山本ふみこさんのエッセー講座 第9期第3回

エッセー作品「仕上げはお好みで」海瀬和美さん

公開日:2023.05.25

随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクのエッセー講座。教室コース 第9期の参加者の作品から、山本さんが選んだエッセーをご紹介します。今月のテーマは「仕上げる」です。海瀬和美さんの作品「仕上げはお好みで」と山本さんの講評です。

山本ふみこさんのエッセー講座 第9期第3回
エッセー作品「仕上げはお好みで」海瀬和美さん

仕上げはお好みで

夫婦2人の毎日。朝食は、昔からの定番、コーヒー、パン、ヨーグルト。
昼食は夫がパスタや焼きそば、ラーメンなど好きな麺類を作ってくれるようになった。
夕食は、もっぱら蒸し野菜、サラダ、お浸しや、肉や野菜のソテー、鍋やスープなど「素材を活かす料理」などといって手を抜いている。

「素材を活かす料理」をするようになって、台所に眠っていたいろいろな鍋が重宝するようになった。

取っ手が取れる鍋で蒸し料理をして、そのままテーブルへ。
シャトルシェフ(真空断熱調理鍋)は肉や野菜を鍋に入れ沸騰したら外鍋に朝入れておくと、温度が下がらないので、夕食時にカレーや、ポトフ、けんちん汁など味付け次第でなんとでもなる。
圧力鍋で肉や魚をまとめて煮て冷凍しておく。

毎日が日曜生活も2年目に突入し、やっと生活リズムもでき、イライラも減ってきた。

先日、新婚の姪夫婦が遊びに来た。昼食に夫が明太子パスタとトマトパスタを作ってくれた。
我が家はいつも大皿で「ドン」と出し、好きなだけ取り分けて食べる。
この日もそれぞれが自分のお皿に取り、好きなように塩、コショウ、粉チーズや、タバスコ、明太子用の大葉など好きなものを好みでかけるように出す。

すると、姪の夫のタク君が、目をまるくして言うのだ。
「二人暮し なのに、こんなに大きな粉チーズやタバスコ使っているのですか?
コショウも生コショウやミルで挽くコショウなどすごいですね」

「おばさんの家は、最後の仕上げは自分でするのよ。
基本薄味であとはお好みで好きな味付けにするのが一番。
だから、塩、コショウ、チーズ、ゆず胡椒、七味、一味、カレーの辛みスパイスなど調味料だけはいろいろ凝っているのよ」

姪のあっちゃんが、
「アッ、それいいです。タク君は私の味付けは薄いといつもいうので、自分で自分の分だけ好きに仕上げてもらえばいいんだ」

そう、それが一番。
最後の仕上げはお好みで。

山本ふみこさんからひとこと

山本ふみこ
山本ふみこ さん

作品の構成にも、なかみにも感心しました。

教室で発表していただいたときにも、「そうかあ」「真似しよう!」という歓声に近い感想が聞かれました。

文中の「素材を活かす料理」ということば、傍点をつけて目立たせたいところですが、webでは無理ですから「 」のなかにおさめることとしました。

 

山本ふみこさんのエッセー講座(教室コース)とは

随筆家の山本ふみこさんにエッセーの書き方を教わる人気の講座です。

月1本のペースで書いたエッセーに、山本さんから添削やアドバイスを受けられます。

募集については、今後 雑誌「ハルメク」誌上とハルメク365イベント予約サイトのページでご案内予定です。


■エッセー作品一覧■

ハルメク旅と講座

ハルメクならではのオリジナルイベントを企画・運営している部署、文化事業課。スタッフが日々面白いイベント作りのために奔走しています。人気イベント「あなたと歌うコンサート」や「たてもの散歩」など、年に約200本のイベントを開催。皆さんと会ってお話できるのを楽しみにしています♪

マイページに保存

\ この記事をみんなに伝えよう /

注目企画