【50代女性タイプ2】母親世代の夢の重圧に苦しむ

50代「女は損」という呪縛型女性の人生観・恋愛観

公開日:2019/12/21

更新日:2020/07/08

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ひと口に50代と言っても、さまざまなタイプの女性がいる。今回は「女は損という呪縛型女性」について解説しよう。戦争や女性差別の風潮に苦しんだ母親に育てられた影響が大きいといえるだろう。

50代「女は損」という呪縛型女性の人生観・恋愛観

昔ながらの価値観に苦しんだ母親に育てられた娘たち

昔ながらの価値観に苦しんだ母親に育てられた娘たち

アラフィフおよび50代女性の母親たちは、若ければ団塊世代、人によっては80代を超えるだろう。いずれにしても、「女がまだまだ社会進出を果たしていなかった世代」の娘たちだ。

戦争で青春を謳歌できなかったり、本当は大学に行きたかったのに「女だから」と進学を阻止されたり、あるいは大学を卒業しても、結局は高度経済成長のあおりを受けて夫は会社人間となり、自身は専業主婦への道を選ばざるを得なかったりと、自分の望むような生き方ができなかった母親たちに育てられたケースが多い。

母の期待を押しつけられた人、がんばってはみたものの挫折して「結局、女の幸せは結婚」と自分をがんじがらめにして「母親のような道」を歩くしかなかった人など、さまざまなタイプがいる。

母親の期待を一身に背負って育てられて

母親の期待を一身に背負って育てられて

青春を謳歌できなかった母親から、「これから女も仕事を持たなきゃダメ。あなたは仕事を持って社会に羽ばたきなさい」と言われて育ったヨシミさん(仮名・55歳)。

「兄がいたのですが、生後間もなく亡くなったそうで、私は一人っ子として育ちました。そのせいか、母は過干渉でしたね。私はあまり自己主張のできる子ではなかったので、学校で男子にスカートめくりをされても言い返せなかった。母は『女の子なんだから』が口癖。家では家事を手伝わされながら、勉強にもうるさくて、完璧な人間に育てたかったみたい。中学から私立に入れられ息苦しい思いをしながら生きてきました」

子どもの頃から自分で考えて何かを選んだことがなかった。すべて母から与えられたものをこなしていくだけだった。洋服も食べるものも、友達すら自分で選べなかった。

高校生のときに学校へ行けなくなり、とうとう体調を崩して休学、そして退学。翌年、近くの都立高校に転校した。1年遅れだったため、親しい友達もできなかった。それでもなんとか卒業して大学へ。

「母は私を医者か弁護士にしたかったようですが、私にはそんな能力はなかった。バブルの波に乗って就職はできました。仕事はそれなりに楽しかったので、キャリアを積んでいくのもいいかなと思ったのですが、あんなに仕事をしろと言っていた母が干渉をやめない。残業していると電話がかかってくるし、同僚と食事をして帰宅が遅くなると、『誰とどこへ行っていたの』『どんな人と付き合っているの』と。今からでも遅くないから、大学院に行くとか留学するとかして、もっとキャリアを目指せと言われたこともあります」

母の言うことは支離滅裂だったと今になると思う。母自身が自分の生き方にも、「女であること」にも否定的な気持ちを持っていたからだろう。

母から逃げたい一心で「結婚」の道へ

母から逃げたい一心で「結婚」の道へ

そんなプレッシャーから逃れるためには「結婚しかない」と彼女は考え始めた。ここで家を出て一人暮らしをするという選択をしていれば、また別の人生があったかもしれないが、彼女は母を嫌いながらも心のどこかで頼りきっていた。だから母を裏切るようなことはできなかったのだ。

「25歳の頃、同期の男性となんとなく付き合うようになって2年後に結婚、当時の慣習に従って私は会社を辞めました。すでに雇用機会均等法はあったのだから本当は辞めなくてもよかったんだけど、何となく周りが結婚すると辞めていたので、私も……と。そのときは女だから辞めなければいけないというより、結婚という幸せを手にして母親から離れられるうれしさの方が大きかったんですよね」

