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- エッセー作品「まだ、行けます」村松多美子さん
随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクのエッセー講座。教室コース 第8期の参加者の作品から、山本さんが選んだエッセーをご紹介します。テーマは「空っぽ」です。村松多美子さん作品「まだ、行けます」と山本さんの講評です。
まだ、行けます
ギリュッ、ギリュッ、キリキリキリーッ!!
洗濯機が変だ。
脱水のさわやかな音とは程遠い。ついに来たか。来春引っ越すことが決まったから、お払い箱になると察したのだろうか。
家事で1番好きなのは洗濯。
干し終えて、さおに洗濯物が整列しているのを眺めるのがうれしい。お日さまのおかげで、衣類だけでなく心の汚れまできれいになる気がするから。何でもない毎日が幸せだと思えるから。
連れ合いの会社が倒産して途方に暮れたとき、娘が難病で何10回も入退院を繰り返しくじけそうになったとき、いつもいっしょに働いて励ましてくれていた、30年間も。
最近、首と肩を痛めムチウチの症状でつらい日々を過ごしている。以前のようにてきぱきと動けずにいるから、気持ちも暗くなる。
ンガガガガー!!
「空っぽ同然にして、みくびらないでください。まだまだ大丈夫ですから。」と、ぞうきん1枚の脱水に怒っているような音だ。
よくがんばってきたよね、でもいつかは……。
洗濯機とわが身を重ね合わせている。
痛くてしかめっ面をしていると、自分だけでなく周りの人もつらかろう。それなら痛いのを痛いと言わず、いつもと違う感覚なのだと受け入れてみようか。
変わり者の私は皆が嫌いな歯医者さんが、好きなの。あのジージー削られるのを耐えれば、あとは良くなると信じられるから。
そうそう、これからは体の不具合があっちこっちに出てくるだろう。
でもロボットみたいな首の動きを恥ずかしがらず、珍しい経験としておもしろがってみよう。リハビリにもまじめに通おう。
今日は満杯の洗い物だったのに、洗濯機、変な音がしなかった。そんなこともあるのかな?
「ご苦労さま、ありがとう。」
洗濯機の横腹をポンポンとたたく。
山本ふみこさんからひとこと

何もかも、面白がってしまおうという作家の覚悟が生みだした作品です。
変わり者の私は皆が嫌いな歯医者さんが、好きなの。あのジージー削られるのを耐えれば、あとは良くなると信じられるから。
この感性を大事に大事に、書き続けてくださいましね。「常識を超える」というのが、書き手の目当てでもあるのです。

山本ふみこさんのエッセー講座(教室コース)とは
随筆家の山本ふみこさんにエッセーの書き方を教わる人気の講座です。
参加者は半年間、月に一度、東京の会場に集い、仲間と共に学びます。月1本のペースで書いたエッセーに、山本さんから添削やアドバイスを受けられます。
募集については、今後 雑誌「ハルメク」誌上とハルメク365イベント予約サイトのページでご案内予定です。
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