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- 【前】雅楽師・東儀秀樹の素顔!帰国子女でロック好き
雅楽師、ミュージシャン、俳優と、広く活躍する東儀秀樹さんは、息子の典親さんとの親子共演も話題です。海外で過ごした幼少期、ロックやポップスなど音楽との出会い、雅楽の道に進んだ経緯など…意外性溢れるエピソードを前後編2記事で伺いました。
海外で過ごした幼少期。いろんな音楽に触れた後、自然に雅楽の道へ
――奈良時代から雅楽を継承してきた東儀家に生まれ、伝統芸能を背負っていくことへのプレッシャーはありましたか?
東儀秀樹さん(以下、東儀秀樹)
実はみなさんが想像するようなプレッシャーを、僕は一切感じたことがないんです。小学校の頃から、我が家は代々奈良時代から伝わる雅楽の家だということは知っていましたが、現代では「この家に生まれたから、絶対に雅楽をやらなければいけない」という世襲の決まりがなくなっていました。
実際にうちの両親も雅楽師じゃなかった。父は商社マンで海外に住んでいることの方が多かったので、親も僕を雅楽師にさせようとは思っていなかったと思います。でも、小さい頃から音楽は好きでした。
――幼少期はどんな音楽を聴かれていたのですか?
東儀秀樹
タイのバンコクでインターナショナルの幼稚園に行っていたので、その頃はビートルズにハマっていました。イギリス人やアメリカ人の友達が多く、親の影響だと思いますが、幼稚園で「ポールが最高」「リンゴが好き」と言い合ったりする、ある意味、変わった環境にいました。
また父親がクラシック音楽好きで家でよくレコードをかけていましたし、母親は映画音楽を聴いたり、童謡を歌って聞かせてくれたりして、僕はさまざまな音楽を聴いて育ちました。
後から聞いたのですが、物心ついた頃に親がハーモニカを買ってくれたときは、いきなりベートーベンの第九「歓喜の歌」を吹いたそうです(笑)。
――すでに絶対音感を発揮されていたんですね!
東儀秀樹
そうかもしれません。小学生のときは、尾崎紀世彦さんや天地真理さんの曲を、譜面も知らないのに、左手で伴奏を付けながら教室のピアノを弾いていました。友達が面白がってリクエストをしてくれるので、みんなでよく歌っていました。
でも、他の子は同じように真似をしようとするけどできなくて……その頃から、自分は人と違う音楽の感覚を持っているんだなと自覚し始めました。
――その後、どういう流れで「雅楽の道」に入られたのですか?
東儀秀樹
小さい頃から海外にいたり、中学時代もメキシコで過ごしたりしたことで、自分が日本人であることがより浮き彫りになりました。それで、日本という国を誤解されたりすると、子どもながらそこを正したいという気持ちが高まっていったんです。そうするうちに、日本の文化を背負って立つことは非常に意義深いと感じ始め、じゃあ雅楽をやってみようかなと思いました。
「将来の道の選択肢」は絞り込まない方がいい
――実際に雅楽師への道を選んだとき、新たなプレッシャーは芽生えませんでしたか?
東儀秀樹
そこもなかったです。雅楽の道に入ったら、それを全うしなければいけないとも思っていなかったので。例えば自分が選んだものが性に合っていればいいけれど、合ってなかったとしたら、それを一生背負っていく人生なんて、絶対におすすめできないでしょう。
また、もしも自分に合うものは何だろうと探してみたいなら、まずは一歩を踏み出さないといけない。好奇心を発揮して、動いていくと、きっと何かに出合えるはずです。
僕はよく中学生や高校生の芸術鑑賞会に呼ばれるんですが、いつも学生さんたちにこう言うんです。
「これから将来を見据えて進路を決めると思うけど、2つか3つのことを迷っているなら、無理に絞らなくてもいい」と。A、B、Cとやりたいことがあったら同時にやれる方法を考えて、全てに手をつけてみる。するとおろそかになるものから落ちていって、本当に自分に向いているものが残るはず。残ったものに自信を持って続ければいいのです。最初からガチガチに目的を一つに定めて、向いているかもしれない未知数を無視することはもったいないから。
――決めつけずに、まずはやってみるということですね!
