政財界のフィクサーを圧倒的な存在感で演じて

WOWOWの「連続ドラマW」枠で放送される「フィクサー」は、「白い巨塔」や「昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜」など数々のヒット作を生み出し、2020年秋の紫綬褒章を受章した脚本家の井上由美子さんが“フィクサー”を題材に描く、3Seasonにわたる大型シリーズ。

総理大臣を乗せた車が事故に遭い、死亡した運転手には飲酒運転の疑惑が生じる中、ある新薬の認可をめぐる密約スキャンダルと事故との関係性が浮上。事故直前に総理と電話で話したのは、主人公・設楽拳一。総理は辞任に追いこまれ、総裁選が幕を開けますが、設楽は“キングメーカー”として動き始めます。

設楽を演じる唐沢さんと共演するのは、藤木直人さん、内田有紀さん、町田啓太さん、小泉孝太郎さん、要潤さん、西田敏行さん、小林薫さんら、錚々たる顔ぶれ。唐沢さんは圧倒的な存在感で、フィクサーとなっていく主人公に扮しています。

「白い巨塔」脚本家の井上由美子さんとは4度目のタッグ

――「フィクサー」の脚本を担当している井上由美子さんとは、「白い巨塔」「メイドインジャパン」「ハラスメントゲーム」に続き4度目のタッグとなりますよね。今回の脚本を読んだ時の印象はいかがでしたか？

唐沢寿明さん（以下、唐沢寿明）
面白かったですね。設楽がどんな人物なのか、ちょっと考えさせられましたけど。裏社会の、よくある善悪のパターンとは少し違って、分かりやすい悪人ではなく、何者なのかが最初は分かりづらい感じではありました。でも、そこが面白いんですよね。

――フィクサーに対しては、どのような印象を抱いていますか？

唐沢寿明
政界や、もしかしたらどの業界にもにもいるんじゃないかな。知らないうちに会っているかもしれないですね。俳優でも監督でも、自分たちはある程度、その世界観の中で操られている部分が多分あると思うので。自分は結構冷静な方だから、簡単に操られるタイプではないですけどね（笑）。

褒めたら何でもやる人とかいるじゃないですか。そういう人は操られやすいんじゃないかと思います。このドラマの中でも、政治家のキャラクターでそういう人物が出てきますよ。

――「フィクサー」はSeason3まで続きますが、設楽の人物像は謎に包まれていて、少しずつ明かされていくのが興味深いです。

唐沢寿明
設楽が迎える結末は、まだちょっと読めないですね。なので、その時その時をやり切って、役を生き抜くしかないと思っています。

このドラマは、ほかのキャストも本当にいいんですよ。脚本にしっかりとそれぞれのキャラクターについて書き込まれているので、「主役とそれ以外」という作品とは一線を画しています。

善人なのか悪人なのか…わからないから目が離せない

――設楽をはじめとする登場人物が、善人なのか悪人なのか判断がしにくいところも面白いです。唐沢さんが特に気になったキャラクターは？

唐沢寿明
要潤君が演じている、設楽の秘書兼運転手の丸岡慎之介。ほとんどセリフがないけど、ものすごい存在感なんですよ。それはやっぱり、井上さんがちゃんとそこに彼がいる意味を書いているからですよね。

――心理戦がポイントとなるドラマですが、設楽はフィクサーでありながらヒーロー的な役割も担っているように感じます。

唐沢寿明
人を引き込んだり突き放したりする交渉能力がある人は、多分生まれつきその能力を持っているんじゃないでしょうか。そして、そういう人に引っかかったり騙されたりする人は、生まれつきそういう人なんですよね、きっと。前者である設楽がその能力をどう生かすか、その辺りに注目して見ると面白いと思います。

設楽にはやりたいことがあるんだと思うけれど、それを最終的に実行することによって何が解決するのかはまだ分からないです。単純な復讐劇ではないことは確かですが。

出演者の顔つきが違う！熱量がすごい作品

 ――骨太な作品ですよね。共演者のみなさんの雰囲気はいかがですか？

唐沢寿明
それぞれ脚本を読んで、自分の役について考え、現場に集まってきた時、ものすごい熱量で来ているという感じが伝わってきます。みんな、顔つきが違いますから！

――「フィクサー」の特にどんなところが見どころでしょうか？ 

唐沢寿明
自分が演じている設楽は究極の裏方で、あまり表に出てはいけないので、彼に動かされるキャラクターたちを見るドラマだと思います。設楽がしていることを注視するのではなく、それによって周りがどう動いていくのかを楽しんでいただきたいですね。

多分、自分は主張が強すぎない設楽みたいなキャラが合っているんじゃないかな。以前、演じた役とかとは全く違って、久々の社会派ドラマです。いい加減もう飛んだり跳ねたり、爆弾抱えて海に飛び込んだりするのも大変です。もちろん、やれと言われたらやりますけどね（笑）。

【後編記事】

• 唐沢寿明！還暦を迎えて役者人生を振り返り

唐沢寿明（からさわ・としあき）プロフィール

1963年、東京都生まれ。NHK連続テレビ小説「純ちゃんの応援歌」（88）、大河ドラマ「春日局」（89）で注目され、「愛という名のもとに」（92）などのトレンディドラマで人気俳優に。大河ドラマ「利家とまつ〜加賀百万石物語〜」（2002）「白い巨塔」（03）「20世紀少年」（08）など数多くの映画やドラマに主演。

「連続ドラマW　フィクサー　Season１」

Season1：4月23日（日）、WOWOWプライム／WOWOW 4K／WOWOWオンデマンドにて放送・配信スタート
毎週日曜午後10:00
※第1話無料放送（全5話）
出演：唐沢寿明　藤木直人　町田啓太　小泉孝太郎　内田有紀
唐沢寿明
藤木直人　町田啓太　小泉孝太郎 ／ 西田敏行（特別出演） ／ 内田有紀　小林薫
脚本：井上由美子
製作著作：WOWOW

取材・文＝清水久美子　写真＝泉三郎　編集＝鳥居史（ハルメク365）