実家からなるべく遠くに新居を借り、ようやく母から離れられた。その後、妊娠がわかったとき、彼女は急に恐怖感に襲われたという。

「これって結局、私も母と同じ人生を送ることになる、と。私の人生、どこかで間違っていたのではないかと考えるようになってしまって」

女って損だ、自分が女だからこんな人生を送っているのだと彼女は思った。二児をもうけたが、どちらも男の子で、ほっとしたと彼女は言う。

「今、更年期で苦しんでいるんですが、これも女ならではのつらさですよね。男にも更年期はあるというけど夫なんか生き生きと働いています。私も仕事を続けていればよかったのかなと思うこともあります」

いまだ自分を肯定できないヨシミさんは、このところ夫と自分の両方の親の介護で多忙を極めている。これも女だからだ、だから女は損だ、と毎日つぶやき続けているという。

だが、介護を続けているうち、福祉について興味がわいてきた。今は通信制で福祉関係の勉強を始めている。

「損だと言い続けているだけでは、本当に損ですから。どうせやらなければいけない介護なら、いつか身内だけのためではなく、他者にも役に立つ知識を身につけたいと思って」
ヨシミさんは将来を見つめ始めたようだ。

有名大学&企業出身でも再就職は難しい

有名大学&企業出身でも再就職は難しい

同様に大学まで行き、金融関係の有名企業に勤めながら結婚し、妊娠を機に退職。その後は夫のモラハラに耐えながら家庭を守っているアキエさん(49歳)。

「2人の子が学校に行くようになってから再就職をしようと思ったんですが、夫は『子どもが小さいうちは家にいてほしい」と言うので仕事は再開できませんでした。その後、パートで働こうかとも思ったけど、気付けばスーパーくらいしか働くところがなくて」

国立大学を出た彼女にとって、近所のスーパーで働くことはプライドが許さなかったらしい。そういった「ブランド」にこだわるところもアラフィフにはよくあることだ。

子どもたちの世話に明け暮れ、PTAの仕事などもしていると時間はいくらあっても足りなかった。専業主婦は多忙なのだ。

「夫婦関係はよくなかったですね。もともと私が大失恋したときに近づいてきたのが夫。大学のレベルも私の方が上だったし、最初は結婚の対象外だった。でも彼の情熱に根負けして結婚したんです。それなのに大事にされなかったという思いがある」

モラハラ夫と離婚すらできない不自由

モラハラ夫と離婚すらできない不自由

2人の子は現在、大学生と高校生。子どもたちが巣立っていき、夫と2人きりになったら生きていけないとさえ思うそうだ。

「いい大学を出ているのが自慢みたいだけど、そんなおまえを食わせてやっているのはオレだなんて言っちゃう人ですからね。そういう発言を聞いて育った子どもたちがどういう大人になるのか不安です。何度も離婚したいと思ったけど……自分に経済力がないって悲しいですよ」

夫の言葉で専業主婦となった彼女だが、それによって経済力を失い、離婚すらできない。つまり、自分の生き方の選択肢を狭めてしまったのだ。

とはいえ、彼女もまだ若い。これからのことを考えてもいいはずだ。
「夢は卒婚ですね。離婚しないままでもいいので、夫が定年になったら主婦業を卒業したいと思っています。だからせっせと貯金していますし、株やFXの勉強もしています。元手になるものがあれば、いつか自由が手に入るかもしれない」

ただ、自分の人生を振り返ると、やはり仕事は手放すべきではなかったという思いが強い。だからこそ娘には言い聞かせていることがある。

「女って損だと私もつくづく思います。きょうだいの下の子は女の子ですが、絶対に男の言うなりになってはいけない、私のような人生を送ってはいけないと言い聞かせています。自分の人生、独り立ちできなければ自由は手に入らないのだから。どうしても女は自分を曲げて人に尽くそうとしてしまう。そんな生き方は結局、誰のためにもならない、んですよね」

女は損。そう言う人にはそれなりの理由があるようだ。

取材・文=亀山早苗



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亀山早苗

東京生まれ。明治大学卒業後、フリーランスのライターとして雑誌記事、書籍の執筆を手がける。おもな著書に『不倫の恋で苦しむ男たち』『復活不倫』『人はなぜ不倫をするのか』など。最新刊は小説『人生の秋に恋に落ちたら』。歌舞伎や落語が大好き、くまモンの熱烈ファンでもある。

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