ハルメクのシンクタンク所長が考察

2023年秋冬、シニア世代の消費予測は?

公開日:2023.10.17

雑誌「ハルメク」のシンクタンク「生きかた上手研究所」所長の梅津順江が、ミドル~シニア世代の女性のトレンドを読み解きます。今回は50歳~87歳の女性に「消費のニーズと変化」に関するアンケートを実施。コロナ禍後の消費傾向を読み解きます。

コロナ禍後の行動・消費はどう変わった?物価高の影響は?

コロナ禍後の行動・消費はどう変わった?物価高の影響は?

2023年5月のコロナ「5類」移行後、イベント開催制限が終了、マスク着用の任意化など、一気に以前の日常が戻ってきました。インバウンド消費も再開し、飲食店や百貨店の売上も復調しています。

また、この数年休止されていた祭りや花火大会などの大規模イベントも各地で再開されました。レジャー・旅行、外食を中心としたサービスは、コロナ禍前の売上を取り戻しています。

一方で、物価上昇圧力も強まっています。飲食料品、水道光熱費の断続的な値上がりに加え、衣料品や日用消耗品などへも値上げの動きが広がっています。外出や消費への欲求が高まる一方で、節約意識も強めています。

シニア世代も、消費マインドが外向きに

シニア世代も、消費マインドが外向きに

さて、シニアにとって、コロナ禍を経たこれからの行動や消費はどうなるのでしょうか。ハルメク 生きかた上手研究所は、これからの中高年女性の意識や消費行動を把握すべく、7月6日〜14日、50歳~87歳の全国の女性535名にインターネットで「シニアの意識・行動の変化に関する調査」を実施しました。

2023年上半期を「1~3月」「4~6月」に分け、各々の「支出」「貯蓄」を合計100%になるようにお金の使い方の割合を聞きました。なお、「支出」は「自宅内(で使うもの・こと)」と「自宅外(で使うもの・こと)」に分けて回答してもらっています。

2023年上半期のお金の使い方

2023年上半期のお金の使い方
ハルメク 生きかた上手研究所「シニアの意識・行動の変化に関する調査」/※それぞれに使うお金の割合を合計100%になるよう回答してもらった。グラフは平均値のため、合計は100%にならない。

平均値をみると、「1~3月」の支出は「自宅内」58.0%、「自宅外」27.9%。合計で85.9%でした。貯蓄は14.6%です。

「4~6月」の支出は「自宅内」56.6%、「自宅外」30.3%で、合計は86.9%でした。貯蓄は13.8%でした(※平均値のため合計は100%にならない)

まだコロナ禍だった「1~3月」に比べ、「4~6月」は支出が増え、貯蓄が減少していることがわかります。

支出が増えた要因は、「物価高の影響」のほか、「自宅外消費が増加した」ことがあります。自由記述から、旅行・外出・コミュニケーション関連、出掛ける前の準備に必要な美容・健康関連といった「自宅外=イエソト」での消費意欲が高まっていることが伺えます。

「5月以降(コロナ5類移行後)に新たに始めたこと、再開したこと」には、「旅行・レジャー」「友達と外食」「趣味・習い事」「運動(ジム通い)」と、外出に関する記述が目立ちます。「マスクを外す機会が増えた」「同窓会に参加」「施設にいる親と久しぶりに面会」といった内容も少なくありませんでした。まるで、我慢していたコロナ禍の3年を取り戻すかのようです。

「友人と落語やコンサートを聞きに行くなど楽しむ時間を積極的に持つようになった」(54歳)、「踏み台を使って昇降運動と肩甲骨まわりの筋トレに加え、スクワット、片足で曲げ伸ばし運動を増やしました。丈夫で健康な足を保ちたいですし、旅行も行きたいのでがんばっています」(65歳)、「地元の女性コーラス団体に入会。行くために電動自転車を初めて買いました」(73歳)など、気持ちが外向きになり、人との交流を楽しんでいる様子が伝わります。

秋冬も外出意欲は向上!「イエソト消費」は4~6月並みに

23年下半期はどうなるのでしょうか。

「シニアの意識・行動の変化に関する調査」では、2023年下半期を「7~9月」「10~12月」に分け、今後のお金の使い方の予測についても聞いてみました。

2023年下半期のお金の使い方

2023年下半期のお金の使い方

支出と貯蓄の割合は、上半期に比べ「7~9月」「10~12月」も変わらなそうです。

「7~9月」の支出は「自宅内」55.6%。「自宅外」31.8%で、合計すると87.4%です。貯蓄は13.1%です。「10~12月」の支出は「自宅内」56.1%、「自宅外」31.5%。合計で87.6%でした。貯蓄は13.1%でした。2023年の秋冬も、4~6月と同じ程度の「自宅外=イエソト」の消費意識・行動になりそうです。

「7~9月、10~12月の予定」では、「旅行」「帰省」「同窓会」「コンサート・ライブ」「登山・ハイキング」「家族のお誕生日会」「子の結婚式」が多く挙がりました。「花火大会」「お盆」「祭り」「紅葉狩り」「クリスマスパーティ」など、季節ごとの行事やイベントも頻出。

驚いたのは行き先が具体的に記載されていたことです。「韓国」「ハワイ」「北海道」「沖縄」「奄美大島」「八ヶ岳」「上高地」「軽井沢」「奈良」「京都」「伊勢神宮」など多様でした。「クルーズ船のダイヤモンドプリンセスに乗船予定」(68歳)、「米寿祝で東京へ行く」(87歳)といった表記もあり、遠方の旅先を計画しています。

秋冬も外出意欲は向上!「イエソト消費」は4~6月並みに

ただし、外出への意欲が高まる一方で、「自宅内(で使うもの・こと)=イエナカ」消費に関しては節約傾向も強まりそうです。

「これからの消費傾向がどのように変わりそうか」という問いに、「普段の食費や光熱費は節約する」という回答が目立ちました。消費において、自宅内と自宅外のメリハリが強まることが予測できます。

とはいえ、節約ばかりではない「イエナカ消費」も可能性はゼロではありません。生活がワクワクしそう、ギフトや服飾品など家族・友人との交流につながりそう、自分の趣味・嗜好が充実しそうな領域には関心があるとみていますが、みなさんはいかがでしょうか。

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梅津 順江

うめづ・ゆきえ 生きかた上手研究所長/インタビュアー。1年間に約700人の素敵な女性にお会いし、誌面や商品開発の種になる話を伺っています( ͡° ͜ʖ ͡°)/。のんきな夫との2人暮らし。趣味はダイビング、マンホール、美術鑑賞、食べ歩き。

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