通信制 山本ふみこさんのエッセー講座第3期第5回

「100字エッセー」第3期参加者のみなさんの作品

公開日:2022.03.02

随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催する通信制エッセー講座。今回参加者は100文字以内のエッセーを5つ書く「5本ノック」に取り組みました。1人1作ずつ、ご紹介します。山本さんが語る100字エッセーの文章世界と講評も、ぜひご覧ください。

「100字エッセー」
「100字エッセー」第3期参加者のみなさん

100字エッセー

※敬称略、50音順です。

あべれみ

左右色違いのビーチサンダルを履いている人を見かけた。一瞬にして、いろいろと想像する。
デザイン? 家族の、色違いでお揃いの片方と取り違えた?
ふと、自分の足元を見る。左右色違いの靴下が……ありゃりゃ。

池田しげこ

週1回ヨガへ参加している。全身が伸びて体がスッキリするのが自分でもわかる。
テレビ体操も朝、テレビを観ながらつづけている。
老体を健康に保つため、朝のウォーキングもかかさない。
健康だけはお金で買えないから。

池永さとみ

私はガス圧力鍋のシュルシュル、プッシューが苦手で今まで使ってこなかった。
が、思い切って電気圧力鍋を購入しその便利さにすっかりはまった。
今冬は寒さが厳しいとか。きっと圧力鍋が大活躍してくれるだろう。

板越谷りん

冷え込んだ師走の早朝。居間のエアコンをつけカーテンを開ける。
「え?」一面のクリスマスカラー。そうか夕べの木枯らしの仕業だ。
常緑のセダムのみどりに一面のもみじの赤。早々と我が家にサンタがやってきた。

井野山ひなみ

スーパーのセルフレジ、支払いを終えると最後にレシートがぺろりと出てくるのに、きょうは出てこない。
あれ、ランプが光っている。考え事をしていて、お札のお釣を機械から抜いていなかった。
光るランプ、賢いなあ。

いぬいみき

いつまでも明るくならないと思ったら雨だった。
カーテンを引くと冷気が流れ込む。すっかり覚めた頭で今日のスケジュールを追っていくけれど、
休んでいたい身体の方は明けたばかりの1日の、眠りの時間を求めている。

大井洋子

空気がピシッと引き締まった早朝。ふと見上げた青空に、白い半月が見える。
手芸の達人が、月面図を繊細なレースの透かし模様に編んで飾ったようだ。
気付かない人もいるのだろうか。これほど優美で清々しいのに。

勝矢和代

「おいもちゃん」と名づけたイモ虫を2週間ほど毎日眺めて楽しんだ。
ギョロ目模様のシャレたベージュ色のコートをまとい、ゆったり野葡萄の高級食材を楽しんでいるこのイモ虫が蝶になるのか蛾になるのか、驚いてみたい。

かわばたえつこ

秋の終わり、初雪が降る少し前のほんの数日間、儚 (はかな)い小さな虫がいっせいにあらわれ、
ふわふわと雪のように舞う。この雪虫、どこから来てどこへ行くのかずっと不思議だった。
アブラムシの一種だって。私のロマン消滅。

きたのふみ

わたしのミシン。25年も使っていれば、相棒とよんでもいいだろう。
子どもの入園準備からのつきあいだ。来春に生まれる孫のスタイを作ってニヤけている。
スタイ? いつのまにか「よだれかけ」とは呼ばなくなった。

熊本美千代

「腰が痛い」「足が痛い」と言っては整体へ行く。
治ると嬉しくなってたくさん動いてしまう。
「痛い!動けない!」とまた整体へ行く。
「動くのはいいことですがやり過ぎてはいけません」こりもせず同じことを繰り返す。

小玉美智子

「こんにちは久しぶりね」「ええ、お久ぶりです」
「息子さんにもしばらく会っていないけど元気?」「はい、相変わらずです」
「今度ゆっくりお茶しましょうね」「そうですね、じゃ」
うーん、あの人は誰かしら……。

