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- バチェラー4!婚活が演じさせた幻想の女性像が憂鬱
コラムニストの矢部万紀子さん(60歳)による、月2回のカルチャー連載です。今回は婚活サバイバル番組「バチェラー・ジャパン」のシーズン4を鑑賞。革新的だと感じた前作とは異なり、「ガッカリ感」があった理由を考えます。
2021年11月末から配信中の「バチェラー4」を鑑賞!
やたらと寒かった年末年始に「バチェラー・ジャパン」シーズン4(Amazonプライム・ビデオ)を見ました。全世界30か国以上でエピソードが製作されている、人気恋愛リアリティ番組のシリーズ。シーズン4に、全10話、10時間余りを費やして感じたのは「女性自らが『幻想の女性』を演じてしまう」ことへのモヤモヤです。
成功を収めた1人の独身男性(=バチェラー)をゲットすべく、17人の女性が争う番組です。1話ごとに2、3人ずつ、選ばれなかった女性は去っていきます。なので実態は「ゲット」というより「選んでいただく」感に満ちています。
バチェラーとのデート、女性同士のやりとり、バチェラー&女性への単独インタビュー、主にその三つで構成されます。人間の「表と裏」が見えてくる勝ち残りゲームとして面白がってもよいのですが、ジェンダー指数120位の国に住む者としてはそうもいきません。独身女性を男性が争う「バチェロレッテ」(2020年配信)を見た者としては、なおさらです。こちらはすごく深い番組だったのです(「バチェロレッテ」は古い男女観を消し去った深い番組 参照)。
参加した女性たちの人柄や人生観が見えない!
「バチェロレッテ」が特によかったのは、彼女が男性たちに人生観、中でも仕事への考えを聞きまくったことでした。自分におもねる答え、曖昧な答えは見過ごしません。次第に参加者も本音を語りだしました。
ですが今回、「バチェラー」は参加者たちと話を深めていきません。バスガイドをしていた18歳の時に作ったノートを見せた女性もいましたが、彼は「すごーい。(見かけと)めちゃめちゃギャップ」という以上の反応をしません。会社を経営している26歳の女性が「事業の楽しさを語れる人と結婚したい」と語っても、「やめよ、夢なくなるから、恋しよ、恋」と言っておしまいにします。
代わりに彼はキスしました。唇への濃厚なキス、しまくりでした。2話である女性にして以来、デートのたびにキス。1人とはお泊まりもします。まあ、不潔。などとは思いませんが、女性たちがどういう人かちっともわからないシリーズだったのです。
求められているものは、信頼か服従か
自分の両親がとても仲が良く、父の経営する会社の危機でもそれは不動だった、だから会社経営者である自分がどんな状況になっても、妻には味方でいてほしい。そんな彼の思いが徐々に見えてはきます。だから自分をとにかく信頼し、愛してくれること。それが彼の条件です。
彼女たちに「料理を作る」「絵を描く」などのお題を出し、バーベキューで自ら肉を焼いたりもしました。でも、そこでの行動が女性の選択にどう結びついたのかは、はっきりしません。1対1になると「本当に自分を好きか」と確認します。信頼、愛情は大切ですが、彼は女性をどんな基準で信頼し、愛そうとしているのかがわかりません。だから、彼が求めているのは、信頼でなく服従では? そう思うとブルーになってしまいます。
今回のバチェラー黄皓さん(番組制作時は34歳)は、10代で中国から来日、4か国語を操り、3社を経営する実業家です。実は「バチェロレッテ」の参加者で、最後の2人にまで残ったけれど最終的には選ばれませんでした。「前回は自分を出し切らず後悔した」そうで、だから「感情をむき出しにしながら進めば、『再生』というキーワードにたどり着けると思う」と3話の冒頭で語っていました。むき出しの感情=キス=再生=自分のため。うーん。
「信頼軸」がどこにあるのか、黄さんは最後まで説明してくれません。だから女性は、少ない情報から彼の「選択基準」を読み取り、合わせるしかないのです。みんなが出した答えは、とにかく「信頼してるよ」「味方だよ」「大好き」と言葉や手紙で伝えることです。彼の行動への疑問や不満や不安を口にすると、選ばれません。結果、みなが従順さと純真さを競い合うのです。
婚活の本質は、従順で純真な女性像に合わせるもの?
ここでやっと、「幻想の女性」の話をします。従順さや純真さはどんな女性、いえ、どんな人間にもある要素です。ですが、従順で純真なだけの女性はいません。でも、男性は従順で純真なだけの女性を頭の中に住まわせているんですね。そのことに気付かされました。しかも求められると、女性はつい幻想の女性を演じてしまう。それが婚活というものの本質を表しているとしたらモヤモヤどころか、がっかりです。
10話は「最終回トークスペシャル」でした。最終的に黄さんが選んだ女性が登場、手紙を読みました。最後のせりふは「私をお嫁さんにしてください」でした。「嫁」というのはお笑い芸人が妻を語る定番ではありますが、女性の方からの「お嫁さん」には驚きました。
番組スタート時よりずっときれいになったその人を見ると、2人が幸せならそれでいいと思います。でも、それだけでいいのだろうかとも思います。結婚って対等なものだと思うからです。若い女性のみなさんには、ぜひ考えていただきたいです。
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