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- 【書評】かわいい猫写真に癒やされる『寄りそう猫』他
雑誌「ハルメク」の編集部員がおすすめする新刊情報を毎月お届けします。今月は、かわいらしい写真とともに綴られる、心温まるニャンコの実話など3冊をご紹介します。
佐竹茉莉子著『寄りそう猫』
以前から、著者の撮るニャンコの写真が大好きでした。警戒心の強い野良猫でさえも、彼女の写真では無防備で安心していて、時には「アンタにだけは許すよ」と言っているような、鋭いのに親しみに満ちた目を向けているからです。
表紙の猫もそう。生後約2か月のとき、衰弱しきってカラスにつつかれていたところをある家族に保護され、個性的な先住猫8匹や家族と少しずつ距離を縮めていきます。途中、両親は離婚しますが、猫がいたから子どもたちは笑顔でいられた、と母は語ります。愛を分けて、分けられて。そのまなざしがこの写真なのです。
人間と猫の、温かい17のお話と写真。幸せと元気をいただけます。
石井妙子著『日本の天井 時代を変えた「第一号」の女たち』
本書はタイトルの通り、男だけだった組織や社会に飛び込み、今ならパワハラセクハラの差別・偏見に耐え、道を切り開いてきた女性たち7人のルポです。
登場するのは、エベレスト登頂の田部井淳子さん、『ベルサイユのばら』の池田理代子さんなどよく知られた方をはじめ、髙島屋取締役、囲碁棋士、落語の真打、男女雇用機会均等法を推し進めた赤松良子さんなど。共通するのは誰も女性初を目指したわけではなく、ただ自分がやりたいことを貫いてきた結果ということです。そして、それこそが戦後、昭和という時代には最も難しいことだったと改めて感じさせられました。
強靱な意志を持つ女性たちに、ただただ感嘆。
荻上直子著『川っぺり ムコリッタ』
「かもめ食堂」「めがね」「トイレット」などのヒットで知られる映画監督の書き下ろし長編小説です。
主人公は、30歳の青年山田。詐欺による服役を終えて、海の近くの塩辛工場で働き始めます。工場に徒歩で通える川沿いの古いアパートの名は本書のタイトルにもある「ハイツムコリッタ」。この一風変わった名のアパートは、住民たちもワケありげです。黒ずくめの服で墓石を売り歩く父子、勝手に山田の部屋に上がり込みご飯にありつく男など。工場とアパートの人々との関わりで少しずつ山田にも変化が現れ……。
何も起きていないようで何かが確実に動き始めている。まさに荻上ワールド、映画化されたらぜひ見たい!
撮影=山下コウ太
※この記事は2019年10月号「ハルメク」に掲載された内容を再編集しています。
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