東儀秀樹
そうです。よく伝統を代々継ぐ人や、老舗の店などを継ぐ人が「好きなことを諦めて、これをやりました」と美談のように語ることがありますが、僕自身は「なぜやりたいことを諦めてしまうのだろう」と思ってしまいます。
やりたいことがたくさんあるのなら、全部やってのけた方が面白い人生になるのではないかと。だから僕は雅楽をやりながらロックもジャズもやりたいし、やればいいと思っています。しかも、雅楽以外の音楽をいっぱい知っていたことで、逆に雅楽への探究心が強くなった気がします。
よく「遠回りをした」と言われますが、そうではなくて、僕からすれば、一番充実した道を行って、雅楽にたどり着いたと思っています。今も雅楽が面白くてしょうがないですから。
そう言いながらも、実は今後、雅楽師じゃなくなる自分がいても面白いのかなと思ったりします。この先に、「雅楽をやっていたことがめちゃくちゃ生かされるな」と思えるようなことをしている新しい自分がいるかもしれませんし(笑)
テレビ「ウルトラマンブレーザー」の親子共演がネットで話題に
――音楽以外のお仕事では、俳優として映画やドラマにも出演されています。2023年には「ウルトラマンブレーザー」の第9話では、典親(のりちか)さんと親子共演もされましたが、やってみていかがでしたか?
東儀秀樹
めちゃくちゃ楽しかったです。息子も演技に興味を持っているし、普段ステージでは観ることのない僕を興味深く見て何かしら得るものもあるだろうし、親子で同じ作品の中で演じるのはお互いにとても新鮮な刺激で楽しく、さらに絆も深まった気がします。
――音楽では同じライブに立たれていますが、やはり俳優としての共演は、また違う感覚なんでしょうか?
東儀秀樹
全然違う面白さがあります。昔から僕は演技にすごく興味があり、俳優になりたいなとも思っていました。もちろん俳優としては全然自分がうまいとは思えませんが、いつもテレビや映画を見ていると、「僕が監督だったらこうしたい」という目線では見ていたんです。
だから今回お話をいただいたときも、自分なりに「こうしたい」というものがあったので、そういうものを発揮できる場だと思い、喜んでやらせていただきました。
――SNSでは「神回」だと評判だったそうですね!
東儀秀樹
僕もめちゃくちゃ満足しています。ありがたいことに、監督が僕の大ファンだったそうですが、現場に臨んだとき、僕が「ここはどういうふうに演じたらいいんですか?」と聞いたら「東儀さんがやりたいようにやってください」と言ってくださいました。そして1回でOKをもらいました。
――息子の典親さんと共演されるときに、何か決めているルールはありますか?
東儀秀樹
まったくないです。僕たちが親子だということをみなさんは知っているわけなので、あえて「親子です」という空気をつくる必要もないし、親子でがんばっていることをアピールする必要もないかなと。
ただ、例えば音楽で一緒のステージに立つときは、音楽を大好きな親子が、音楽をかみしめて共有しているということが倍増して伝わると思うので、僕たちとしては自分たちがまず楽しもうと思って臨んでいます。
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プロフィール
東儀秀樹(とうぎ・ひでき)
1959年東京生まれ。高校卒業後、宮内庁楽部に入り、宮内庁楽部在籍中は篳篥(ひちりき)を主に、琵琶、太鼓類、歌、舞、チェロを担当。宮中儀式や皇居において行われる雅楽演奏会などに出演するほか、海外公演にも参加する一方で、ピアノやシンセサイザーとともに雅楽の持ち味を生かした独自の曲を創作。数多くのゴールドディスク大賞の受賞歴を持つ。俳優としてNHK大河ドラマ「篤姫」(2008年)や、映画「源氏物語 千年の謎」(11年)、「妖怪大戦争 ガーディアンズ」(21年)に出演。東儀典親と親子共演した「ウルトラマンブレーザー」(23年)も反響を呼んだ。
取材・文=山崎伸子 編集=鳥居史(ハルメク365)
東儀秀樹さん親子による雅楽を楽しむ新春演奏会開催!
新年を「雅楽」で祝うハルメク貸切コンサートを開催!演奏するのは、雅楽師の東儀秀樹(とうぎ・ひでき)さんと息子の東儀典親(とうぎ・のりちか)さんです。
1300年前の奈良時代から雅楽を継承してきた東儀家の話や、雅楽の演奏をたしなみ、ギターも演奏する典親さんとの共演も注目ポイント!雅楽を初めて聞く方も東儀秀樹さんがやさしく解説してくれるので楽しめます。
いつでもどこでも参加できる「オンライン開催」に加え、雅楽をライブで楽しめる「会場開催」もご用意しています。
- 開催日時 2024年02月02日(金)14:00~
- 開催日時 2024年01月26日(金)13:00~
- 会場 日本橋公会堂
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