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- エッセー作品「二度の紛失」宮脇 洋子さん
随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から山本さんが選んだエッセーをご紹介します。今回募集した作品のテーマは「日常」です。宮脇洋子さんの作品「二度の紛失」と山本さんの講評です。
二度の紛失
テレビで観た、日本に旅行した外国の人達が、落し物をすると、殆どの場合返ってきて感動したという話から、最近私にも、とみに思い出される出来事がある。
むかし、二度も財布を落としたことがある。
一度目は、バス道路沿いに住んでいた当時、向かい側に、駐車場の無いコンビニが出来たことで、我が家の前は、常にコンビニのお客の駐車で、困惑の日々を送っていた。
とはいえ、我が家の車も、近くに駐車場を借りていたものの、買い物の荷物を降ろすため、しばし家の前に駐車することになっていた。
いつものように荷物を降ろした後、駐車場に向かうべく、発車しようとする直前、後ろに止まっていたコンビニ客の車から、こちらに足早に向かってくる男性の姿が、ミラー越しに見えた。
そして、私の車の窓を、トントンとたたくその掌に、なんと私の財布があった。
財布を運転席のドアの外に落としていたのだ。男性は発車寸前の私の車まで、慌てて届けてくださったのだった。
「ありがとうございます。」
その後は、コンビニの客が家の前に駐車しても、さほど気にならなくなったのは、言うまでもない。
当時は、それほど感謝の気持ちが長続きしなかったのだが、最近、度々その場面を思い出しては、あのときの男性にもう一度、お礼を言いたいと思うようになっている。
二度目は、現在住む、この町でのこと。
スーパーマーケットとホームセンターが立ち並ぶ、国道沿い近くに、我が家はある。
ある日、地元の銀行から、財布を落としたのでは、との電話があった。
スーパーマーケットの店員さんが、駐車場でお客さんが拾ってくださった財布を、その中の銀行のカードから、問い合わせをして下さり、持ち主が解ったようだった。
さすがにその時は、拾い主にもお礼を言うべく、直ちにお店に走った。
ところが拾い主はたまに来るお客としか、分からず、私は、菓子箱を2つ、そのお店に、預けただけのお礼になってしまっている。
山本ふみこさんからひとこと
思い出し、あらためて感謝する。それを作品とする。
この一連の有りように感じ入りました。
読みながら、こうして綴ることで、感謝の気持ちは伝わるのだな、と思いました。そればかりでなく、読者であるわたし(たち)まで、あたたかいものを分けていただけるのでした。
隠しても隠しても滲みでる書き手の性分。
そのことは当たり前のことなのですが、きびしい面も携えています。人間力を鍛えなければ、とつくづく思わされています。
通信制 山本ふみこさんのエッセー講座とは
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回出されるテーマについて書き、講師で随筆家の山本ふみこさんから添削やアドバイスを受けられます。講座の受講期間は半年間。
次回の参加者の募集は、2021年6月に雑誌「ハルメク」の誌上とハルメク旅と講座サイトで開始予定。募集開始のご案内は、ハルメクWEBメールマガジンでもお送りします。ご登録は、こちらから。
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