔しているようです。
 
「家庭の中では、つい女性は母親になって、夫は子どもになるという役割依存が起きがちです。もしそれがいろいろ支障をきたしているということでしたら、別の場面でのご自分の経験を応用してみるのも助けになることがあります。

人生の経験の中で、学校のクラブの仲間や会社の同僚たちとうまく協力し合った経験を思い出して、相手の気持ちに冷静に寄り添ってみることで関係性は変わるかもしれません。相手にいきなりアプローチしなくていいんですよ。日頃はお互いに好きな時間を過ごして、何かちゃんと話し合った方が良いタイミングで、お互いに余裕のある時に『ちょっと相談があるのですが、いいでしょうか」と丁寧に、親睦的に始めてみては」
 
とはいえ「家事の分担とか、どうしても解決したいことがあるのよ!」という気持ちもありますよね。そこで次回も引き続き「夫婦関係のたいていの問題を解消できる」方法と考え方を名越さんに伺います!

名越康文さんのプロフィール

なこし・やすふみ 精神科医。相愛大学、高野山大学客員教授。専門は、思春期精神医学、精神療法。臨床に携わる一方で、コメンテーター、映画評論などさまざまな分野で活躍。メールマガジンや動画チャンネル「シークレットトーク」も配信中。

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浅野裕見子

あさの・ゆみこ フリーライター・編集者。大手情報出版社から専門雑誌副編集長などを経て、フリーランスに。AERAや週刊朝日、宝島社ムックなどに執筆中。インタビュー記事やノンフィクションを得意とする。子どもの頃からの大の猫好き。現在は保護猫ばかり6匹と暮らす。日本BBQ協会上級インストラクターでもある。

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