近藤陽子

「子を捨てしわれに母の日喪のごとく」

瀬戸内寂聴の詠んだ句だ。
心に正直に生きる姿に憧れる日も心離れる日もあったがこの句に触れ 彼女の心の奥の母の哀しみ苦しみを思うと愛しい。
彼女が人生を全うし旅立った。

栞子(しおりこ)

雨が好き。
磨いたばかりの窓ガラスが台無しになっても、天然パーマの頭がどんなに大きくなろうとも。
晴れの日の太陽は「さぁさぁ今日のご予定は。」とせかすように照りつける。
雨はいつも、楽しい音色でつつんでくれる。

竹盛妙子

比叡山に来ています。
紅葉の具合はどうかと思いながら、ドライブウェイを走っています。
声明(しょうみょう)と筑前琵琶の演奏会を楽しみに、久しぶりにじっくり聴いてみようというのです。もうすぐ延暦寺会館につきます。

原エリカ

今までの冬服が、しっくりこない。私自身の変化。肌や髪の色艶、姿勢、動作。
すべてが1年前とは違うのだ。サプリを飲み運動を心掛けても現状維持さえ難しい。
そこで艶々のスカーフ新調。これでどうでしょう。

松﨑和美

あれもしたい、これもしたいと歌の文句でもあるまいし、やりたいことがいっぱいある。
「気が多い」「夢がありすぎる」「長続きしない」いえいえ、
「好奇心がおうせい」「やる気がある」に、いいかえれば、前向きだ。
人生はみじかい、「恋せよ乙女」何事にもチャレンジしよう!

間嶋ふるな

カリフラワーを使って鍋にした。鶏ガラスープ薄め、醤油を少量。
カリフラワーのほか適当な野菜と鶏肉をポン酢で。
2回目は鍋に、ポン酢をたし、七味を振りかける。
3回目はスープにトマトソースをたす。パンに合う。

三澤モナ

茶葉が抽出される3分間、小さな砂時計を見つめる。その砂の落ちる速度の速いこと。
音もなく途切れることなく、容赦なく、さらさらさらさら……。
時の流れる速さを見てしまった後は、ことさらゆっくりと紅茶を注ぐ。

宮脇洋子

今朝、新聞のチラシに、1,000円以上購入で卵が98円ですって!
卵が欲しかった。「よし、無駄買いせぬよう、1,000円分の買い物だ」とスーパーへ急いだ。
上手に買い物出来たという気分になって帰って来たが、
「あれ!欲しかった卵を買ってない!」

 

山本ふみこさんからひとこと

みなさんの100字の作品を読ませていただきました。お一人一人が、テーマを見つけようとする観察のまなざし、文字数と格闘する気配を、感じることができました。

面白かった、頭の体操にもなりますね、という感想がある一方、とても難しかったと打ち明けてくださる方もありました。

「表現」という分野に足を踏み入れたからこその、面白さであり、難しさなのだと思います。100字の中に、観察したこと、経験したことだけを置き、それで醸されるもの——ここに魅力が生まれます。感想も解釈も感情も綴らないのに、です。

また挑戦しましょう、100字5本ノック。

 

山本ふみこさんのエッセー講座(通信コース)とは

全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。

参加者は毎月1回出されるテーマについて書き、講師で随筆家の山本ふみこさんから添削やアドバイスを受けられます。講座の受講期間は半年間。

現在、第4期の講座を開講中です。次回第5期の参加者の募集は、2022年6月に雑誌「ハルメク」の誌上と、ハルメク旅と講座サイトで開始予定。

募集開始のご案内は、ハルメクWEBメールマガジンでもお送りします。ご登録は、こちらから。


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ハルメク旅と講座

ハルメクならではのオリジナルイベントを企画・運営している部署、文化事業課。スタッフが日々面白いイベント作りのために奔走しています。人気イベント「あなたと歌うコンサート」や「たてもの散歩」など、年に約200本のイベントを開催。皆さんと会ってお話できるのを楽しみにしています♪

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