大人の女性におすすめの新刊情報

【書評】岸 惠子著『孤独という道づれ』他

公開日:2019.07.11

雑誌「ハルメク」の編集部員がおすすめする新刊情報を毎月お届けします。今月はドラマチックな人生を歩んできた女優・岸惠子さんが85歳の「孤独」をつづった新刊など3冊をご紹介します。

岸 惠子著『孤独という道づれ』

幻冬舎刊 1400円(税別)

人気女優、結婚と渡仏、その後のシングルマザー……。ドラマチックに歩んできた著者ですが、本書の中では、一人暮らしをする横浜の実家で詐欺に引っ掛かりそうになったり、若い人の言葉遣いにぼやいたり、85歳という年齢相応のおっちょこちょいぶりや感情が素直につづられています。

とはいえ、やっぱり“岸惠子”。孤独を「晴れがましく眩しい立ち位置」ととらえ、その裏にある「自由と深いわびしさ」を背負いこむことで自分らしく生きられると書きます。

「わたしはいつも力いっぱい生きてきた」。この一言は、今も力いっぱい生きていないと書けない言葉。著者のたくましさに感動すら覚えます。

歌代幸子著『鏡の中のいわさきちひろ~絵描きとして、妻として、母として』

中央公論新社刊 1900円(税別)

いわさきちひろの絵が好きでした。でもその人となりはよく知らなかったのです。この本に書かれたちひろの生涯——最初の夫の自殺や最愛の伴侶と歩んできた共産党員としての道のり、また作品をこの世に送り出すことへの情熱には、ただただ圧倒されます。

ちひろは二度目の結婚に際し夫とともに「人類の進歩のために最後迄硬く結び合ってうこと」を決意します。そして本当に、家庭でも社会でもそのように生きました。

ちひろに関わる人たちはみな、ちひろに感化されたかのように信念と熱意と誠意を持って生きており、この本を読むと自分も、明日からもっと気持ちを込めて生きていきたいと思うのです。

井田典子著『心、お金、時間の巡りがよくなる「暮らしのサイクル」の作り方』

KADOKAWA刊 1350円(税別)

著者はNHKテレビ番組「あさイチ」などでも活躍し、「片づけ」で人生を豊かにする方法を提案している井田典子さん。本書は“季節や行事を楽しんで暮らすことが、その家の文化をつくることになる”と話す著者が実践する、一年を通して暮らしを楽しむヒントが詰まった家事エッセーです。

ひな祭りやお正月の準備、衣替えや大掃除など、つい面倒くさい、時間がない、と簡略化してしまいがちな行事や家事。けれど、年間を通して効率よく片づけを行えば、心にゆとりを持って楽しめると言います。

年を重ねても、家族のかたちが変化しても、工夫次第で無理なく続けられるのだ、と勇気をもらえる一冊です。

撮影=山下コウ太

※この記事は2019年8月号「ハルメク」に掲載された内容を再編集しています。


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